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読書感想文

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読書感想文のまとめ
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2020年2月の記事一覧

友よ、答えは風に吹かれている。~エリ・ヴィーゼル著「夜」のこと

「私たちはいつからこうして凍てついた風のなかに立っているのか。一時間か。ただの一時間か。…

峰庭梟
4年前
1

誰だって魔法使いになれると思う 〜マーガレット・マーヒー著「魔法使いのチョコレー…

梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」の中で、主人公のまいは魔女であるおばあちゃんに魔女にな…

峰庭梟
4年前
5

恐竜はいつだって過去の、もう取り戻せない巨大な夢の塊なのだ ~レイ・ブラッドベリ…

十一月の夕暮れの灯台。霧の中の赤や白の信号の光。霧笛の響き。 灯台守のぼくが陸へ上がる前…

峰庭梟
4年前
2

賢さのない勇気は、乱暴にすぎない。勇気のない賢さは、冗談にすぎない ~エーリッヒ…

ドイツのある学校に五人の少年たちがいました。作家になりたい夢を持っているジョニー、正義感…

峰庭梟
4年前
6

どんなことがあっても、必ず未来は明るい。~金城一紀著「対話篇」のこと

(この記事はある読書コミュニティの「秋の旅」というテーマに寄稿したものです) テーマが「…

峰庭梟
4年前
3

名前がほんとうに身についたとき、人は名前どおりの人になる。 ~マイケル・ドリス著…

これはあるネイティブアメリカンの女の子と男の子の姉弟の物語です。女の子は「朝の少女」と呼…

峰庭梟
4年前
6

発想とは、つまりこういうことなのだろう ~星新一著「できそこない博物館」のこと

星先生はかなり困っていました。 それもそのはず。雑誌の連載を二つ返事で引き受けたものの、いざ何か書こうと思ってもまったく思い浮かばないのです。 締め切りは迫っている。しかし何も思い浮かばない。さて、どうしたものか。 その時、先生はふとひらめいたのでした。 そうだ! つくりかけの、できそこないの物語があったはずだ!! 星先生は早速引き出しにたまっていたそれらの物語を取り出します。そうです。これを使えば、最初から考える必要はないのです! ところが、現実はそんなにうまく

ごぞんじなかろうと思うが、わたしは、学校ネズミなんだ ~岡田淳著「放課後の時間割…

ある日、図工の先生である主人公は学校で一匹のネズミと出会います。そのネズミは白衣を着てい…

峰庭梟
4年前
5

卍に吸い込まれし者たちの集い 〜谷崎潤一郎著「卍」のこと

――諸君、本日諸君にお集まりいただいたのは、他でもない、谷崎潤一郎の作品「卍」について語…

峰庭梟
4年前
11

謎の奥の謎を解け! ~ガストン・ルルー著「黄色い部屋の秘密」のこと

あらすじガストン・ルルーによるミステリの古典的名作の一つ、「黄色い部屋の秘密」。まずはこ…

峰庭梟
4年前
8

「雪国」は「柔道」である 〜川端康成著「雪国」のこと

柄谷行人がその著書「日本近代文学の起源」で述べていることですが、日本にとって「文学」とい…

峰庭梟
4年前
11

「正しさ」よりも大切なもの 〜幸田文著「包む」のこと

本書は表題作「包む」を含む二十九篇のエッセイ集です。 どれもこれも素敵な文章で全部お気に…

峰庭梟
4年前
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子どもたちの心に花のつぼみを 〜レイチェル・カーソン著「センス・オブ・ワンダー」…

数年前、桜が満開の頃の話です。 当時中学生だった甥っ子兄弟が帰省していたので、せっかくだ…

峰庭梟
4年前
3

夫婦喧嘩は犬も食わないと言うけれど ~河野裕子・永田和宏著「たとへば君 四十年の恋歌」のこと

日本古来の詩が歌という「定型詩」であったのには、理由があったと思うのです。 言葉には「言霊」があり、そしてそれは感情的な言葉に最も宿る、もしかすると古代の日本人はそう考えたのではないか。 僕たちの感情というものは、大体において人間関係の中で生まれるものです。愛、喜び、怒り、悲しみ、そういった感情は、誰とも触れ合うことなく一人で暮していたならばあまり生まれないものでしょう。 そう考えると、歌というものはそもそも誰かに贈り、贈られるもの、相聞歌であったのかもしれない。 た