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Episode 073 「クラブはクラブでもClubではなくCrab」

オーストラリアは日本やその他の多くの国とは異なり、「自国特有の料理」というものが存在しない(もちろん、それが悪いとも別に思わない)。例えば、日本なら、寿司、てんぷら、すき焼き・・・タイならトムヤムクン、インドならインドカレー等といった具合に。

つまり、イタリアンであったり、中華であったり、ベトナム料理であったり、オーストラリアに移民できた人たちがオーストラリアに持ち込んだ文化の一つである料理が(オーストラリアでは)人気なのである。とは言いつつも、幾つかはオーストラリア特有と呼べなくもない食べ物も存在しないわけではない。(この様な回りくどい言い方がなされている時点で、或いは「無い」に等しいのだが)

チキンパイやミートパイ、およびフィッシュアンドチップスである(しかしながら、おそらくこれらは、詳しくはイギリス発祥の食べ物かと思われる)。チキンパイ(尚、個人的にはB級グルメの頂点の一つだと感じている)とはパイ生地の中にシチューのようなクリーミーなソースの中に鶏肉が入っているものである。ミートパイは、その中身が牛のひき肉となっているパイである。フィッシュアンドチップスとは、白身魚を衣をつけて揚げたものであり、チップスとはつまりフライドポテト(フレンチフライの太いバージョン)である。

ミートパイ
フィッシュ&チップス

思春期真っ只中であった私は当時、これらを非常に美味しいと感じており、控えめにいっても頻度高く食べていた。フィッシュアンドチップスに関しては、ビーチにあるキオスクで購入し、外でよく食べていた。チキンソルト(Chicken Salt)及びグレービーソース(Gravy Sauce)をたっぷりと掛けて。併せて、パイナップルに衣をつけて揚げたものも美味しかった。或いは、当時であれば何を食べても美味しいと感じたのかもしれない。若いとは、時に、そんなもんである。

パイナップル・フリッター

ビーチと言えば、夏になると、ジェティ(桟橋)にて、とある道具を用いてよく蟹を捕まえていた。そう、カニ狩り、である。英語でいうと、Crabbing(クラビング)である。時期的には、9年生(中2)〜11年生(高2)あたりと記憶するので、1999年〜2001年頃だろうか。道具についてだが、具体的には、円状の細いアルミの輪に網が付いており、桟橋の上から海の水面に(垂直に)垂らす事ができる程度の長さの紐がついてるそれである。これを水の中に(垂直に垂らして)沈めて置き、一定の時間が経過してから引き上げるとそこには蟹が引っかかっている、という仕組みである。

頻繁に行っていた、Semaphoreビーチのジェティ(桟橋)
同じくSemaphoreビーチのジェティ(桟橋)

この際使用する餌は、鶏肉の骨である。骨に少々肉が残って付いている状態のものをスーパーなどのお肉コーナーから(確か、非常に安い価格で)購入するのである。尚、この蟹取りに参加していたのは、父親、下の姉、私、そして妹(因みに母親及び上の姉は全く興味がなかったらしい)の四人(そう、大体この4人が「面白そうだね、やってみよう!」と何事にも参加するタイプだった)であった。

こんな感じの鶏の骨を用いる
この様な網に、上記の鶏の骨を仕掛けておく
うまくいくと、この様にカニをキャッチすることができる

また、蟹とりをしていたのは原地のオーストラリア人よりも、やはりアジア人(中国人、ベトナム人、カンボジア人などだろうか)の方が多かった。この手法(網を垂らすやり方)の他にも、違った蟹の取り方も存在した。桟橋からではなく実際に水の中に入って獲る方法である。ただ、水の中に入るといっても、泳いで捕まえるのではなく、水が脛のあたりまでしかこないほどの遠浅のタイミングで水に中に入り、捕まえるのである。

必要な道具はアルミ製の熊手である。そう、キキ(魔女の宅急便)が持っているホウキくらいの肢の長さの、大きくて長い熊手である。この熊手を使い、脛あたりまでの深さの水で、砂の表面が黒くなった箇所(つまり蟹が砂を掘って中に隠れている為、蟹が掘った際にでた砂で表面が黒くなっている状態)の表面を浅く熊手で掘る形でガリっとすると蟹は攻撃されたと思い込み、砂の中から出てきてはそのハサミでアルミ製の熊手を挟むのである。その隙に熊手をクルッと(そう、手首を捻る形で)回転させ、蟹をすくい上げる形で確保するのである。

