Vol.003 「体制」との渉り合い(後篇) 〜ひよこクラブの基本精神《4 ベテランにはできないことをやれ 》 について〜

②ひよこクラブの基本精神《4 ベテランにはできないことをやれ》 について

「ベテランにはできないこと」って何でしょう?

 別に何てことはないです。ベテランにはできないことは、

「本来、当然やるべきこと」

の中に数多くあります。例えば……

①必ずチャイムと同時に授業開始する。
②毎休み時間に教室に行って生徒とおしゃべりする。
③毎朝、早めに教室前やフロアに立って生徒に「おはよう」する。
④がんがん授業見学する。
⑤HR見学する。
(ひよこのみなさんが担任の場合、どうしたら物理的に可能になりますか? )
⑥いろんな授業法を試してみる。(積極的にPBL型授業を取り入れたり、タブレット等を導入しているならさまざまなツールを使ってみる)
⑦何でもばしばし動く。「やれやれ」「どっこいしょ」とか言っている横を駆け抜ける。エビ反りなみにふんぞり返ったり、カーネルサンダース人形のように突っ立ってないで。

 学校によるとは思いますが、これらのことは、往々にしてあります。

 ちなみに、上記7項目の中で、一番大切なことはどれだと思いますか?

 それから、サービスしてもうちょい細かく足しますしょうね。ちなみにこれから補足する事項は、教員研修ではほとんど触れられないけど、めちゃくちゃ役に立つ大切なことです。あまりにも当たり前すぎて「けっ」とか思ったり「ふっ」とか笑ったりしたあなた、浅はかです。もうオレ様先生になりつつありますよ。

というわけでさらに補足します。

⑧授業やHRの始業と終業の挨拶は、必ず全身を生徒に見せて行う。
⑨毎回、必ずフルネームで生徒の出席を取る。
⑩問いかけ以外は「わかりやすさ」が大切。

あらためてまとめます。

①必ずチャイムと同時に授業開始する。
②毎休み時間に教室に行って生徒とおしゃべりする。
③毎朝、早めに教室前やフロアに立って生徒に「おはよう」する。
④がんがん授業見学する。
⑤HR見学する。

⑥いろんな授業法を試してみる。
⑦何でもばしばし動く。
⑧授業やHRの始業と終業の挨拶は、必ず全身を生徒に見せて行う。
⑨毎回、必ずフルネームで生徒の出席を取る。
⑩問いかけ以外は「わかりやすさ」が大切。

今回は、上記の中の

①必ずチャイムと同時に授業開始する。
②毎休み時間に教室に行って生徒とおしゃべりする。

についてお話しします。

①必ずチャイムと同時に授業開始する。について

 これは学校によって、当たり前のように始業のチャイムと同時に授業を始める学校と、当たり前のように始業から数分遅れで始まる学校がありますので、一概にどうとか言えませんが、
「チャイムが鳴ってから職員室を出る」のではなく、「チャイムと同時に号令がかかる」ことは鉄則です。
 必ず実践してください。それができている学校かどうかで大体その学校の教育のクオリティがわかります。受験生保護者や業者など、外部の人の目で見たとき、始業チャイムと同時に始まらない光景は実に異常に見えます。授業という根幹の仕事に遅れても平気な顔をしていられるのは、学校の先生ぐらいです。ひよこのみなさんからは、このみっともない光景を変えていきましょう。教育改革なんて勇ましいことを言う前に、規定時間いっぱい授業しろ、です。

②毎休み時間に教室に行って生徒とおしゃべりする。について

 さきほどみなさんに①〜⑦の中で、一番大切なことはどれだと思いますか? と問いましたが、これが一番大切です。これを休み時間ごとに実践している教員と、職員室でベテラン先生みたいにふんぞりかえっている教員とでは、全く生徒掌握力も、生徒掌握の度合いも違ってきます。

 あるとき、新任&若手教員向けの研修会を催したとき、担任の役割や1日の動きをざっくり説明したことがありました。そのとき、熱心な若い先生が

「この学校は学期末などに面談週間を設けていませんが、じゃあいつ面談したらいいんですか?」

と半ば反問、半ば質問をしてきました。

「中間明けから放課後を使って少しずつやったり、期末試験の後の期間に集中的にやったらいいと思いますよ」

と答えたところ、

「中間明けなど、日ごろは部活があるじゃないですか。期末後の期間は採点や成績処理で時間がありません。その後は補習があるからできません」

と言うので、

「部活は毎日ではないでしょう? それから成績処理の時期に面談をしている先生方も普通にたくさんいらっしゃいます。また、補習は午前中に2コマぐらいですよね?」

と答えました。

 この若い先生を責めることはできません。仕事に慣れていないとか、加減できていないとかもあるかもしれませんが、面談週間がないのはよくないことですし、実際に荷重負担なのかもしれません。これらは間違いなく改善していく必要があることです。けれど、学校単位、学年単位で改善するには時間がかかります。または改善できるものならとっくの昔に改善しているはずなので、もしかすると改善は見込めないのかもしれません。改善するのを待っていたら平気で何年も過ぎてしまい、その間「面談週間がないのがおかしい!」と言い続けて、もし面談しないままだったら、生徒が致命傷を負います。当の先生も今以上に困ります。

