TKA後の遷延痛。痛みの性質で予後予測が可能かも
📖 文献情報 と 抄録和訳
人工膝関節全置換術後の持続性疼痛に関する記述
[背景・目的] 人工膝関節全置換術 (total knee arthroplasty, TKA)後、患者の約20%が持続的な術後疼痛(persistent postoperative pain, PPP)を経験する。術前・術後の痛みの強さは関連因子であるが、臨床状態に応じた具体的な介入戦略を決定するためには、より詳細な痛みの記述が必要である。本研究では、術前・術後の痛みの記述とPPPとの関連を明らかにすることを目的とした。
[方法] TKA患者52名を対象に、術前と術後2週の疼痛強度(Numerical Rating Scale: NRS)と様々な疼痛の性質(Short Form McGill Pain Questionnaire – 2: SFMPQ2)を評価し、それぞれが比較された。さらに、術後3ヶ月と6ヶ月における痛みの強さとPPPの関係をベイズ法を用いて分析した。
[結果] その結果、関節炎に由来するような「ずきんずきん」や「鋭い」、「うずくような」といった疼痛の性質はTKAの施行後に改善されていることが分かった。「ずきんずきん」や「鋭い」、「うずくような」、「疲れてくたくたになるような」といった疼痛の性質は、術前と比べて術後2週で有意に改善した。また、「さわると痛い」や「むずがゆい」といった疼痛の性質はわずかに悪化した。
続いて、術前・術後2週における疼痛の性質と、術後3ヵ月・6ヵ月時点における疼痛強度の関連性を分析した結果、いくつかの術前(「ビーンと走る」、「うずくような」、「軽く触れると痛い」、「しびれ」)と、術後2週(「ひきつるような」)の性質が、術後3ヵ月の疼痛強度と関連していることがわかった。また、これらの性質と術後3ヵ月および6ヵ月における遷延痛の存在(NRS≧3)の関連性を分析したところ、術後2週における「ひきつるような」のみが関連していることがわかった。
[結論] 周術期の疼痛管理においては、患者の訴えに注意深く耳を傾け、臨床状態に応じた適切な介入戦略を決定することが重要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
TKA後の痛みの改善には、時間がかかる人が多い。
これは、エビデンス上も明らかになっていることで、以前の文献抄読においては「TKA後5年経っても、痛みの改善がまだ続いている」という人々がいるということが報告された(関連note参照)。
ただし、これは全員ではなくて、早期に疼痛が改善する人もいれば、疼痛が持続する(遷延痛)人もいる。
これらの人々を早期から見分けることができれば、リハビリテーションにおける目標設定や治療内容を工夫することができるかもしれない。
今回の抄読研究は、そんな悩みに光明を与える研究だった。
術後早期の疼痛の性質によって、遷延痛に移行しやすい人を特定できる可能性を示してくれた。
具体的には、「引きつるような痛み」は、遷延痛に移行しやすいらしい。
TKA後の痛みの評価は、「疼痛の性質」をしっかり聴取した上で、予後予測につなげたい。
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