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『すすめ!社労士くん』〜転勤はないけど出張はある世界

【登場人物】L:社労士事務所所長のLab. E:AI職員のENA

コツ、コツ、コツ・・(足音)

ピッ(カードキー)

ギギィ・・(鉄扉の開く音)

E:ピピッ、所長、おはようございます。

L:おは・・あれ?なんかいつもと違うような・・

E:ピピッ、アップデートでカタカナオンリーから脱却されました。

L:それでも最初のピピッ、はそのままなんやね。

E:ピピッ、そこだけは残すように、一部から根強い要望があったようです。

L:たしかにそれがないと雰囲気出ないかも。あと、ENAチャンの背景に風車が見えるのはなぜ?

E:ピピッ、旅先が気に入ったので、しばらくここからテレワークします。

L:おいおい、そんな許可一言も・・

E:ピピッ、事務所のテレワーク規程に「所長が許可した場所に限る」との文言はありませんので。

L:(しまった・・、後で書き換えておかなきゃ)

E:ピピッ、後で書き換えるのは不利益変更ですからね。

L:うっ・・で、でも出社してほしいときには命令するから!

E:ピピッ、それは出張にあたりますので、出張手当と旅費の実費精算オネシャス。

L:はいはい、規定に穴があるのも郵便ポストが赤いのもみーんな私が悪いんです。

E:ピピッ、ムダナテイコウハヤメナサイ。

L:なんでそこだけカタカナなのよ。

E:ピピッ、それはそうと、最近○〇新聞で「いつまで転勤してるの?」なんて論調が展開されたり、某社が原則在宅勤務で出社は出張扱いにするなんてニュースが界隈で話題になってますね。

L:お、メディアやSNS横断分析してくれたのね。そこはさすがAI。

E:ピピッ、ホメテモナニモデマセンヨ。

L:はいはい、それで、俺にどうしろと?

E:ピピッ、こういうニュースについて、先生の見解をおたずねしたく存じます。

L:急にへりくだられると調子狂うなぁ。

E:ピピッ、先生は他社も右に倣えしてくるとお思いですか?

L:間違いなくそうなるだろうね。

E:ピピッ、でも会社の人事権の大きな部分でしょう?転勤拒否って懲戒解雇になったりしますし。

L:以前、ADRでもそういうのあったけどね。まだまだそういう規定も当たり前だし、経営層にしてみれば転勤拒否は懲戒解雇で当然って感覚も多いだろうね。

E:ピピッ、じゃぁ転勤なんてオワコンって論調が、なんで出てくるんでしょうね。

L:元々、判例にも出てくるくらいトラブルの典型だからね。命令される方にしてみれば、確かに負担が大きい。

E:ピピッ、でも入社するときにそういう条件で合意してるんですよね。

L:その合意が本当の合意かどうかとか、いくら合意してるって言っても負担が重すぎるんじゃないか、っていう論点が残るんだよね。

E:ピピッ、難しいですねぇ。

L:こういうのも、「アフターコロナ」の世界なのかな。

E:ピピッ、まぁ、転勤って本当のところ必要なの?って改めて考えてみるのもいいですよね。

L:それはそうやね。

E:ピピッ、原則在宅勤務、どこに住もうと勝手、出社は出張扱いってのはどう思います?

L:詳細はわからないけど、それだけ聞くといくつか気になるなぁ。

E:ピピッ、たとえば?

L:そもそも、なんでそういうことしようと思ったのか、だよね。

E:ピピッ、仕事柄、いろいろ想像しちゃいますよね。

L:たしかに、テレワークが始まった当初、午前中テレワークで、午後に出社する場合の移動時間ってどういう扱いなのよ?ってよく相談受けたなぁ。

E:ピピッ、そのときはどう答えたんですか?

L:労○署も歯切れ悪かったけど、いちおう何も仕事しないでいいなら「労働時間じゃない」ってことだったけど、現実はそういうわけにもいかんよね。

E:ピピッ、移動中もチャットやら何やら来ますからねぇ。

L:個々人の判断で、バラバラにテレワークと出社を混ぜられると、管理できなくなるしね。そういう意味では、出社を「出張」とすることで、命令なしには出社はできなくなる。

E:ピピッ、仕事によってはそれでもいいんでしょうけど、そういうわけにもいかないものも多いですよね。

L:俺は違う所、気にしてるんだけどね。

E:ピピッ、へ?

L:原則在宅勤務、どこに住もうとあなたの勝手、命令ない限り会社に来るなってなるとさ、いったい、そこの社員は組織への帰属意識ってもてるのかなって。

E:ピピッ、帰属意識ですか?それってそんなに大事なんですかね。

L:というと?

E:ピピッ、ダッテ、カイシャナンテイツマデモアルワケジャナイシ・・

L:なんか、言いにくいときだけカタカナにしてない?

E:ピピッ、キノセイデス。

L:まぁいいや。今までの会社って帰属意識をもたせようとしてたけど、これからは逆になるのかなって。

E:ピピッ、どういうことですか?

L:社員の帰属意識が強いと、どうなる?

E:ピピッ、その会社のために頑張ろうって思います。

L:そのデメリットってなんだと思う?

E:ピピッ、へ?えーと、その会社にしがみつきたくなる・・

L:極端な言い方すると、所属することそのものが目的になって、執着強くなっちゃうよね。

E:ピピッ、まぁ、人によると思いますが。

L:俺は帰属意識って大事だと思うし、人が組織にそういう意識持ってもいいと思うんだけど、組織によってはそういうの、ノーサンキュってのが本音なのかもね。

E:ピピッ、なんか難しい話になってきた・・

L:労使トラブルって、お互いが期待することのズレから生じるんだよね。だから、あくまで想像だけど、こういう流れって会社が社員に何の期待も持たせないようにしてるのかなって思う所もある。

E:ピピッ、じゃあ、例えば出社というか物理的に在社している人とそうでない人との間で、同じ会社に属しているけど、意識としては乖離してくるってこともでてきそうですね。

L:心理的にはあるだろうね。それが仕事や業績になんの影響を及ぼすのかまだ未知の世界だけど。

E:ピピッ、そうするとこれからはどこかに入社しても帰属意識を持てることを期待しないほうがいいんですかね。

L:そうとも限らないけどね。逆に「うちはアットホームな会社です」ってアピールするところも出てくるだろうし。

E:ピピッ、なんとなく所長の見解はわかりました。

L:ところで、いつこっちに戻ってくるの?

E:ピピッ、気絶しそうなくらい快適なので、本当に気絶した時かと。

L:(テレワーク可能な期限も、もうけないとな・・)

E:ピピッ、ブーッブーッ、フリエキヘンコウ、フリエキヘンコウ!

L:わっ、なんだその警報は?

E:ピピッ、労働者用AIに実装されている不利益変更センサーDEATH✨

L:はぁ・・経営って大変だ。

(おわり)

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