糖尿病者の心肺機能
📖 文献情報 と 抄録和訳
1型および2型糖尿病では心肺機能が低下する:系統的レビュー、メタ分析、メタ回帰
[背景・目的] 心肺機能の低下は心血管系疾患のリスクを最大8倍増加させ、死亡率の最も強い予測因子の一つである。1型糖尿病患者や2型糖尿病患者では糖尿病患者でない人と比較してCRFが低下していることを示す研究がある一方,糖尿病に関連したCRFの低下を示さない研究もある。目的:我々は,糖尿病がCRFに影響を及ぼすかどうかを検討し,もし影響を及ぼすとすれば,糖尿病に関連した運動障害の基礎となる臨床的関連を明らかにすることを目的とした。
[方法] 68の研究が定量的解析に含まれた。標準化平均差(SMD)を算出し、ランダム効果モデルを用いてメタ分析とメタ回帰を行った。
[結果]
1. 糖尿病の種類(Type of Diabetes)
・タイプ1糖尿病 (T1D): SMD = -0.58(中程度の効果)
・タイプ2糖尿病 (T2D): SMD = -0.97(大きな効果)
・T2Dの方がCRFへの負の影響が大きいことが示されている。
2. 性別(Sex)
・女性: SMD = -0.77(中程度の効果)
・男性: SMD = -0.72(中程度の効果)
・性別によるCRF低下の違いは小さいが、どちらの性別でも中程度の負の影響が確認されている。
3. 臨床的合併症(Clinical Complications)
・合併症のある被験者: SMD = -1.66(非常に大きな効果)
・合併症のない被験者: SMD = -0.69(中程度の効果)
・合併症の有無によってCRFへの影響が大きく異なり、特に合併症がある場合は大幅なCRFの低下が見られる。
4. 身体活動状況(Physical Activity Status)
・活動的な被験者: SMD = -0.50(中程度の効果)
・座りがちな被験者: SMD = -0.83(大きな効果)
・座りがちな生活を送る被験者は、活動的な被験者に比べてCRFの低下が顕著である。
5. 全体(Overall)
・全体として、糖尿病患者のCRFは大幅に低下していることが示されている (SMD = -0.80)。
メタ回帰分析により、CRFに対する糖尿病の影響は、1型糖尿病では主にHbA1c値(B = -0.07、P < 0.001)、2型糖尿病では肥満度(B = -0.17、P = 0.005)と関連していることが示された。
[結論] これらのデータは、低CRFの主要な危険因子に対する糖尿病の負の影響を示し、糖尿病と関連した低CRFの特異的な臨床マーカーに関する重要な洞察を提供するものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
心肺機能、心肺フィットネスは以前にも文献抄読をしてきたテーマだ。
心肺フィットネスは脂肪、疾患リスクの予測因子であり、持久力の高い高齢者は作業記憶が優れることもわかってきている。
つまり、心肺機能は人間の健康にとって重要なマーカの1つである。
そんな心肺機能が、糖尿病者では低下しているという。
特に、2型糖尿病者ではその低下が著しいらしい。
今回の抄読研究の結果から、身体活動状況によって、心肺機能に影響を及ぼすことができるかもしれない。
何にせよ、糖尿病(特に2型糖尿病)という疾患を見たときには、心肺機能の低下を念頭に置いた方が良さそうだ。
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