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3Dプリンター骨モデルを用いた患者説明の効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

三次元モデルによる大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群の患者理解の向上

📕Kahsai, Ermyas A., et al. "Improving Patient Understanding of Femoroacetabular Impingement Syndrome With Three-Dimensional Models." JAAOS Global Research & Reviews 8.5 (2024): e24. https://doi.org/10.5435/JAAOSGlobal-D-24-00116
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✅ 前提知識:大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI, Femoroacetabular Impingement Syndrome)
・以下3つのタイプがある
・カム(cam)タイプ:大腿骨の骨頭が変形し、股関節の動きに制限をかけるタイプ
・ピンサー(pincer)タイプ:寛骨臼が大腿骨頭を過度に覆い、動きを制限するタイプ
・混合タイプ:カムタイプとピンサータイプの両方の特徴を持つタイプ

📕Khan, Moin, et al. "New perspectives on femoroacetabular impingement syndrome." Nature Reviews Rheumatology 12.5 (2016): 303-310. https://doi.org/10.1038/nrrheum.2016.17

[背景・目的] 3次元(3D)プリントモデルは、大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI)のような複雑な解剖学的病態を患者に理解させるのに役立つ可能性がある。われわれは、FAIの診断と手術計画について話し合う際に、標準的な画像診断法と比較して3Dプリントモデルを使用した場合の患者の理解と満足度を評価することを目的とした。

[方法] ある外科医のクリニックでFAIを発症した新規患者76人(3Dモデル群37人、対照群39人)を対象に、FAIの画像診断と代表的な3Dプリントモデルを用いた教育、またはモデルなしの画像診断(対照)を行った。患者は、任意で受診後のアンケートを受け、診断の理解度、手術計画、受診満足度を評価した。

✅ 3Dプリンターによる骨モデルを用いた介入の詳細
・3Dモデルコホートでは、外科医は患者固有の画像(X線写真、MRI)に加え、FAIの代表的な3Dプリントモデル(図)を用いて診断と外科的治療を説明した。
・対照群では、3Dモデルは使用せず、患者固有の画像(レントゲン写真、MRI)に加え、関連する手術治療と病理について口頭で説明した。
・1回の診療時間は約30分で、2つのコホート間で説明の偏りが生じないよう、各診療がこの時間内に収まるよう配慮された。

この図は、3Dプリンターで作成された左股関節の「カム」モデルである。このモデルは、股関節インピンジメント症候群(FAI)の患者に対する臨床説明に使用される。左側の写真(A)は、股関節を自然な位置で示しており、右側の写真(B)は大腿骨を外旋させてカムの形態を示している。この3Dモデルを用いることで、患者に対して股関節の異常構造を視覚的に説明し、治療法の理解を助けることができる。特に、カム変形は大腿骨の首部分に異常な骨の出っ張りが生じることで、股関節の正常な動きを妨げる。

[結果] 3Dモデル群の患者は、対照群と比較して、FAI(100点満点中90.0±11.5点対79.8±14.9点;P = 0.001)および手術(89.5±11.6点対81.0±14.5点;P = 0.01)の平均理解度が有意に高いと報告した。両群とも、受診に対する満足度は高かった。

この表は、患者アンケートの結果を示している。アンケートは3Dモデルを使用した患者群(3D Model, n = 37)と、3Dモデルを使用しなかった対照群(Control, n = 39)に分けられている。各質問について、両群の回答結果と統計的有意性が示されている。

[結論] 本研究では、FAIS患者の診療における3Dプリント模型の使用により、診断および外科的治療に対する患者の認知的理解が向上した。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

百聞は一見に如かず、とはよく言ったものだ。
正直、FAIの病態を映像として3次元的にイメージすることは難しいことだ。
医療者ですら難しいものを、患者さんに要求することはなお難しいだろうと思う。

今回抄読した研究では、3Dプリンターを用いた骨モデルを作ってしまうことでその解決を試みた。
その結果、患者の病態理解、手術についての理解が骨モデル非使用群と比較して有意に向上した。
これは、FAIに限らず、臨床応用した方がいい説明方法だと思う。
流石に一人一人3Dプリンターを用いて個別に骨モデルを作ることはコストなど現実性が低い気がするが、それぞれの関節の骨モデルをリハ室に常駐しておき、現在の当該患者に起こっている病態と、これからしようとしていることを説明することはできそうだ。
その結果、患者の治療に対する納得度、満足度を上げることができるかもしれない。
骨モデルの臨床応用、考えたい。

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