 大切なことを言います。

 現実は、あなたのために御膳立てされていないのです。

 理想を追うことは、現実を受け容れないことではありません。
 現実の矛盾やほころびを受け容れたうえで、理想を追いかけてください。だからこそ理想を追いかけ続けることは困難ですし尊いのです。

 学校のシステムが悪いだの、授業のコマ数が多いだの種類が多いだの、生活指導に手がかかるだの、部活が負担だの、自分ができない理由を自分の外側に求めて並べていっても何も解決しませんし、自分にいいことは起こりません。

 件(くだん)の若手先生は、最後に

「面談をしないと生徒のことがわからないじゃないですか!」

と、これはもはや疑問ではなく反問してきました。私は

「面談しないと生徒のことを知ることができないの?」

と、まるでおうむ返しのように聞かざるを得ませんでした。

 この記事を読んでくださっているひよこのみなさんはどうですか? やっぱり面談をしないと生徒のことがわからないですか?

 生徒の本音やクセ、性格、どんなことに夢中か、毎日どんなことを考えているか、最近嬉しいことがあった、つらいことがあった、親とこんな会話した、だ 誰それにこんなことを言われてむかついた、うれしかった…………。

 生徒を把握するってそういうことを共有することですよ。かしこまって向かい合わせに並べた机の向こうで、成績について「もっとがんばります」とか、進路について「どうしようか迷っています」という話を聞くことは、生徒の本質を把握することではありません。
 また、その部分だけの話を何百回面談で聞いても話は前に進むことはありません。成績や進路とは全く関係なさそうなところにこそ、その生徒の成績や進路を大きく左右したり直結することが埋もれています。そんなこと、当たり前なんです。優れた教員でなくても、毎日2分でも3分でもいいから世間話したり友だちと話すのを遠目に聞いていたらつながってくるしわかってきます。

 当たり前すぎることを言いますが、教員と生徒は、あなたと親友との関係やあなたと恋人との関係と何一つ変わらない、人間同士の付き合いなんです。どうして学期末の1回きり、年3回の面談でその生徒を知ることができるでしょうか?

 担任は意識の中ではクラスの生徒のことばかり考えているので、まるで毎日濃密にクラス生徒たちとコミュニケーションを取っているかのように錯覚しがちです。

 でも事実だけをよくよくふりかえると、1日全く話さないクラス生徒が大勢いるはずです。教員は脳内だけで生徒とコミュニケーションを取って、本当のふれあいをしていない場合がとても多いのです。

 そしてやれ授業準備が、やれ部活が、やれ採点が、やれやれといいわけをしているうちに「こんなに一所懸命がんばっているのに、なんで生徒は私の気持ちを分かってくれないの?」「こんなにがんばっているのになんでうまくいかないの?」とダークサイドへと落ちていくのです。

 そもそもなぜあなたは教員になったのか? 人によって答えはさまざまでしょうが、共通項として「生徒が好きだから」「人が好きだから」だったのではないですか? ならば寸暇を惜しんで生徒と話してください。生徒と話せなくても教室で休み時間の様子をたくさん見てください。たった10分休みに教室の隅っこで壁にでも寄りかかって見ておくだけでも十分です。これ見よがしに昼休みに行って一緒に遊ぶとか、給食を一緒に食べなくたってかまいません。そういう大仰なことではなくて、ほんのスキマ時間のささやかなふれあいの蓄積です。

 毎日毎時間それを続けるだけで、だいぶ生徒のことを理解できるようになります。少なくとも他の先生方よりもずっとそのクラスの生徒たちをわかる教員になります。そして、一見無意味そうで無駄そうなこの実践は、意外とみなさんの仕事をうまく回していくと思いますよ。

 まあ、生徒と教員の関係に限らず、日ごろ何にも見てくれていないやつが、ここ一番の時だけいかにもな感じで登場してきても、「はあ? 何こいつ」って誰でも思いますよね?

 というわけで、ね? ②毎休み時間に教室に行って生徒とおしゃべりする。って大切でしょ?

 今回はここまでにします。最後まで読んでくださってありがとうございます。感謝します! 

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