最大意図速度。神経ドライブを加速する筋トレ
📖 文献情報 と 抄録和訳
最大意図速度は高齢者の筋力トレーニング誘発性神経筋刺激を増強する
[背景・目的] 加齢に伴う神経筋機能の減衰は、筋力トレーニングで緩和することができる。現在、未経験者や高齢者に対して推奨されているのは、運動速度を制御して筋力トレーニングを行うことです(controlled movement velocity, CON)。しかし、運動のコンセントリックフェーズで最大意図速度(maximal intended velocity, MIV)を適用することで、神経筋の刺激が増強され、トレーニング適応が高まる可能性がある。
[方法] 筋電図上昇率(rate of rise in EMG, RER)記録を用いて、高齢者(76±6歳)12名と若年者(23±2歳)12名を対象に、脚伸展時の大腿四頭筋のこれら2種類の収縮に対する急性期の神経筋反応を、実際の運動速度とともに検討した。
[結果] 高齢者は若年者に比べて1反復最大筋力(1RM)が低く(33±9kg vs 50±9kg、p = 0.001)、CONとMIVについて1RMの〜10%、30%、50%、70%、90%の相対強度において実際の速度が低かった(すべてp < 0.05)。また、高齢者は、両条件において、若年者と比較して一貫してRERが低下した(高齢者:1043~1810μV、若年者:1844~3015μV、いずれもp<0.05)。しかし、RERは両年齢層とも、またすべての強度において、CONと比較してMIVによる収縮で高かった(98-674%、すべてp<0.05)。
[結論] 年齢が上がるにつれて最大筋力が低下し、神経筋の反応も弱くなるが、我々の結果は、運動のコンセントリックフェーズでMIVを用いて反復した場合に、神経筋の活性化が増強されることを示すものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
RFD(Rate of force development)、という概念がある。
これは、筋出力の変化を時間で除した値である。
今回のRERはこの概念に近く、力ではなく筋活動を用いている。
RERは「筋肉にスイッチが入るまでの速度」、神経ドライブの活性速度と捉えることができる。
そして、最大意図速度(MIV)での筋トレによって、RERは劇的に大きくなる。
これを臨床的に捉えると、どのような意義があるだろう。
たとえば、膝折れと転倒について考えてみよう。
膝折れしてから、それを立て直すための筋収縮が早く入れば、転倒しにくいいだろう。
一方、その筋収縮までの速度が遅ければ、その膝折れは転倒に至る危険性が高まる。
このように、動作中に求められる筋力動員のされ方を考えると、神経筋活性化の速度は重要と思われる。
大事なことは、筋トレにおいて特異性の原則を考慮することだ。
通常の筋トレでは、主に最大筋力や筋肥大をアウトアムにし、快適速度かゆっくりした遠心性収縮を意識して行われることが多い。
臨床現場で、最大意図速度で筋トレしている高齢者を見たことがない。
だが、例えば歩行時の膝折れをターゲットにしているならば、神経ドライブの加速を図らねばならないだろう。
その時に必要なことは、遠心性収縮を意識したゆっくり収縮ではなく、『最大意図速度』かも知れない。
午前は最大筋力をターゲットとした筋トレ、午後は神経ドライブの加速をターゲットとした最大意図速度での筋トレ、など変えても面白いかも知れない。
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