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上肢骨折後の恐怖回避信念


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者の上肢骨折後の恐怖回避の信念と行動:系統的レビューとメタエスノグラフィー

📕Smith, Toby O., Oliver Brown, and Mark A. Baxter. "Fear-avoidant beliefs and behaviours after upper limb fracture in older people: a systematic review and meta-ethnography." Osteoporosis International (2024): 1-12. https://doi.org/10.1007/s00198-024-07030-7
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[背景・目的] この系統的レビューは、上肢骨折後に関連する恐怖回避の信念に関する高齢者の見解を理解することを目的とした。

[方法] 創刊から2023年4月1日まで、公開および未公開の文献データベースを系統的に検索した。上肢骨折をした人の恐怖回避の信念や行動の観点を報告した質的研究を対象とした。抽出されたデータには、面接を受けた人の特徴、恐怖の経験と認識、転倒の恐怖、恐怖回避の信念と行動が含まれた。データはメタエスノグラフィーのアプローチとGRADE-CERQUALツールを用いて統合された。

[結果] 8件の研究が適格であった(n = 150人;橈骨遠位端骨折109件/上腕骨骨折41件)。
3つの包括的なテーマが同定された:
(1)恐怖回避体験のタイプ
・痛み、再受傷、治癒遅延、他の部位への損傷の四つの要素によって形成される。

(2)恐怖回避の信念と行動の促進因子
■ 治癒と回復期待の不確実性:
・患者がどのように回復するのか、回復にかかる時間についての不確実性。
・この不確実性は、患者が治癒過程について十分な情報を持っていないことに起因する。
■ 将来の身体能力に対する不確実性:
・患者が将来的にどの程度まで元の身体機能を回復できるのかについての不安。
・回復後の身体能力に関する明確な見通しがない場合、恐怖回避信念が強化される。
■ 身体的な回復力と脆弱性に関する不確実性:
・患者が今後の生活でどの程度の活動を安全に行えるのかについての不確実性。
・これにより、再受傷を避けるために活動を制限する傾向が生まれる。

(3)恐怖回避の信念と行動の結果。
・これらの恐怖回避信念と行動は、患者の自己認識に変化をもたらし、自分を「脆弱な存在」として認識するようになる。
・さらに、この認識の変化は社会的役割やアイデンティティにも影響を及ぼし、次のような結果を招く。
■ 社会的アイデンティティと役割の変化
・社会的接触や物理的活動の減少。
・社会的な役割の変化や、自分自身を「弱い」「障害者」として見るようになる。
■ 身体活動および社会的関与の減少:
・怪我の再発や痛みを恐れるため、身体活動や社会的活動を避ける。
・これにより、さらなる社会的孤立や活動レベルの低下が生じる。

作成されたテーマは、中程度の信頼性のエビデンスに基づいている。要約すると、最初は上肢骨折を比較的軽傷と考える患者もいるが、時間の経過とともに、骨折が回復に長期的な視点を伴う広範な結果をもたらすことを理解するようになる。これはしばしば、恐怖心が薄らいだ最初の期間の後に起こる。転倒恐怖や運動恐怖にまつわる初期の健康信念を予防したり、それに挑戦したりするための教育と支援を骨折直後に提供することは、回復に不可欠である。

[結論] 恐怖回避の信念は、特定の高齢者の回復だけでなく、長期的な健康とウェルビーイングにも大きな影響を与える可能性がある。上肢外傷の急性期において、恐怖回避を考慮し、これを緩和するための手段を講じることは、これらの患者の受傷からの継続的な回復により良い結果をもたらすであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「みんなには俺の気持ちは分からないよ。だって、実際にこの病気になったことはないんだからね」

この言葉は、時折臨床現場で遭遇する会話の1つだ。
医療者の多くは、健常者であり、本当のところは患者さんの気持ちは分からない。
ただ、想像するしかない。
いや、だからこそ、実際に聞いてみるということは重要なことなのかもしれない。

今回の抄読研究は、患者さんが転倒後にどのような心理的な状況にあるのか、質的研究を束ねて調査した。
その結果、恐怖回避信念と行動のタイプ、促進因子、信念と行動の結果が示された。
このような実際の患者さんの心情を明らかにした研究はとても重要だと思う。
僕たちには想像しかできない、だが、その想像の精度を高めようとする努力はできるのかもしれない。

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