踊る少年

とある小さな村に踊りの大好きな少年がいました。
少年は踊りが大好きだったので、毎日のように踊り続け、どんどん上手くなっていきました。

彼の踊りは観る者を魅了し、村の人気者になっていきました。

その噂を聞きつけた、大きな国の王様がやってきて、こんな小さな村ではなくて大きなわたしの国で踊らないか?と少年を誘いました。

少年とその両親は大喜びで引き受けましたが、
大きな国で生活するにはお金がたくさん必要でした。
きっとすぐに大人気になってたくさんお金を稼げるようになるからそれまではわたしたちがお金を送ろう、両親は話し合い、
二人は小さな村を出て、それぞれ別の町で働き始めました。

少年は大きな国に移ってから、
お金を送ってくれる両親のために、
誘ってくれた王様のためにひたすら踊り続けました。
少年の踊りはますます上達し、
たくさんの人たちが彼の踊りに惚れ込み彼のファンになりました。
彼がステージに上がると、たちまち多くの人たちがやってきて熱気に包まれました。

少年はたくさんの国々で踊り続けました。
たくさんの人たちが喜んだので、
たくさんのお金をもらうことができました。

大きな国の王様も、少年の活躍を大層喜びました。

少年は踊りで稼いだお金で、やっと三人で暮らせる!と思った少年は、
両親を国に呼び寄せようとしました。

が、少年のために別々の町で働き始めた両親は、それぞれ別々の町で新しい家族を作っていたので、両親が少年の元にやってくることはありませんでした。

自分のせいで家族がバラバラになってしまったことに気づいた少年は、
自分の踊りを恨みました。
少年は大好きだった踊りが大嫌いになってしまったのです。

それから少年は自分の家に閉じ込もるようになってしまい、王様がどれだけ踊るように!と命じても踊ることはありませんでした。
そうこうしているうちに少年は大きな国を追い出されてしまいました。

途方に暮れた少年は、自分のいた小さな村に帰ることにしました。帰っても両親がそこなはいないと知りながら。

小さな村に帰ると、小さなステージで少年よりも小さな子供たちが踊っていました。

子供たちは言いました。
「あなたは村の英雄です。みんなあなたに憧れて踊りを始めました。みんなあなたのようになりたいといつも練習しています。」
続けて子供たちは、
「踊ってください」と少年にせがみました。

少年はこれが最後の踊りにしようと決め、踊り始めました。
するとどうしたことでしょう、彼が踊り始めた途端、雷が轟き、雨がざんざんと降り始めました。
降りしきる雨の中、彼は踊りました。
自分が踊ることでバラバラになってしまった家族のことを、ひとりぼっちの自分を想いながら。
踊りが終わると、さっきまでの雨は嘘のように止み、空は雲一つない晴れ間が広がっていました。

「やめないでください」と子供たちは言いました。「あなたの踊りには世界を変える力があるのだから」そう言う子供たちに少年は、
「君たちの踊りにもね」とニコリと笑って答えました。

少年と子供たちはそれから仲良く一緒に踊り続けましたさとさ。

おしまい

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