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在宅日数という指標。次世代に求められるアウトカム

📖 文献情報 と 抄録和訳

家では毎日が楽しい?

📕Ankuda, Claire K., and David C. Grabowski. "Is every day at home a good day?." Journal of the American Geriatrics Society 70.9 (2022): 2481-2483. https://doi.org/10.1111/jgs.17973
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:在宅日数(DAH, days-at-home)という尺度について
・ある期間中に在宅で過ごした日数のこと
・このナラティブレビュー中で紹介された二論文においては、30日、60日、90日、180日(📕Shen, 2022 >>> doi.)、1年間(📕Freeed, 2022 >>> doi.)という5つの期間でDAHを算出している

[レビュー概要]

■ 近年、DAH測定の需要が高まってきている
・高齢者の多くは、終末期に病院やナーシングホームの外で過ごしたい、施設間での負担の大きいケアの移行を避けたいと強く望んでいるため、在宅日数は高齢者にとって価値の高い指標である(📕Barnato, 2007 >>> doi.; 📕Groff, 2016 >>> doi.)。
・急性外傷後のリハビリテーションに割り当てられた日数は、 近年著しく減少しており(📕Ottenbacher, 2004 >>> doi.)、医療の比重が徐々に在宅や施設に移りつつある。

■ DAHを用いた研究例:生存日数と在宅日数の妥当性の評価
・対象は18歳以上の患者(n=3533)とそれに対応する介護者(n=463)
・ベースラインから1ヵ月後までの症状負担(Edmonton Symptom Assessment System, ESAS)、介護準備(Preparedness for Caregiving Scale, CPS)の改善、悪化、変化の有無により、患者および介護者を3群に分類
・DAHは4つの時間軸で測定した。在宅緩和ケア入院後、30日、60日、90日、180日の4つの期間でDAHを測定
・ESASスコアが改善または変化しなかった患者のDAHが、症状が悪化した患者と比較して最も高いことが示された
・ESASの変化得点はDAHの指標と弱い負の相関(r = -0.11〜-0.21)を示した
・CPSの変化得点はDAHの指標と弱い正の相関(r = 0.23-0.24)を示した

📕Shen, Ernest, et al. "Assessing the concurrent validity of days alive and at home metric." Journal of the American Geriatrics Society 70.9 (2022): 2630-2637. >>> doi.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

いま「ここにいる」ことって、絶対なんですよね。
とにかく無数の偶然と必然が重なって「ここにいる」。
すっげぇなぁと思ったのです。
いまという瞬間、みんなが「ここにいる」。

ほぼ日刊イトイ新聞

『場所』。
その『場所』にしかない、特別な価値がある。
最近、強くそう思わされた経験があった。
僕は、10年前くらいに結婚したのだが、そのとき、教会で『アメイジング・グレイス』の独唱とともに式が執り行われた。
シンと静まり返ったような、とてもシックな教会である。
先日、記念日にその教会に家族で出かけた。
「ちょっと、思い出の場所にいって、少し思い出すだけさ」、そう思っていた。
教会の計らいで、当時と同じ教会の椅子に座って、『アメイジング・グレイス』を独唱してくれた。
そのとき、驚くべきことが起こった。
ほぼ、泣いたのだ。
あのとき、この場所で、起こったこと、触れた感情のすべてが、一気に防波堤を崩壊させ、襲ってきた。
あまりにも、強烈な体験だった。
あれは何だったのだろうと、今でも思う。

思うに、音楽は『鍵』で、場所は『扉』だ。
音楽は、よく言われる。
BUMP OF CHICKENが唄ったようにメロディーは「フラッグ」/「鍵」になる。
受験期に、毎日聞いていた音楽を聴くと、あの受験の日々を思い出す、ような感じで。
だが、音楽だけでは威力は少ない、そよ風のような感じだ。
ふと、思い出すレベル。
鍵だけがあっても、何かがしっかりと開かれることはないのだ。
そこに場所という『扉』があることで、あの『瞬間』のすべてが開かれる。
あのとき、あの場所で。
確かに感じていた、あの感情の水流。
その『場所』で、というのが大切なんだ。
この場所で、この音楽を聴くことで、文字通り堰を切ったように感情の水流がドバッと傾れ込む。

そこに、「なぜ自宅がそんなに重要なのさ?」ということの1つの答えがある。
上記の議論から、自宅という場所を定義すると、以下のようになる。

思い出という記憶・感情の扉が無数にある場所

ぼくらが長く過ごし、泣き、笑い、悲しみ、喜んできた場所は、自宅だ。
そこには、無数の思い出があって、その1つ1つが扉となって、そこにある。
そして、思い出とは、村上春樹が述べているように、『思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。(海辺のカフカ)』
だから、自宅がいいのだ。
心を温めてくれる扉が無数にある場所。
ホットプレイスの銀河こそ、自宅なのだから。

いま、時代は病院から地域に重心を移しつつある。
そこで主に問われるのは、在院日数ではないだろう、それは減らしていくのだから。
そこで、在宅日数(DAH)である。
ここに、次の戦場がある。
訪問リハをしました→在宅日数を年間30日間伸ばせました。
これは、価値がある❗️
なぜなら、上で繰り返し述べてきたように、自宅での生活は、それ自体、価値があるから。

きみはそういうがね
思い出はたのしいもんだぜ
ハハハ・・・
いつまでも忘れられない思い出
そんなのはそうザラにはお目にかかれないよ・・・
ハハハ・・・

手塚治虫 落盤より

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