愛情で未来をつむぐストーリーvol.0 「ようするに“愛”」
認定NPO法人STORIAでは先日、素敵なゲストをお呼びしてクロストークイベントを開催させて頂きました。2時間に渡っての素敵なトークの中から、抜粋でお伝えさせて頂きます。
~愛情と、鎧を着ること~
(以下敬称略)
岩波:
今の社会の仕組みはお金に換算して合理的な判断をする方が賢いと教えられ続けますよね。それは、「誰が一番ぶんどるか」という思考になりやすい仕組みなんです。
そうすると、今の世の中は本音(お金以上に大切にしたいこととか)を社会や組織の中で言っても、「そんなこと言ってもしょうがない、金にならない」と削がれてしまう。
だから、そもそもそんな話し(なにが本当に大切かとか愛とか)をする場所が無くなったのが、この数十年なのかなと思っているんです。そういう場を作らないと大人ですら自分のコア(本当に大切にして生きていきたいこと)
が何なのか分からなくなってしまうんですよね。
自分が何を本当に大事にしたい人間なのかということが、今の世の中は大人になればなるほど分からなくなっていくと思います。ここに繋がらないと希望を持ってワクワクして生きることが出来なくなります。
安心してそいういうことを共有できる場が人を成長させるじゃないですか。鎧を着ている状態って、外側は成長するんだけど、人間の中身が成長しづらくなるんです。
萩原:
これまでの資本主義の世の中で、会社という組織が愛を発露させていくのはむずかしかったのではないかと思います。崇高な愛になるほど、無償の“与える愛”になっていくので、奪い合うことが背景にある資本主義とは相いれないですよね。それでも、会社の組織で愛を発露できるようにしていきたいというのが私の願いです。
ジャック・ウェルチさんがCEOを退任する際に『あなたが20世紀最高の経営者と呼ばれる理由は何だと思いますか』と問われて「自己認知力」と答えたんですね。自分の内側にあるものをきちんと知ることは重要じゃないかと思っていて、私の会社でもそれを大切にしています。一人一人、不安やおそれから自分を守るために鎧を着てしまいますが、実際にはその中にピカピカの愛があります。自分の内側を知るということは、その愛の部分に辿り着くことだと思っています。自分の奥底にはこんな願いがある、大事にしているもの、愛があるんだなと気付くと、それで生きたくなるんじゃないかと思います。
佐々木:
鎧を着るようになったのは痛みとか傷つきとか、今までの人生に何かあったから自分自身を庇いたいなと思って鎧をかぶっていくんじゃないかなと思って。
私自身の感情が反応するときって痛みに反応しているんですよね。
過去にあった痛みが潜在的にまた何か起きるんじゃないかって自分の感情に反応して。それが自己認知能力。
これって本当に事実なの?実際に起きることなの?ってもう一回問い直すとそれは事実じゃないよね、私が恐れていたことだよね、って気づくんですよね。その恐れを超えるときに周りの人の愛や支えがあったり、「進んでも大丈夫だよ」って言ってくれる人がいると鎧を少し脱ごうかなって思えるんです。
前野:
文部科学大臣補佐官の鈴木寛先生が、三つの自己肯定感のお話しをされていました。
ひとつは他者からの評価に基づく自己肯定感。
次に自己受容に基づく自己肯定感。
そして最後は絶対的自己肯定感。
これは生まれてきた全存在を承認する親など身近な大人からの愛情で、幼少期に育まれる大事なものです。それがあるからこそ自己受容が出来て、そして他者への貢献が出来るようになる。
では何らかの事情で絶対的自己肯定感を受けられなかった子どもはダメなのかと言うとそうではなくて、いくらでも挽回できるのだと。子どもの場合、一番近い大人である先生が向き合って丁寧に関わってあげたら、家庭環境がどうであれ、全ての子どもに明るい未来を描けるチャンスがあるというお話しでした。
私たちのように大人になってからでも、自己肯定感の低い人は優しく声を掛けられたり、相手のことを想う行動や応援をしてもらえたら挽回できるそうです。一人一人がちょっとしたことを意識してやっていけば未来に希望を持てるという点が一番印象的でした。
~失敗について~
佐々木:
サードプレイスで子どもたちの「やってみたい」を叶えていると、子どもたちが主体的になるし、最後までやり切りたいという気持ちがあるんです。
