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恋と愛の違いについて、または万葉仮名に見る古代人のセンス③〜授業中の雑談 これがホントの教養だ!03〜

 さて、ここからやっと本題です。「雑談の本題」っていうのもなんだかおかしな感じがしますが、いきます。

 恋と愛の違いは何?

というお話です。

4 万葉びとのロマンチシズム

 まず、恋って何よ?という話からですけどね、もうずっと昔の20代のころ、だからまあ30年ぐらい前のことなんですけどね、『万葉集總索引』っていう本で、万葉仮名について調べていたんです。

 万葉仮名って知ってる? 万葉集が編纂されたころはまだひらがなが発明されてなかったから、お隣の中国から漢字を輸入して音をね、当ててたわけです。まあ当て字ですね。
 当て字、わかる? 暴走族がさ、あ、今はいろんな呼び方があるみたいだけど、あの方々がほら、壁とかに「愛羅武勇」とか「夜露死苦」とか書くでしょ? あれ? 知らない? 知らないの?
 時代だねぇ。いやまあ当て字ってのは言葉の音に漢字の音を合わせて書いたものね。でも当て字っていうのもおもしろいよね。いま黒板に書いた「愛羅武勇」だけど「愛乱舞優」とも書いたりして、ね? 音はどっちも「アイ ラブ ユウ」だけど漢字の持っている意味でニュアンスも違って見えるよね。当て字の文化ってのはすばらしい遊びだよね。

 さて、それでですね、さっき言ってた『万葉集總索引』で、万葉仮名で「恋」ってどう書いているのか調べてみたんです。するとですね、まあもちろん「戀」の字もあるわけですが、他にもね、

「古非」「古比」「故非」「故飛」

なんて表記していて、他にも「許比」「己比」なんていうのもありました。

 それで「ふ〜ん」って見ていて、はたとある仮名に目がとまったんです。もう釘付け。
 しばらくフリーズした後に、いっぺんにいろいろな感情が湧いてきました。で、最後にせつなくなりました。
 それはどんな仮名遣いだったかというと、

「孤悲」

って書いてあったわけです。
 みなさん、「孤(ひと)り、悲しむのが、恋」なんですねえ。
 思えば、恋っていうのは楽しいものなんでしょうか? 「恋は楽しい」っていう人、手を挙げて。あれ? いないの? ほんとは手を挙げたい人、いるんじゃないですか? 
   いやね、そりゃたしかに両想いは楽しいでしょう。でもそれもけっこう短い間なんじゃないのかな? 片想いはもちろんですが、両想いでつきあっている人も「孤(ひと)り、悲し」んでひっそり泣いていることの方が多いんじゃないんですか?

 「孤(ひと)り、悲しむ」

 これが恋の本質です。

 いいですか? 恋は、「ひとり」でも「一人」でも「独り」でもなく、「孤(ひと)り」なんですよね。究極の、圧倒的な孤独感。そしてね、恋は、勝手にひとりで盛り上がって、勝手にひとりでドキドキソワソワして、勝手にひとりでザワザワイライラして、勝手にひとりで泣くものなんです。
 相手? 実はそんなもの初めからいない。

 って言うと、「はあ? ふざけんな! 相手がいるから恋は成立するのよ!」って思いますか?
 でもね、ひとりなんです。だから「ひとり」でも「一人」でも「独り」でもなく、「孤(ひと)り」なんです。このことはこの後も一貫してみなさんにわかってほしいところなので、もう少し話しますよ。
 このことがわかれば、恋と依存を取り違えなくなります。つまり失恋して、または裏切られて悲しい思いはしても、不幸にはならない。相手を憎むような心の鬼を育てなくて済む。きっちり自分を成長させられる恋ができます。

 何せね、当時、私は、万葉びと、古代人っていうのは、私たちよりずっと自由な発想で、しかもロマンチストで、かつ、物事の本質を見つめているんだと思いましたよ。で、魂が自由であるためには何より遊びごころが大切なんだなって思いました。

 ところでみなさんは、「恋」は、なにゆえに「こい」って言うか知っていますか? 知っている人、手を挙げて。知っていたら古典Bの平常点を250点差し上げます。いないねいないね、いませんね。いやあ残念、平常点600点あげようと思っていたのに。

 ヒント出します。この時間は古典の時間です。
 はい誰か!

 これも、いませんねえ。
 お、時間ですね。
 では、次回まで考えといてよ。Google先生に聞くのは無しね。古文単語集に答えがある。それを読んでいくのはオッケーです。

 はい、じゃあ、号令!
 あざしたあっ!

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