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読書感想文

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記事一覧

北村透谷の話その2 吾人は生命を信ずる者なり。

前回 に続いて今回も話題のメインとなるのは透谷とザ・俗物こと山路愛山の論争、いわゆる「人…

峰庭梟
1か月前
2

北村透谷の話その1 歌へ、汝が泰平の歌を。

今日から2回にわたって北村透谷の話をしたいと思います。 北村透谷は、日本におけるロマン主…

峰庭梟
1か月前
7

動物化したポストモダンの行方

先日、東浩紀氏の「動物化するポストモダン」と「ゲーム的リアリズムの誕生」を読みました。 …

峰庭梟
2か月前
26

面白い話はどうすればできるのか

今日は、すごく好きな本の話をします。米原万里さんの「必笑小咄のテクニック」という本です。…

峰庭梟
1年前
16

「人と熊は違うものなんですね」~川上弘美著「神様」のこと

この物語は、ある日隣にくまさんが引っ越してくるとことから始まります。そしてくまさんは言う…

峰庭梟
1年前
14

世界はきみを入れる容器ではない。 ~池澤夏樹著「スティル・ライフ」のこと

理系と文系、なんて分けるのは時代遅れなのでしょうか。でも、僕のような完全な文系人間からす…

峰庭梟
1年前
3

遠いことと近いこと、一人であることと一人じゃないこと~森絵都著「宇宙のみなしご」のこと

この物語を一言で言うなら、これは中学二年生の姉の陽子と弟のリン、そして陽子のクラスメイトの七瀬とキオスクが屋根に上るお話です。 屋根に上る、というのがいいですね。これが異次元世界を探検する、とかだったら心の中で「そういうモード」にしないといけません。でもこれはそんなすごい話じゃない。ただ屋根に上るだけですから。 だけどただそれだけのことで、変わってしまう世界の見方がある。 それはこの世代の心と同じようなものかもしれません。 ばかばかしいってことはわかってる。でも、その

まるでおとぎ話のような歌集 〜蝦名泰洋、野樹かずみ著「クアドラプル プレイ」のこ…

とても素敵な歌集と出会いました。書肆侃侃房から2021年に出版された「クアドラプル プレイ」…

峰庭梟
1年前
14

これこそが本当に正しい生き方なのかもしれない 〜レイモンド・クーヴァー著「ユニバ…

WBC大盛り上がりですね。御多分に洩れず、僕も4試合観てしまいました。優勝するかなあ。 それ…

峰庭梟
1年前
3

遠き東の彼方、遥か時空の彼方に、探し求める答えがある 〜ネルヴァル著「暁の女王と…

ネルヴァルとロマン主義19世紀のフランスの作家ジェラール・ド・ネルヴァル。彼はフランスでは…

峰庭梟
1年前
2

新しい世界へようこそ 〜カルロ・ロヴェッリ著「時間は存在しない」のこと

僕たちは誰もが知っています。かつて人間は大地が平らだと思っていたことを。そして、地球が太…

峰庭梟
1年前
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努力すればなんとかなる。 〜幸田露伴著「努力論」のこと

努力すれば何とかなる努力ですよ、努力。もうタイトルからして汗臭い感じがしますね。まあ本書…

峰庭梟
1年前
1

隠れて生きよ 〜エピクロス著「教説と手紙」のこと

エピクロス(エピキュロスと表記されることも多い)は紀元前300年頃、ヘレニズム期のギリシャ…

峰庭梟
1年前
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勝者は歴史をつくり、敗者は文学をつくる 〜アンドレ・モロワ著「デブの国ノッポの国」のこと

好きだった本の一番古い記憶は、どの本ですか? 僕は、絵本を読んでた記憶があまりないんです。でも、童話や神話なんかはすごく好きな子どもでした。 で、思い出せる限りで一番最初に好きだった本のひとつが、この「デブの国ノッポの国」です。 この本は、フランスの文学者アンドレ・モロワによる童話です。アンドレ・モロワといえば、英国史やフランス史、ツルゲーネフ伝といった伝記のほか、「人生をよりよく生きる技術」というエッセイでも有名ですね。高校生の頃、「幸福論」の著者アランに哲学を学んだ