がん患者へのHIIT。その有効性と安全性
📖 文献情報 と 抄録和訳
がん患者またはがんサバイバーにおけるHIITの有効性。メタアナリシスによるアンブレラとマッピングのレビュー
[背景・目的] がん患者またはがんサバイバーにおいて、第一選択のがん治療に加えて高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training, HIIT)を行うことが、心肺機能(cardiorespiratory fitness, CRF)、生活の質(quality of life, QoL)、アドヒアランス、有害事象に対する有効性について、利用可能なエビデンスを評価すること。
[方法] 包括的レビューとメタ分析(meta-meta-analysis, MMA)を実施した。2021年8月までMEDLINE,EMBASE,Cochrane Database,CINAHL,Scopus,SPORTDiscus,Web of Scienceで系統的な検索を行った。論文選択、品質評価、バイアスリスク評価は、独立した2名の査読者によって行われた。MMAはランダム効果モデルで行い,要約統計量は,すべての標準化平均差(standardized mean differences, SMD)と対応する95%信頼区間(confidence interval, CI)を重み付けしてまとめたフォレストプロットの形で示した。
[結果] 7件のシステマティックレビューが含まれた。
■ CRFについて
・がん治療へのHIITの追加は、他の治療を追加した場合と比較して、HIITが有効であるという統計的に有意な差を示した(SMD = 0.45; 95% CI 0.24 to 0.65)。
・中強度連続トレーニング(moderate-intensity continuous training, MICT)を追加した場合と比較すると、有意差はなかった(SMD = 0.23; 95% CI -0.04 to 0.50)。
■ QoLについて
・いくつかの論議を伴うものの、肯定的な結果を示した。
■ HIIT介入のアドヒアランス
・アドヒアランスは高く、54%から100%の範囲であった。
■ 有害事象について
・ほとんどのシステマティックレビューで報告されておらず、発生した場合でも軽度であった。
[結論] 第一選択がん治療との併用において、HIITはCRFとQoLの点で有効な介入であり、最適なアドヒアランス率であることが示された。また、がん患者やがんサバイバーへのHIITの実施は、副作用がない、もしくは少ないことから安全であることが示された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
「腫れ物に触れるような」リハビリテーション。
それは、あまり効果を出せる代物とは言い難い。
剣は “強く” 振らねば何も斬れないように、
笛は “強く” 吹かねば何も奏でないように、
“強く” ないリハビリは、何も変えにくいことが最近のエビデンスによって示されている。
Intensity-dependent effects (強度依存的な効果)。
強く、より強く、ギリギリまで強く。
その限界ギリギリの境界線を明らかに知る。
そのために必要なことは知識、ついで自信がついてくる。
がん患者を目の前にしたとき。
あまり知識がないセラピスト(僕)は、こう考えるだろう。
「がん患者さんって、どのくらい負荷かけられるのだろう。有害事象は?ちょっと分からない。とりあえず『有害事象にならない程度の低負荷で行おう』」
自分で勉強し、確証を得られるまでは、負荷は上げられない。
・・・。
その後、勉強し、確証を得て、強度を上げることを試みる、というセラピストならまだいい。
だが、多くの場合、『そのまま。』、になっていないか。
とりあえず、の継続。
それでは、いつまでたっても疾患や症状に対して、強いパンチを繰り出せない。
それじゃ、倒せない。
今回の論文において、膨大な1次情報を包含したmeta-meta analysisによって『がん患者に対するHIITは安全で有効である』が示された。
僕は、それを知った。
今よりあと、僕ががん患者を目の前にしたとき。
「がん患者への高負荷は善である場合が多い。もちろん症状には注意しながらだが、高負荷トレーニングを第一選択にしてやっていこう」
そう思える。
これが、勉強することの効力だ。
見える世界への解釈や意志が、明らかに変わる。
それに引き続き、患者さんをはじめとして自分に関わる人々に影響する。
勉強しよう、自分を変えよう、生長しよう。
未知による怖れを、踏み出せない一歩を、減らすために。
そして、自分に関わるたくさんの人に、できるだけ善の影響を与えられるように、響かせられるように。
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