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恋愛短編小説 「好きって言ってほしかった」

提灯の灯りに照らされた、あなたの横顔を見ていると頬が熱くなっていく。

ドン、ドン、ドクン、ドン……。遠くで太鼓の音が響いている。あなたの顔をもう少しちゃんと見たい。あなたが見せてくれるのは横顔だけ……。「こっちを向いて少しでいいから」と心の中で手を合わせた。

ドォーン、ドドォーン。大きな音と共にあなたが私の方を向いた。「願いが叶った」そんなことを思いながら、青く照らされたあなたの顔を見つめた。しかし、視線は上を向いていて、私を見ていなかった。

「綺麗だね」

ドォーン。体がビクッと震えた。照れているのかな、あなたの顔が真っ赤になっている。きっと私も真っ赤になっている。どうしよう……。

すると、あなたは私の頭の上を指差した。

「花火見ないの?」

「えっ?」

ドドォーン。振り返ると青と赤の大きな花火が二つ咲いていた。「熱い」体中から汗が吹き出してきた。「私じゃなかった」あなたの視線は、空を埋め尽くす華やかな花火の輝きに奪われていた。私の体の火照りがさらに強まる。

ドォバーン。

「私を見て」花火の音と同時につぶやいた。あなたは少し私の方に顔を向けて、そして優しい目で私を見つめた「なにか言った?」と首を傾げた。

焦って「なにも言ってないよ」と視線を逸らした。

「今日は残念だったね。みんな来れなくなって、僕たちだけになっちゃって。みんなに綺麗な花火見せたかった」

ズキンッ。矢が刺さったかのように胸が痛んで、心の中で謝った「私がみんなにお願いして、二人きりになれるように、誘いを断ってもらったの。ごめんなさい」

ドォガーン。最後の大輪の花火が夜空に打ち上げられると、会場から感動のため息や拍手が聞こえてきた。

「そろそろ帰ろうか?」あなたは優しく提案してくれた。

「うん」と頷き、二人で花火会場を後にした。帰り道、人ごみを避けながら小道を選んで歩いた。夜の風が涼しく、頬を撫でてくる。

「今日は楽しかった。みんなと来れなくて残念だったけど、君と二人で花火を見ることができて、特別な思い出になったよ」とあなたが笑顔を見せた。

私は少し恥ずかしくなりながらも「私もありがとう。みんながいない分、二人で話ができて楽しかった」と笑顔で答えた。

「次はみんなと花火大会に見に来ようね」

「もちろん!」と私は微笑んだ。

家の前まで来ると、あなたは「お疲れ様。またね」と言いながら手を振ってくれた。

私も手を振り返しながら、今日の一日を胸にしまい込んだ。

来年は「好き」って言ってね、お願いだから……。



時間を割いてくれて、ありがとうございました。

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