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人によって「選択」の方法が違うのはなぜ? 「選択」にはどんな影響力があるの? について。

ここ最近、「選択」や「意思決定」がどのようになされるのか興味を持ち始めたところに、ちょうどこの本に出会った。

-『選択の科学』

著者のシーナ・アイエンガーはコロンビア大学ビジネススクールの教授で、NHK・Eテレでも「白熱教室」として放送されていたのでご存じの方もいるかもしれない。

この本では「選択に関する実証実験」が数多く紹介されているんだけど、選択を色んな視点で捉えているだけでなく、選択がわたしたちの人生にどのような影響を及ぼすかまで触れられている。

今回のnoteは、個人的に興味深かった実証実験について、「経営学」「教育学」「対人関係」「医学」「文化研究」の5分野からピックアップしてみた。

1、【教育】マシュマロテスト

4歳児の子供たちを対象にしたテスト。子供にまずマシュマロを1つ渡す。そして「おじさん(提供者)が部屋に戻ってくるまでマシュマロを食べずに我慢できたら、ご褒美にもう1つあげよう。でも待てずに食べてしまったらマシュマロは1つしか食べられないよ。」と告げる。実験の結果、すべての子供は3分と待てずに、マシュマロを食べてしまった。

<考察>人は、衝動のために長期的な利益を犠牲にしてしまう。
そこには、無意識に反応する「自動システム」(=今すぐにマシュマロを食べたい)と、「熟慮システム」(=我慢したら2個食べられる)の葛藤があり、一刻を争う時ほど、人間は自動システムに従う可能性がある、というもの。

2、【対人関係】ネクタイ柄の実験

「自分は人よりもユニークであり、ユニークなものに対する許容度が高い」と回答した全員に対して、3種類のネクタイ柄の中から1つを選んでもらう実験。ネクタイは「普通の柄」「ややユニークな柄」「非常にユニークな柄」の3種類を用意。結果は、自分はユニークを好むと自負しておきながら、ほぼ全員が「非常にユニーク」ではなく「ややユニーク」なネクタイの柄を選択した。

<考察>人は「自分だけは他の人とは違うユニークさがある」と信じたい。でも極端なユニークさは求めない。あまりにも奇抜で孤独な少数派になってしまうのはごめんだと思う生き物。

3、【文化】魚の写真を使った実験

「水槽の中で3匹の魚が泳いでいる写真」を5秒間見せたあと、日本人とアメリカ人それぞれに、どのような情景だったかを説明してもらう実験。結果は、アメリカ人の多くが主役である「3匹の魚」について説明したのに対して、日本人の多くは「水槽の情景」について説明した。

<考察>日本人は「情景」「背景」「環境」が重要な主体であると認識しており、アメリカ人は「個人」が重要な主体であると認識している。これは集団主義と個人主義の違い。集団主義は「決定権というのは包括的に考えるべきであり、個人の力だけでは世界を動かせない」という認識。一方個人主義は「障壁や障害をどう個人で克服するか」を考えさせる。よく言われる「アメリカ人は自己主張が強く、日本人は自己主張が弱い」はここに起因する。

4、【経営】ジャムの実験

スーパーマーケットの客に対して、24種類のジャムの品ぞろえと、6種類のジャムの品ぞろえのどちらがより売れるかという実験。試食するお客さんの傾向は、24種類の場合は迷った挙句に手ぶらで去っていくのに対して、6種類の場合は自分の好みのジャムがはっきりわかっているようだった。結果、24種類の品ぞろえに立ち寄った客の購入率はたった3%なのに対して、6種類の品ぞろえに立ち寄った客の購入率は30%にも上った。

<考察>豊富な選択肢は必ずしも利益にならない。選択肢が7以上になると人間の処理能力に影響をおよぼすようになる。

5、【医学】延命治療中止決定の選択

重病を患う幼いわが子の延命治療の中止という決断について、医師によって判断を下された両親の苦悩と、選択を委ねられて自ら決断した両親の苦悩が、どれほど違うかという調査。結果は、自ら延命治療中止という決断を下した親のほうが、のちのち罪悪感や後悔に苛まれる傾向となった。

<考察>選択は、時に痛みを伴うもの。命にかかわるような選択を下さなければならない時、自分で下すよりも医者にゆだねたほうが、家族にとってよい場合もある。

-読み終えて-

本書では、日本人とアメリカ人の選択に対する捉え方が異なるということが、多くの実験で明らかになっている。
日本人は、自分で選択できる環境にも関わらず自ら選択しなかったり、実は選択しているのに選択と認識していないことも多い。たとえば、今日はどんな服を着るか、ランチで何を食べるか、日常の小さな行動1つ1つをアメリカ人は「とても重要な個人の選択」と捉えているのに対して、日本人はその認識が希薄と言える。

なりたい自分に変えるための1つの手段が「選択」であるため、そのメカニズムを理解した上で、より良い選択を自ら下せるようにしていきたい。

この本を読んでそんなことを強く思いました。

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