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運動イメージの前提。現時点との距離感が大切か

📖 文献情報 と 抄録和訳

脊髄損傷者における頸椎病変、損傷の完全性、ストレス、抑うつは、心的イメージの効率を低下させる

Kaur, Jaskirat, et al. "Cervical Spinal Lesion, Completeness of Injury, Stress, and Depression Reduce the Efficiency of Mental Imagery in People With Spinal Cord Injury." American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 101.6 (2022): 513-519. https://doi.org/10.1097/PHM.0000000000001955

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
■ 既知:脊髄の損傷は、時間の経過とともに認知機能の変化をもたらす。神経リハビリテーションにおけるイメージ技法の使用は、その良好な結果のために増加している。しかし、脊髄損傷者(SCI)がイメージのような認知戦略に適応を示すかどうかはまだ不明である。
■ 新情報:脊髄損傷者は、様々な要因によって精神的能力に差がある。本研究では、脊髄損傷者の大規模サンプルにおいて、①重症度が高い(完全損傷)ほど、②ストレスが大きいほど、③抑うつがあると、運動イメージの能力が低下することが明らかとなった。

[背景・目的] 本研究の目的は、脊髄損傷者における(1)臨床的変数(年齢、損傷レベル、損傷からの時間[TSI]、損傷の完全性)および(2)心理的変数(ストレスおよびうつ病)と心的イメージ能力との関係を評価することである。

[方法] 研究デザイン:本研究は横断的研究である。脊髄損傷者(N = 130)には、運動イメージの鮮明さに関する質問票(Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire)と運動イメージの鮮明さに関する質問票(Vividness of Motor Imagery Questionnaire)への記入を依頼した。また、ストレスとうつ病の評価のために、知覚ストレス尺度と患者健康質問票9をそれぞれ記入した。

[結果] 精神的イメージのスコアは、胸部損傷(P < 0.001)と比較して、頸部損傷(P < 0.001)で有意に低いことが判明した。さらに、脊髄損傷のレベルが高いほど、精神的イメージのスコアは低くなった脊髄損傷者では、損傷の完全性(アジア障害尺度による)も心的イメージ能力と有意な関係を示した(P < 0.001)。ストレス(P < 0.001)およびうつ病(P < 0.001)の存在もまた、これらの人々の心的イメージの効率低下と関連していた。

[結論] 脊髄損傷者におけるメンタル・イメージは、損傷の種類と心理的要因に関連するものであった。イメージに基づく介入は、その結果に影響を与える同定された因子を考慮した上でデザインされるべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

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あなたは、断崖絶壁の目の前に立っている。
向こう側に、飛び移ることができるだろうか。
このとき、「行けそう!」or「絶対無理」、がなんとなくイメージできるはずだ。
今回抄読した研究は、運動イメージには、この距離感が大切かも知れないことを教えてくれた。

今回の研究で着目したいのは、以下の結果だ。
- 精神的イメージのスコアは、胸部損傷(P < 0.001)と比較して、頸部損傷(P < 0.001)で有意に低いことが判明した。
- さらに、脊髄損傷のレベルが高いほど、精神的イメージのスコアは低くなった。
- 脊髄損傷者では、損傷の完全性も心的イメージ能力と有意な関係を示した(P < 0.001)。

すなわち、実際の運動との距離感が大きいほど、運動イメージすることが難しくなった。
以下のような思考実験がある。

✅ 原住民と戦車の話;思考実験
- まったく近代文明が立ち入っていない原住民のところに最新の戦車が入ったら、どうなるか?
- 原住民が戦車を分解し終えた後に出した結論は、「このものは走ってきた。したがって、中に馬が入っていた。しかし、その馬は見えなかった。それは、その馬がゴーストホースであったからである」だ。
- 人間は、『既知と未知の距離がある一定以上になった状態』を適切にイメージできないことを示す例。

スライド2

運動イメージをするには前提がある。
それは、「現時点での動作能力から離れすぎない距離感」である。
Next one motor imagery
つかず離れず、少し先のイメージをしてできるようになるスモールステップを繰り返す。
いきなり、跳躍的な未来を抱こうとしても、それは不毛かも知れない。

イメージするって事はつまり、 設計図が書けるって事だ!!
設計図が書けるって事はつまり、 実現出来るって事だ!!

竹原ピストル〜ぼくのイマジンより〜

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