イメージとしては、こんな感じ
イメージとしては、こんな感じ

桟橋でのやり方と異なるこの方法は、一回の収穫で計数十匹を捕まえる事ができた。尚、「数十匹捕まえる」となると、確保した蟹を一時的に保管する方法(つまり、獲った蟹をどこかに入れておかないと、(熊手に蟹を乗せたままでは)次の蟹を取ることができない)が必要になる。

初めて、この方法で蟹取りを行った際は、確か通常のサイズのバケツを持って行ったと思われる。尚、最初に行った時はそんなに多くの蟹を取ることはできなかった。蟹がいなかったわけではない。取れなかった理由(原因)は、裸足で水に入っていたのだが、石などが足の裏に当たり、痛くてそんなに歩き回ることができなかったからだ。

それならばと、二回目からは、古くなった靴を持って行った。そう、靴を履いて水に入るのである。満を持しての再チャレンジである。この手法では、初回に比べると大幅に問題は解決されたのだが、一点見落としていた。素足に靴を履くとなると、今度は砂が靴の中に入り、擦れて痛みを生じた。

これら失敗を重ね、三回目には、古くなった靴下も併せて持参し、靴下を履き、そして古くなった靴を履き、万全な状態で挑んだのだった。幸いなことに、三回目にして問題は解決された。また、確保した蟹を入れるバケツも、二回目に行った時には(捕獲した蟹の量が多すぎて)使い物にならず、その次(つまり三回目から)に行った時は、服などを収納する際に用いられるプラスチックの、ローラー(キャスター)が容器の四隅についているようなもの(大きさは、70cm×40cm×30cmくらいだろうか)を持参した。しかし、ここでもまた問題が生じた。大きさ的には問題なかったのだが、いかんせんこの容器を抱えながら水の中を移動する事が非常に不便であった。

そうそう、こんな感じのもの

そこで、次(つまり4回目以降)に海に行った特には、諸々を学習し、この大きな容器をボディーボードの上に固定させ、乗せたのだ。そしてこのボディーボードの紐を手首に巻きつけ、ボディボードによって水の上を浮く容器を引いて歩く形をとった。そう、側から見たその光景は、ちょうど、首輪とリードに繋がった犬が、人間と散歩をしているような状態だ。違いは、水の中である事と、犬ではなく、ボディーボードに括り付けられたプラスチックの大きな容器という事だった。

この様なボディーボードに上記プラスチックの容器を括り付けていた。

このようにして、複数回に及ぶトライ&エラーを繰り返し、改良を加えていく事で、少しずつ、蟹取りスペシャリストに近づいていったのである。きっと、その姿(蟹を取りに行く際の格好)は、まるで、田んぼの中で苗を植える作業を50年以上続けてきた、大ベテランの様な雰囲気が、或いは醸し出されていたかもしれない。

尚、蟹を確保する際だが、規定のサイズを下回る蟹はリリースしなければならないという規則・ルールもあった。この様にして、蟹を取るという事が夏のアクティビティの一つとなったのだ。

そうそう、こんな具合でサイズを測り、小さいカニはリリースする必要がある

蟹の他にも、アワビを取りにも行った。ある時、特に何かを獲りに行くというわけではなく、純粋にシュノーケリングを楽しむ為に海に行った際に、そう深くもない場所にアワビがたくさんあったのである。まさか、そんな場所にアワビがあるなんて想像もしなかった為、最初は信じ難かったのだが、やはり良く見るとアワビであった。

その時はアワビを獲る道具を持ち合わせていなかったので無理だったが、その次に再度この海に行った際には手袋と(ちょっとした)道具を持って行き、アワビを獲ったのだった。因みに、この蟹とりについて最初に教えてくれたのは、あのコピューターを触らせたら右に出る者はいないBun-Ey (ブン・イー)であった(Episode070参照)。

蟹がよく取れるビーチもある程度決まっており、アデレード(Episode003参照)の街の中心部からであると、車で飛ばして一時間は走った記憶がある。街の中心から北に、車を走らせたのだった。


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