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この10年間のトライアウト。年齢が若く, 球速が速くなった

📖 文献情報 と 抄録和訳

エリート野球投手における尺側鎖骨靭帯断裂。高校野球のショーケースでの露出は傷害と関連するか?

📕Kriz, Peter K., et al. "Ulnar Collateral Ligament Tear in Elite Baseball Pitchers: Are High School Showcase Exposures Associated With Injury?." The American Journal of Sports Medicine 50.11 (2022): 3073-3082. https://doi.org/10.1177/03635465221113859
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✅ ショーケースとは? What’s a Baseball Showcase?
・野球のショーケースは、選手にとって大学のコーチやプロのスカウトの前で野球の技術を大学のコーチやプロのスカウトの前で披露すること
・ショーケースは、ワークアウトセッションと少なくとも1つの試合からなり、大学の野球部員募集カレンダーによって制限されている
・ショーケースの主な目的は、大学のコーチが高校生の選手を見て、気に入った選手がいれば連絡を取ること
・野球のショーケースは、高校生のアスリートが大学の野球部の監督に自分の能力を示す機会であり、試合に勝つことは二の次であるため、採用活動のプロセスにおいて非常に重要なイベント
・スカウトや大学のコーチは、生まれ持った能力、規律、スキルレベル、技術、そしてしばしば選手の全体的な態度を評価する

🌍 参考サイト① >>> site., 🌍 参考サイト② >>> site.

[背景・目的] 尺側側副靭帯再建術(ulnar collateral ligament reconstruction, UCLR)手術は、アマチュアおよびプロ野球の投手において著しく増加している。ショーケースへの参加は傷害の危険因子と考えられてきたが、この関連性を裏付けるデータは限られている。仮説:エリート投手は、若い年齢で速球速度90マイル(144.8km/h)以上、92マイル(148km/h)以上、95マイル(152.9km/h)以上を達成すると、若い年齢でこれらの速度閾値を達成しなかった投手と比較して、キャリアの早い段階でUCLRを受ける可能性が高くなるであろう。ショーケースへの参加回数が多いエリート投手は、参加回数が少ないエリート投手と比較して、UCLRを受ける可能性が高いであろう。

[方法] 研究デザイン:コホート研究;エビデンスレベル、3。メジャーリーグベースボールのドラフト1~5巡目で指名された投手(2011~2020年)の記述的データ、ショーケースの成績、および怪我のデータを、一般に公開されているデータベースから収集した。UCLRを受けた投手と受けていない投手の連続変数とカテゴリー変数を比較し,ロジスティック回帰を用いて多変量解析を行った。正規分布が確認された後(Shapiro-Wilk検定;P = .183),初回UCLR時の平均年齢の±1SDの標準偏差(standard deviations, SD)を用いて,アーリーキャリアとレイトキャリアのUCLRサブグループの定義を行った。UCLR早期群は≦1SD(19.09年)、UCLR後期群は≧+1SD(24.79年)と定義された。経時的な傾向は線形回帰で評価した。

[結果] 845人の投手のうち、659人(78.0%)がショーケースのパフォーマンスデータを回収可能であった。845人の投手のうち、229人(27.1%)がUCLRを受けた。ショーケースで記録された速球のピーク速度は、UCLRの最も強い予測因子だった(調整オッズ比、1.19;95%CI、1.02~1.39;P = 0.03)。高校時代(HS)の速球のピークは、UCLRを受けなかった投手と比較して、UCLRを受けた投手で有意に高かった(それぞれ91.57 vs 90.71 mph; 95% CI, -1.43 to -0.29; P < .01)。投手が初めてHSショーケースに参加した年齢は、UCLRが早いグループと遅いグループで有意に若かった(それぞれ15.53 vs 16.51;95% CI, -1.53 to -0.41;P < .01)。UCLRが早いエリート投手は、遅いUCLRのグループと比較して、約2倍のショーケースに参加した(それぞれ5.38対2.89;95%CI、0.43から4.54;P = 0.02)。エリート投手が参加したHSショーケースの平均数は、2011~2020年の調査期間中に2倍以上に増加した(ショーケース総数2.88から6.00;P < 0.001)。投手が初めてHSショーケースに参加した平均年齢も、10年の間に着実に低下した(16.52歳から15.63歳;P < 0.001)。

[結論] エリート投手において、ピーク速度はプロ入り前のUCLRの最も強い予測因子であった。エリートアマチュア投手は,10年来の傾向として,より若い年齢でより多くのショーケースに参加していた.全体として、この多変量解析に含まれる変数は弱い予測因子であり、UCLR率の分散の3.8%を説明するに過ぎなかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近、高校野球部のトレーナーをしていて、強く感じることがある。
それは、野球競技人口の低下と、競技への取り組み方の二極化、である。
野球競技人口の低下は、少子化という分母の低下と、野球競技の人気減衰傾向という分子の低下の要因がある。
注目したいのは『競技への取り組み方の二極化』だ。
どういうことか。

この二極化は、スポーツをやる目的の違いによって生じる。
1つは「レクリエーション型」で、その競技を楽しんだり、それによって友人を作ったりというライトな目的をもっている。
他方、「プロフェッショナル型」は違う。
幼少期から、その競技を極めること、その競技で生計を立てること、勝つことを至上命題としている。
プロフェッショナル型は、早期にスポーツ専門化(関連note参照)し、部活というよりはボーイズなどのクラブに所属して、本気の練習を突き詰めていく。
その結果、甲子園を見ていただければよく分かるが、若年層の競技レベルが爆上がりしている。
今回の抄読研究の結果を見ると、アメリカにおいても似たような現象は起こっているようだ。

そして、早期に専門化し、早期に競技レベル(例えば球速)が上がった選手は、障害を負いやすいことが知られている(関連note参照)。
今回の研究結果も、それを示しているように思われる。
まあ、出力の威力が大きければ、反動も大きくなるのは自明の理である。
地球上の誰1人、作用反作用の法則から逃れることはできないのだから。
僕たちの日々に生かせるとしたら、「早熟の選手は障害予防の介入ゴールデンタイムも早めに訪れている」ということを知り、早期にフィジカル面、技術面の評価・介入を検討すること。
いやはや、時代は変わっている。
僕らも変わらねば。

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