そこで失敗を一番恐れているのは、実は大人なんですよね。
失敗をさせたくない。それを私たち大人が取り払おうって。
うまくいかなくても失敗じゃなくて学びだよねって、次はどうしていこうかっていうことを一緒に考える機会ってすごく良くって。
そうすると子どもたちは私たち大人の想像を超えるクリエイティブなことを生み出していきます。
萩原:
日本ってそういう傾向がある気がします。砂浜で子どもが砂のお城を作っていて、波がどんどん満ちるじゃないですか。日本人の親って、もうすぐ波が来ると壊されちゃうからこっちで作りなさいってことを先に言ってしまう。海外だと波が満ちてきて壊されるっていうのも含めて経験だからそのまま黙って見ているっていう話があります。
前野:
アメリカ人でもそういう人がいてブルドーザーペアレンツって呼ばれているそうです。障害になるものは、ブルドーザーのように先に全部どけてしまう。
そしてヘリコプターペアレンツと言うのは、上から子どもの全体を把握したくて見ているそうです。すべて根底は自分の子どもに苦労させたくないという親の深い愛なんですよね。
それは、本当の意味で子供のためになっていない。子どものためと思って一生懸命やってしまうけど、子どもは自分で考え動くことが出来ない子になってしまいます。
萩原:
自己決定するのって何が怖いかっていうと失敗なんですよね。組織の中で「失敗っていうのはなくて、全てが経験だよ」とコンセンサスが取れていれば、うまくいかなくても失敗ではなくて大丈夫。
組織としてそれが受け入れられる安心感があれば自己決定は恐れじゃなくなると思うんですね。会社の場合はそういった心理的安全性を場として作っていくのをやっていきたいと思います。
~「死」について~
岩波:
友達が出来ることは素敵なことですよね。大人になると鎧を着た状態で出会うことがほとんどなので、仕事上や経済的にメリットがあるとかで仲良くなるけれども、友達って遊びじゃないですか。
大人になってから遊べる関係が作れるかどうかはすごく重要で、利害もなにも関係なく、面白いことを一緒にやったりするのが単純に楽しい。
そうすると自分の内から湧いてくるエネルギーを感じやすい状態なので、そういう大人が増えると子どもたちにそれが必然的に伝わりやすくなるんです。
そういうことを子どもたちのためでもあるけど、一人一人の自分の人生のためにやっていく。これからの女性は107歳まで生きるって言っても、今までの社会に適応した生き方だと、そんなに長生きしたくないってなりかねないじゃないですか。これからの社会は長生きして、死ぬときに一番楽しかったって思いたいですよね。歳を取れば取るほど楽しく生きていくこと。
前野:
死ってタブーのように考えがちですが、誰でも明日生きているかどうか分からないですよね。突然交通事故にあうとか。このように死を意識して生きると今が輝くから今をもっと大事に生きるという考え方になります。
皆さん70歳になって後悔することの中に、心から本当にやりたいことをやっておけばよかったとおっしゃるそうです。もっと日々の中で死を意識しながら生きることができれば、ありのままに自分のやりたいことにチャレンジ出来ると思います。会いたい人に会って、大切な人に声を掛ける。そんな風に生きることが出来るのではないかと思うんですよね。
皆さんのイメージですと、年を重ねると段々自分の体が動かなくなって、忘れっぽくなって、自分の人生ってこうやって終わるのかなって想像するかもしれないですが、北欧の人たちは人生の最後が最高にいい状態になると想像しているんです。それを意識して今を生きると全く違ってきますから、そこを子どもたちに伝えていきたいと思っています。
萩原:
私、死ぬときにどう思って死にたいかなって考えたら、出てきた言葉が「彩り豊かな人生だったな」だったんです。
だから今は全ての経験が人生を彩り豊かにするって思うと、全てやりたいと思うし、そうなると怖くない。
失敗とかはないじゃないですか、すべてが彩りだから。
佐々木:
私も東日本大震災のこともあって死を意識しました。
実は自分の子どもに毎年遺書を書いています。まだ死んでないから見せてないんですけど(笑)。毎年書き直すのですが、子どもが小さい頃は、「こんな強みがあるからこうやって素敵に生きてね」とかいうメッセージが多かったんですけど、子どもが成人してからもう書くことがなくなって。
