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水中リハの世界。筋活動アップに有効な3つ

📖 文献情報 と 抄録和訳

WATERの研究。腰痛患者の筋活動を増加させ、痛みを抑えるアクアティックエクササイズはどれか?

📕Psycharakis, Stelios G., et al. "The WATER study: Which AquaTic ExeRcises increase muscle activity and limit pain for people with low back pain?." Physiotherapy (2022). https://doi.org/10.1016/j.physio.2022.03.003
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🔑 Key points
- 慢性腰痛者(chronic low back pain, CLBP)が行う26種類の水中リハビリテーション運動について体幹や臀部の筋活動を比較した初めての研究である。
- 水中エクササイズの痛みの発生と強度は非常に低く、ほとんどのエクササイズは完全に無痛である。
- 3つの水中エクササイズは、筋活動を高めるのに特に効果的であった

[背景・目的] 水中運動療法は慢性腰痛症(CLBP)の治療と管理に用いられている。しかし、著者らの知る限り、CLBP患者が行う様々な水中運動間の筋活動を比較した研究はこれまでない。そこで本研究では、異なるリハビリ用アクアエクササイズ間の筋活動、痛み、知覚的労作、運動強度を評価し、比較した。

[方法] デザイン横断的研究。設定大学の建物内にある25m室内プール。参加者非特異的なCLBPを有する20名の参加者。評価浅瀬(水深1.25m)での26の水中運動。脊柱起立筋、多裂筋、大殿筋、中殿筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の筋活動を両側で定量化した。主な結果平均筋活動、ピーク筋活動、疼痛(ビジュアルアナログスケール)、知覚的労作(ボルグスケール)、運動強度(心拍数)。

[結果] 股関節外転・内転および伸展・屈曲運動は、大臀筋の活動をより高くした。スクワット運動のバリエーションは、背部伸筋の活動を増加させた。浮き具を使用し、仰向けに浮いた状態で脚や体幹の動きを含む運動や、いくつかのプロプリオセプティスやダイナミックな下肢の運動で、腹筋の活動がより高くなった。痛みの発生および強度は非常に低く、17のエクササイズで無痛であった。以下の水中エクササイズは、筋活動を高めるのに特に効果的であった:(a)大殿筋と中殿筋のための股関節外転/内転および伸展/屈曲エクササイズ(b)背部伸筋(脊柱起立筋と多裂筋)のためのスクワットエクササイズ(c)腹筋(腹直筋、外・内腹斜筋)に対する背中に浮いたまま足の動きを含む支援浮力装置を利用したエクササイズ

[結論] 本研究は、CLBP患者が水中エクササイズを行う際の体幹と臀部の筋活動、痛み、強度、自覚的労 働に関するエビデンスを提供するものである。理学療法士は、努力と筋活動の進行、運動の種類のバリエーションを求めており、特定の筋肉を標的としたり、避けたりすることを望むかもしれないので、本研究結果は、リハビリテーションのための運動を処方する際に有用であると思われる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

水中リハの特徴や強みと何だろう。
勉強してみた。

✅ 水中リハの特徴と強み
- 水中リハのメリットは、水の特性である「浮力・抵抗・水圧・水温」を利用して運動ができること。
- 浮力:水中に入ると体が軽くなる。腰あたりの水位だと体重は約半分に、肩まで水につかると10分の1にまで軽減する。
- 水の抵抗:動きがゆるやかになり、膝関節や腰部に瞬間的に大きな負担がかかることがない。つまずいたり滑ったりしたときにも、体が水の抵抗を受けるので転倒の心配もない。
- 浮力や抵抗を利用できる水の中は、足腰に不安のある方でも運動しやすい環境といえる
- 水圧①:そのため自然に呼吸が深くなり、腹式呼吸をするようになる。それだけ酸素供給量が増え、呼吸筋もきたえられて、呼吸機能が向上する。
- 水圧②:全身の血液循環をよくする作用もある。とくに水深の深い足元には、大きな水圧がかかる。その影響で水圧がポンプの役割をし、足の血液を心臓に送り返す働き(心臓還流)がよくなり、心臓の機能も向上する。
- 水温:大きな効用が、肥満解消です。多くのプールでは、安全性や運動効率を考慮して水温を29~31℃程度に設定しており、水温が体温より少し低いため、水中に入ると体熱が奪われる。すると私たちの体はエネルギー生産を活発にして、体温調節を図ろうとする。このとき脂肪の燃焼効率も高まることが、肥満解消にはプラス条件となる。
🌍 参考サイト >>> site.

陸上では、運動量を保とうとすると関節負荷量が増してしまうという、トレードオフ関係に悩まされることが多い。
水中リハは、その悩みを解決してくれる画期的な方法かもしれない。
ただし、プールが自施設に整備されていない、という場合がほとんどなので、その場合にどのように水中リハの環境を整えていくかが、臨床応用へのとても大事なポイントになりそうだ。

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