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持久力の高い高齢者は作業記憶も優れる

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における有酸素運動フィットネスとワーキングメモリーの関係の神経メカニズム:fNIRSによる研究

📕Hyodo, Kazuki, et al. "Neural mechanisms of the relationship between aerobic fitness and working memory in older adults: An fNIRS study." Imaging Neuroscience 2 (2024): 1-19. https://doi.org/10.1162/imag_a_00167
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🔑 Key points
🔹有酸素能力(持久力)の高い高齢者は認知機能の一つである作業記憶能力が高いことが知られているが、その脳内メカニズムは解明されていなかったため、近赤外光脳機能イメージング装置を用いて検証した。
🔹作業記憶能力テスト中、特に難しい課題に取り組む際、高齢者の前頭前野では若年成人に比べて多くの領域が活動していた。これは、加齢による一部の脳機能の低下を他の領域が補う代償的な脳活動を示している。
🔹さらに、有酸素能力が高い高齢者ほど、前頭前野の代償的な活動が顕著であり、作業記憶能力テストの成績が優れていることを確認した。

[背景・目的] 高齢者において、有酸素運動の体力が高いほどワーキングメモリー(WM)のパフォーマンスが向上することを明らかにする研究が増えている。しかし、この関連性の根底にある機能的神経メカニズムについては、依然として議論が続いている。加齢によって認知課題中の前頭前野(PFC)の働きが増加し、それが代償的に課題遂行能力と関連することが報告されている。そこで本研究では、高齢者における有酸素運動体力とWMパフォーマンスとの関係に関連する前頭前野の活性化パターンを明らかにすることを目的とし、加齢に伴う前頭前野の動員拡大に焦点を当てた。

[方法] 47名の高齢者(65~74歳、女性29名)と49名の若年成人(18~24歳、女性23名)が、0バック、1バック、2バックの条件を含む言語的および空間的Nバック課題を行った。反応時間(RT)と正確さ(ACC)が課題遂行能力の指標として評価された。実験課題中の前頭前野の活性化は、機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いてモニターし、適応的GLM法を用いて解析した。

課題遂行能力と前頭前野活性化を年齢群間で比較し、年齢に関連した前頭前野活性化パターンを見出した。高齢者のみに、有酸素性体力の指標として換気閾値(VT)を測定するための段階的運動負荷試験(GXT)を実施し、その後、相関分析と共変量の可能性をコントロールする媒介分析を用いて、高齢者における有酸素性体力、n-back課題遂行能力、前頭前野活性化の関係を検討した。

[結果] 高齢者と若年成人で言語性および空間性Nバック課題の成績や課題中の脳活動を比較した結果、高齢者は若年成人よりも成績が低く(反応時間が長く、正解率が低い)、さらに高難度の課題中、高齢者では若年成人よりも前頭前野の多くの部位が活動していることがわかった。この結果から、若年成人に比べて高齢者で作業記憶能力が低下していることと、高難度の課題を遂行するために前頭前野の広い範囲を動員していることを確認した。次に、高齢者において有酸素能力と課題成績、脳活動の関係性を見ると、有酸素能力が高い高齢者ほど、高齢者特有の脳活動(若年成人では課題中に活動が見られなかった脳領域の活動)が活発で、それが課題成績の高さ(高難度条件の反応時間)と関連している可能性が示された。

[結論] これらの結果は、有酸素運動レベルの高い高齢者ほど、言語性Nバック課題のパフォーマンスを向上させるために、おそらく代償的な活性化のために、より拡張したPFC領域を利用していることを示唆している。本研究は、高齢者における有酸素運動体力と認知機能の関係を支える神経メカニズムに光を当てるものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近の文献抄読で、今回の有酸素能力(持久力)と類似の『心肺フィットネス』と死亡、疾患リスクの関連を明らかにしたメタ解析を扱った(関連note参照)。
そして今回の抄読研究は、高齢者の持久力と脳活動、作業記憶が関連することを示した。

心肺フィットネスの文献抄読の考察でも述べたが、持久力というマーカの特徴は、ただ即時的なものではなく、今まで積み重ねてきた誤魔化しの効かないマーカであることだと思う。
心肺フィットネス、持久力、今後も注目していきたいマーカーである。

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