ここ数年はずっと一緒なんですよ。ただただ、あなたたちを愛した人生だったって。いろんなこともあったけど愛させてもらった人生を歩めたっていうことがすごく私にとって尊くて。
自分の子どもたちだけじゃなくて色んな子どもたちと今一緒に過ごさせてもらって、本当に愛する人生を送らせてもらったなあと思って。なんかもういつ死んでもいいなと思ってるんだけど、まだ命があるから生かされてるんですよね(笑)。 何をした、何をしないとかはもういいかな、みたいな思いですね。
~最後にメッセージ~
佐々木:
今日は本当にありがとうございました。素敵なお話をたくさん頂きまして、私自身がエネルギーを貰って、仙台に戻って子どもたちとお母さんたちと関わりたいと思います。皆さんから最後に一言ずつメッセージを頂けますか。
岩波:
今日はありがとうございました。ようするに愛ですよね。僕らもそういう関係ですけど、人生って学ばせあいだと思います。上下関係は最初からなくて、教える側教えられる側は常に切り替わる、お互い学び合う。今日の話で思ったのは、僕らはとても子どもから学んでいるということです。だからサードプレイスは子どもたちのエネルギーが循環する場所であり、そこに関わることによって実は大人がとても開くんじゃないかな。子どもってエネルギーの塊ですから、大人が子どもたちからエネルギーをもらっていることが多いんです。子どもたちから逆にありのままでいることを教えてもらう場なのかなという気がします。
サードプレイスに関わる大人が増えたらいいなと思うので、クラウドファンディングのことや今日面白かったことも、周りの方に広げて頂けるとありがたいです。今日はどうもありがとうございました。
萩原:
皆さんありがとうございました。今日出てきたキーワードは、魂の循環の場みたいなことだったと思うんです。エネルギー値の高い場に自分の身を置くことって重要で、今日この場にそれを感じてありがたいなと思うのと、色々なキーワードを皆さんと話し合えて私自身が幸せな時間でした。
STORIAを全力で応援したいと思いますので皆さんもぜひよろしくお願いします。ありがとうございます。
前野:
ありがとうございました。皆さんの素敵なお話に毎回癒され、生きる希望をもらっています。
私は、全ての大人がみんなそれぞれに頑張ってると思うんですね。だけど何か噛み合わなくて意地を張って、少しずつ世の中がずれてしまっている。
今回「ようするに愛」と言ったのは、学校教育においても会社組織の中でも、社会全体で私たちがみんな愛に包まれて成長していくということなので、今日のお話の中から、自分がどうやっていこうかと皆さんも感じて頂けたんじゃないかなと思います。
STORIAのサードプレイスに関しては、子どもたちが大変な思いをしていることをニュースで聞いて頭では分かっているつもりでも、知るきっかけが無かったりしますね。ですから、私たちの役割として一人でも多くの方に広げていくことも大事だし、経済的にも心のうえでも、応援出来たらと思っています。今日は本当にありがとうございました。
佐々木:
STORIAでは「愛情が循環する未来」をビジョンに掲げています。いろんな困難を抱えている親御さんや子どもたちに学習の機会や経済支援で是正するとかの前に愛情を循環することが根源的に満たされ、結果いろんなことが循環していくんじゃないか、そんな思いの下でこのビジョンを掲げてやっています。クラウドファンディングも、もちろん応援頂くのもすごく嬉しいんですけれども、愛情を循環する未来を一緒に築いていく、そういうお仲間として一緒に同志になっていただけるとありがたいなと思っています。
ありがとうございました。
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プロボノむらさんの編集後記
異なる分野で活躍されている素敵なゲストのみなさま。会社組織、教育界、社会課題、そして共感資本社会と、それぞれの活躍の場で同じものを世の中に伝えたい、そんな温かいメッセージが宝箱のように詰まった素敵なお話でした。明日からの心の元気をいただきました、ありがとうございます!
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