スギウラ@田舎の歯医者

地方都市で小さな歯科クリニックを営む開業医。地域医療に貢献している自負はあるが、そろそ…

スギウラ@田舎の歯医者

地方都市で小さな歯科クリニックを営む開業医。地域医療に貢献している自負はあるが、そろそろ、いろんなことに負けそう。面とは向かって言えない歯科の楽屋裏をつづります。

最近の記事

技工士激レア時代の処方箋❸

 このブログシリーズも、ようやく調子が出てまいりました。前回の予告では今回、ラボにいっさい外注せずに歯科診療は可能か? をテーマに書こうと思っておりましたが、技工士さんからの反響があまりにも大きく、今回は技工士の求人事情について掘り下げてみたいと思います。  本エントリからご覧の方は、是非とも前回エントリからご覧ください。 勤務技工士の報酬額 前回の反響で特に印象に残ったのが、歯科医院とラボ間で、勤務技工士の争奪戦になるのではないのか? との懸念の声でした。たしかに、わたし

    • 技工士激レア時代の処方箋❷

       今回から、きたるべき技工士レス時代に備えての提言を述べていく所存ですが、最初は少し前項のプロローグを引きずってみます。  過去の拙ブログでは、保険の技工問題は解決しない、とほぼ断言しました。技工問題が解決しない、というより保険診療の様々な問題が解決しないわけで、こと補綴だけ、修復だけが解決するはずもありません。そして、じっと耐え忍ぶにも、歯科業界人は既に、多くの時間と忍耐を強いられてきました。ですから、今必要なのは、何年後に実現するかわからない理想論や、政治家、歯科医師会

      • 技工士激レア時代の処方箋①

        担い手のいない保険技工 新たなブログシリーズです。  今回は業界の現状を並べたプロローグ、肩から力を抜いてお読みください。  私の住む田舎町でも、技工士不足が取り沙汰されるようになってきた。このエントリを書いているのは令和5年11月末。特に、保険の義歯を作る技工士がいないのだ。もともと義歯を手がける技工士は少なかった。それが、上手い技工士となればなおさらである。歯科医も、どうせ採算のとれない保険義歯だから、と自費義歯へ誘導する叩き台くらいにしか思ってこなかった先生も多く、私

        • 女性優位の職場でお局様がのさばるのは管理職がだらしないからだ.最終回

           本院で私、理事長、Mちゃん、そして後任のチャラ男先生の4者で、分院引き継ぎについてのスケジュール確認が行われました。その席で理事長は、 「先生の気が変わったら、やめるのやめてもいいんだよ」  と事も無げに告げました。Mちゃんは終始、肩をすぼめてうつむいておりましたが、どんな気持ちだったのでしょう。終始笑顔を絶やさなかったのはチャラ男先生だけでした。  前回の経緯は、こちらから。 https://note.com/sugiuraniki/n/ne470b12ffc19  

        技工士激レア時代の処方箋❸

          女性優位の職場で『お局様』がのさばるのは、管理職がだらしないからだ14

           Mちゃんは、いろいろと焦っていたのだと思います。可愛らしい部類の容姿でしたが、年齢はアラサー。女性が大多数の職場であることはもちろん、今のようにマッチングアプリもない時代ですから、彼女のお眼鏡に叶う男性との出会いも限られていたはずです。加えて、負けず嫌いの性格が災いしてか、恋愛が長続きしないらしいことも他のスタッフから聞き及んでおりました。ある日、彼女がポツリと口にしたのが、 「わたしの家は、絶える家ですから」  つまり、女ばかりで跡取りがいない、伴侶となる男性に家を継いで

          女性優位の職場で『お局様』がのさばるのは、管理職がだらしないからだ14

          女性優位の職場で『お局様』がのさばるのは、管理職がだらしないからだ⑫

           4人目のお局様になる歯科衛生士、Mちゃんは小柄で、女優の黒木華さんのような可愛らしい容姿の持ち主でした。ショートヘアーを内側にクルッと巻き、ツンとすました横顔がまるでトリミングを終えたばかりのプードルのよう。患者にも人気ありましたが、何故か本院の古参スタッフたちとはうまくいってないようでした。そんな彼女をチーフに衛生士2名、歯科助手1名、受付け係1名の計4名をオープニングスタッフとして、私はテナント分院を任されたのでした。前回記事はこちら。 仕事はできるが、不思議ちゃん 

          女性優位の職場で『お局様』がのさばるのは、管理職がだらしないからだ⑫

          歯科クリニックは、お局様だらけ~勤務歯科医の悲しい現実~

           どのような職種にも嫌な上司というものは存在するものですが、女性が占める割合が大きい医療の現場、とりわけ規模が小さい歯科クリニックには、居丈高な振る舞いで職場の空気を支配する女性──いわゆるお局様が存在する確率が高いように思います。  加えて、歯科の勤務医は典型的な中間管理職。傍から見れば華やかで前途ある仕事に思えるでしょうが、その実は徒弟制度に縛られた滅私奉公に近いもの。そして多くの場合、若い勤務歯科医よりキャリアを重ねた年長の女性スタッフがいることで、経営側への憤懣の捌け

