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その研究に待った❗️𝕏生まれの僕たちのLetter


📖 文献情報 と 抄録和訳

臨床的に重要な最小差は計算方法の違いによって大きく変わる: 編集者への手紙

📕Tamura S, Kaizu Y, Miyata K. The Minimal Clinically Important Difference Changes Greatly Based on the Different Calculation Methods: Letter to the Editor. Am J Sports Med. 2023 Nov;51(13):NP54-NP55. https://doi.org/10.1177/03635465231193405
🔗 DOI, PubMed 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

■ 2023年4月6日:はじまりは「あり」の文献抄読だった
ぼくはいつもの通り、興味深い論文の抄読をありにアップした。
それが『MCID is Blackbox』と題した文献抄読で、その論文によれば、アンカー/分布ベースの17の算出方法でMCIDを算出、比較したところ、アンカー法では4.1倍、分布法では7.6倍のMCID値の変動が見られたとのことだった。
ぼくは、読者の皆さんのリアクションも結構良かったので、満足していた…。
詳細は以下のリンクを参照いただきたい。

■ 2023年4月某日:MCID研究にガチで取り組んでいる研究者からの連絡
日頃より共同研究や、研究の指導をいただいている茨城県立医療大学の宮田一弘先生より、𝕏コメントがあった。

その直後、『この研究には種々の議論の余地があり、Letterにて疑義を訴えた方が良いかもしれない』と。
そして、近年MCID研究をバンバン論文化している田村俊太郎先生をファーストとして、早速Letterチームが発足した。
ミーティングにて疑義の主要な点を共有し、Letterの執筆に入った…。

■ 2023年5月某日:神速でのLetter完成‼️
5月某日にLetterがほぼ完成した。#神速デアル
その後、英文校正などで整え、投稿、AJSM Nov 51(13)での掲載に至った。

■ 疑義の大まかな内容
①MCID算出前の外部アンカーとの相関関係を算出していない
・著者らは膝OA者(312名)への治療効果に関するMCIDを算出しているが、そもそも外部アンカー法を用いてMCIDを算出する場合、外部アンカーとMCIDを算出する評価尺度の変化との間に相関関係があることが前提条件となる(📕Terwee, 2021 >>> doi.)。ちなみに、外部アンカー法でMCIDを算出する場合、0.3以上の相関係数が必要である。
・- 我々の研究では、BBSと外部アンカーの相関係数はrs=0.44(p<0.01)であり、外部アンカーが評価尺度の変化に十分に反応すれば、MCID値は安定することを示している(📕Hayashi, 2022 >>> doi.)。

②外部アンカー測定時の盲検化の有無が不明
・患者の主観的な改善を外的なアンカーとして用いているが、彼らの論文では、患者に改善状況を尋ねた際の盲検化については言及していない。
・また、6段階の外部アンカー(1、完全に回復~6、かなり悪化)のうち、どれを閾値として最小の変化と判断したのかも明らかではない。
・さらに、最小の変化を達成した人の割合も示されていない。

③MCIDROCを算出する際のROC曲線下面積(AUC)の報告
・MCIDROCを算出する際には、その判別精度を確認する必要があり、ROC曲線下面積(AUC)が0.7以上であれば、良好な判別性能があるとされている。
・残念ながら、FranceschiniらはMCIDROC、MCIDPred、MCIDAdjのAUC値を報告していない
 ※ この情報はMCIDの計算として推奨されている

④そもそも外部アンカー方ができるなら分布法に意味は少ない
・Franceschiniらは8つのMCIDを分布法で算出しているが、分布法は信頼できる外部アンカーがない場合に用いられる方法である。信頼できる外部アンカーがない場合のMCIDの算出方法として、0.5×標準偏差が提案されているが、この値も近年では有用性が低いことが示されている(📕Tsujimoto, 2022 >>> doi.)。
・MCIDがMDCを上回ることは重要であるが、様々な分布に基づくMCIDを計算し、それらの違いを議論することは、MCIDの本来の意味を考えるとあまり意味がない。

✅ P.S. 当該論文には他の研究者からもレターが来ている
Full textが確認できないため、内容はわからないのだが、以下のレターが来ている。
これは、当該論文に対して我々だけが疑義を表明したわけではなく、やはりこの論文がミスリードしてしまう可能性のある論文だったことが分かると思われる。

📕Matthew S. Tenan. The Minimal Clinically Important Difference: Letter to the Editor. Am J Sports Med. 2023 Nov;51(13). https://doi.org/10.1177/03635465231189223

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

2日連続で、SNSとは何かを考えさせられる文献抄読となる。
これまで、SNS、とくに𝕏 (旧Twitter)は、入力か、あるいは出力の場だと思っていた。

入力とは、勉強ツールとしての活用である。
𝕏上には、常に各専門分野からの最先端の情報やつぶやきに溢れている。
その時代の波に乗るように、情報に触れ、深掘りし、自らの血肉とする過程である。

出力とは、情報発信ツールとしての活用である。
入力とは逆の矢印の営みで、自らの専門分野から情報を「供給する」側となる。
ここでは、時代の波の一部を形成する役割を担っていて、発信された情報が読者のアンテナに触れればキャッチされる。

だが、今回のこのレターは、第三の場であることを示した。
すなわち、創造の場としてのSNSの活用、である。
今回の流れをおさらいしてみる。

■ 𝕏上への情報発信(文献抄読)
■ 𝕏上での疑義知覚-共有(DM)
■ Letterの執筆-投稿-受理(AJSM)
■ X上での情報発信(文献抄読)

つまり、今回のLetterは単なる入力でも、出力でもなく、𝕏上で生まれ、育ち、実った
SNSは、情報の入力-出力の中間域であるところの「統合」「創造」の場にもなりうる。
今回の文献抄読→Letter→文献抄読、という経験からそれを強く感じた。
少なくとも初回の文献抄読がなければ、今回のLetterや、それを巡る議論は起こらなかったわけで。
SNSの威力や、新たな役割や、チームの威力や、…いろんな力に触れて、気持ちがいっぱいになった。
結論:毎日の文献抄読は、何かの麹の1粒になっているかもしれない。さらに励め!

この亀山社中は破産寸前だ。
なるほど亀山社中はちっぽけな存在でとるには足るまい。
しかし、ちっぽけではあるが、麹の一粒だ。
麹は一粒でも酒を造ることができる。
この亀山社中はビョウなりと言えども、おれの構想の新しい日本を作る麹の一粒だ。
この麹を枯れさせてはならぬ。

~竜馬がゆく(7)P122~

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