風に揺れる芒 六日目
邯鄲(かんたん)の微睡(まどろ)みから目覚め、離床し、天を仰ぐ。やはり、私の眼前に、これから見知るに能うであろう女の貌が、全く実にこれもまた物々しく、事によっては勿体をつけつつ、其処に在ったのであった。女は、白妙を何処とも知れずに吹く息吹に靡(なび)かせている。……風は、形而下の存在であり、現象であるが、何故、この女に吹き付けるに能うのであろうか。……今に至る迄、女に干渉出来る形而下の現象として、光条が在ったが、しかし、風は……。いや、或いは、昨日、私は声音を以て、女と意を交