          歯科クリニックは、お局様だらけ~勤務歯科医の悲しい現実~

          女性優位の職場で「お局様」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑪

           ここまで、私が遭遇したお局様とのバトルとその顛末を記してきましたが、ある読者から、 「もしかしたら先生は、ブラックな環境に知らず知らずのうちに身を投じてしまう性格なのでは?」  というご指摘を受けました。半分は当たりで、長いものに巻かれるを良しとしない私の性格に原因があったとは思います。悪く言うなら協調性と申しますか女性とのコミュニケーションが苦手というか……  しかし、あと半分は歯科業界に特有のなにかがあったと思います。院長が男性であっても、女性が優位な閉鎖的な職場ではス

          女性優位の職場で「お局様」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑪

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ ⑩

           やっとみつけた新人歯科助手に薄給を強い、それをわたしの意思として讒言する──思えばオーナーとも打ち解けなかったのは、お局の二枚舌が介在していたからだと思います。  しかし、お局オバQが、如何にして場末の診療所を支配していったか、そしてオーナーを如何にして操っていたかがわかったのは、わたしが退職してから何カ月もあとのことだったのです。  前回記事はこちらから↓ 最も効果的な復讐 オバQは私が遭遇した3人目のお局。狡猾な──いや、小汚い立ち居振る舞いの全てに腹が立っていたのは

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ ⑩

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑨

           歯科助手を募集するにあたり、オーナーが求人票に掲げた基本給は、バブル景気の真っ只中としては非常識ともいえる薄給。これでは永久に求職者は現れまい、とオーナーに直訴するも、この壊滅的な支給額はなんと、Q太郎の意を酌んだ額だったのでした。  前回記事はこちら 根っからの悪人との戦い 最初に書いてしまいますが、今までに出会った人のうちで、Q太郎以上の悪人をわたしは知りません。無論、ひどい目に遇わされた人物は、二人目のお局、N美はじめ両手に余るほどおります。幸い、Q太郎には大きな実

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑨

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑧

           近所でもわがままで有名なパート歯科助手が去って、開設当時からの古参助手が残りました。しかし彼女は受付業務も兼ねているため、どうしても手は足りません。そこで新たに常勤の歯科助手を採用することになるのですが、これが大波乱を招くことになります。  前回のお話はこちら。  第三のお局が、残った古参歯科助手──以下、オバQと呼称することにします。当時、密かにそう呼んでおりましたから。オバQという呼称は、藤子不二雄さん原作のまんが『オバケのQ太郎』に由来します。分厚く横に広い唇、大き

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑧

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑦

           I先生が言い残した「俺を恨むなよ」の謎も解けぬまま、前近代的な診療所に職を得たわたしですが、当面は自由に気ままに診療ができるという思いが先行して、先輩の忠告は頭からすっかりぶっ飛んでおりました。  前回のお話はこちら。  スタッフの陣容は常勤と、午後からのパートの歯科助手が二人、前者は40代、後者は30代。I先生から見れば『オバハン』には違いありません。ふたりともに、わたしをにこやかに迎え入れてくれた──かに思えましたが、いきなりパートのオバハンからタメグチでの先制パンチ

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑦

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑥

           骨をうずめる覚悟で就職した最初の勤務先でしたが、八方ふさがりの状態に追い込まれたわたしには、退職して生まれ故郷へ戻る以外の選択肢はありませんでした。お局様との衝突はきっかけにすぎなかったと思います。中間管理職としての難しさ、歯科医としての未熟さ、そしてなにより若さ故の過ち……よい経験したというにはあまりに過酷な2年間でした。 故郷へ向かう道 理事長と新人K先生との寂しい送別会の他に、分院と同じテナントに入っていた美容師さん、食堂のシェフ、そして患者さんたちが最後の宴席を設

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑥

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑤

           第二のお局様、N美には完敗でした。学生時代、恋愛もせずにバイトと勉学に明け暮れてきたわたしは、世の中は性善説に満ち溢れていると勘違いしていた甘ちゃん。今で言うところのチー牛みたいなもの。オッサンを手玉にとる話術をはじめとする、男心をくすぐる手練手管に長けたN美に敵うはずもありませんでした。 堕落 天涯孤独に近かったわたしが、あえて生まれ故郷から遠い街に就職したのは、悲しい思い出に埋めつくされた過去から逃れるためでもありました。再び故郷の土を踏むのは、志を遂げて凱旋する時─

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ⑤

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ④

           わたしが勤務医時代に遭遇したお局様は4人。そのうち、初代のお局DHに取って代わるように誕生した二代目お局への憎しみは、生涯消えることはないでしょう。他の3名については思い出に変わっていますが……。  前回の経緯はこちらから。 立場を利用した悪質な嫌がらせが始まった 勤務先の給与体系が、基本給+インセンティブ(出来高)であることは前回述べた。新お局のN美はこれに目をつけ、わたしの売上高を他の勤務医につけていた。しかし、わたしは自分のカルテに押印することで、N美の不正を防ぐと

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ④

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ③

           お局様との戦いが決着してから数カ月後、タガが外れたスタッフの中から新たに最凶最悪のお局が成長を遂げ、分院長となったわたしの前に大きく立ちはだかります。   前回のエピソードはこちらから。 お局様は衛生士や歯科助手だとは限らない 受付嬢のN美、ジュリアナ東京でよく目にしたファッションをまとった彼女の言動は、見た目以上に派手なものだったが、最初からそれを見咎めたわけでもなく、別に気にもとめなかった。むしろ彼女の方からわたしに接近してきたほどで、 「センセ、白衣の襟が折れてます

          女性優位の職場で「お局さま」がのさばるのは管理職がだらしないからだ③