マガジンのカバー画像

物語

14
運営しているクリエイター

#寓話

免罪符

免罪符

あるところに素晴らしい作品を次々と作り出す、偉大な芸術家がいました。

彼の生み出す物は人々の心を掴み、
多くの人たちが彼の作品に夢中になりました。

初めのうちは謙虚だった彼も、
周りの人たちにチヤホヤされるうちにだんだんと傲慢になっていきました。

自分は偉大なのだから偉大な人としか話をしない、と作品を好きいてくれる民衆を冷たくあしらうようになりました。

自分は偉大なのだから、お金をもらって

もっとみる

踊る少年

とある小さな村に踊りの大好きな少年がいました。
少年は踊りが大好きだったので、毎日のように踊り続け、どんどん上手くなっていきました。

彼の踊りは観る者を魅了し、村の人気者になっていきました。

その噂を聞きつけた、大きな国の王様がやってきて、こんな小さな村ではなくて大きなわたしの国で踊らないか?と少年を誘いました。

少年とその両親は大喜びで引き受けましたが、
大きな国で生活するにはお金がたくさ

もっとみる
別れた理由

別れた理由

あるところに、幼なじみの夫婦がいました。
小さいころからずっと一緒だったので、
夫婦になることも自然なことでした。

二人は海水浴が好きでした。
夫は沖まですいすいとなんの苦労もなく泳ぐことが出来ましたが、
妻は沖まですいすいとは泳げませんでした。
その代わり、浅瀬でぷかぷか浮かんでいるのが好きでした。

でも二人はいつも一緒だったので、
夫が沖まで泳ぐならと妻も必死で夫についていきました。

もっとみる
少年と猫

少年と猫

あるところに心優しい少年がいました。
少年はとても優しかったので、捨てられているものをほっておくことが出来ず、家に持ち帰っては、おとうさんとおかあさんに怒られてしまうのでした。

かたっぽだけの小さな靴や、
ぬいぐるみ、漫画の本に、壊れかけの傘、
「どうか捨てないで」という声が聞こえるようで見つける度に拾っては、
自分の宝箱にこっそりしまっておくのでした。

ある時、少年は薄汚れて弱りかけた子猫が

もっとみる
名もなき芸術家

名もなき芸術家

昔々、あるところに、名もなき芸術家がいました。名もなき芸術家は誰にも知られることもなく、毎日毎日名もなき芸術を創っていました。そして彼は死んでからも名もなき芸術家として芸術とともに忘れ去られていきました。

名のある芸術家もいました。彼の創る芸術はどんなものでもいつも人気だったので、彼が死んでからも名のある芸術家として、彼の名前も、芸術も語り継がれていくことになりました。

100年経っても、20

もっとみる