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がん患者へのHIIT。その有効性と安全性

📖 文献情報 と 抄録和訳

がん患者またはがんサバイバーにおけるHIITの有効性。メタアナリシスによるアンブレラとマッピングのレビュー

📕Herranz‐Gómez, Aida, et al. "Effectiveness of HIIT in patients with cancer or cancer survivors: An umbrella and mapping review with meta‐meta‐analysis." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2022). https://doi.org/10.1111/sms.14223
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✅ 前提知識:高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training, HIIT)とは?
・HIITとは、負荷の高い運動と小休憩を繰り返すトレーニング法のこと。
・限界まで体を追い込むことで、常に脂肪が燃焼しやすい状態をキープし、体脂肪減少と筋肉増量効果を得るもの。

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[背景・目的] がん患者またはがんサバイバーにおいて、第一選択のがん治療に加えて高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training, HIIT)を行うことが、心肺機能(cardiorespiratory fitness, CRF)、生活の質(quality of life, QoL)、アドヒアランス、有害事象に対する有効性について、利用可能なエビデンスを評価すること。

[方法] 包括的レビューとメタ分析(meta-meta-analysis, MMA)を実施した。2021年8月までMEDLINE,EMBASE,Cochrane Database,CINAHL,Scopus,SPORTDiscus,Web of Scienceで系統的な検索を行った。論文選択、品質評価、バイアスリスク評価は、独立した2名の査読者によって行われた。MMAはランダム効果モデルで行い,要約統計量は,すべての標準化平均差(standardized mean differences, SMD)と対応する95%信頼区間(confidence interval, CI)を重み付けしてまとめたフォレストプロットの形で示した。

[結果] 7件のシステマティックレビューが含まれた。

■ CRFについて
・がん治療へのHIITの追加は、他の治療を追加した場合と比較して、HIITが有効であるという統計的に有意な差を示した(SMD = 0.45; 95% CI 0.24 to 0.65)。
・中強度連続トレーニング(moderate-intensity continuous training, MICT)を追加した場合と比較すると、有意差はなかった(SMD = 0.23; 95% CI -0.04 to 0.50)。

■ QoLについて
・いくつかの論議を伴うものの、肯定的な結果を示した。

■ HIIT介入のアドヒアランス
・アドヒアランスは高く、54%から100%の範囲であった。

■ 有害事象について
・ほとんどのシステマティックレビューで報告されておらず、発生した場合でも軽度であった。

[結論] 第一選択がん治療との併用において、HIITはCRFとQoLの点で有効な介入であり、最適なアドヒアランス率であることが示された。また、がん患者やがんサバイバーへのHIITの実施は、副作用がない、もしくは少ないことから安全であることが示された。

✅ この研究で提唱されているがん患者へのHIITトレーニングプログラム
・運動応用のパラメーターに関しては、一次研究の異なるHIITプロトコルのそれぞれを分析することで、このタイプの運動の最も一般的な使い方に基づいたいくつかの推奨事項を提示することができ、臨床現場での応用に役立つと思われる

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「腫れ物に触れるような」リハビリテーション。
それは、あまり効果を出せる代物とは言い難い。
剣は “強く” 振らねば何も斬れないように、
笛は “強く” 吹かねば何も奏でないように、
“強く” ないリハビリは、何も変えにくいことが最近のエビデンスによって示されている。
Intensity-dependent effects (強度依存的な効果)。
強く、より強く、ギリギリまで強く。
その限界ギリギリの境界線を明らかに知る。
そのために必要なことは知識、ついで自信がついてくる。

がん患者を目の前にしたとき。
あまり知識がないセラピスト(僕)は、こう考えるだろう。
「がん患者さんって、どのくらい負荷かけられるのだろう。有害事象は?ちょっと分からない。とりあえず『有害事象にならない程度の低負荷で行おう』」
自分で勉強し、確証を得られるまでは、負荷は上げられない。
・・・。
その後、勉強し、確証を得て、強度を上げることを試みる、というセラピストならまだいい。
だが、多くの場合、『そのまま。』、になっていないか。
とりあえず、の継続。
それでは、いつまでたっても疾患や症状に対して、強いパンチを繰り出せない。
それじゃ、倒せない。

今回の論文において、膨大な1次情報を包含したmeta-meta analysisによって『がん患者に対するHIITは安全で有効である』が示された。
僕は、それを知った。
今よりあと、僕ががん患者を目の前にしたとき。
「がん患者への高負荷は善である場合が多い。もちろん症状には注意しながらだが、高負荷トレーニングを第一選択にしてやっていこう」
そう思える。
これが、勉強することの効力だ。
見える世界への解釈や意志が、明らかに変わる。
それに引き続き、患者さんをはじめとして自分に関わる人々に影響する。
勉強しよう、自分を変えよう、生長しよう。
未知による怖れを、踏み出せない一歩を、減らすために。
そして、自分に関わるたくさんの人に、できるだけ善の影響を与えられるように、響かせられるように。

勉強、勉強、勉強のみよく奇跡を生む
自分を本当に生かしたいと思ったら、
人並み以上の勉強家にならなければならない

武者小路実篤

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