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なぜ高校でSDGs学習に取り組む必要があるのか? ~ SDGs・探究への招待 #060 ~

 今さらかもしれませんが、なぜ高校でSDGs学習に取り組む必要があるか、できるだけコンパクトにまとめましたので、高校生、大学生のみなさんは舞台裏を知る機会として読んでくださればと思います。また、高校の先生方で「導入したいけどどうしたもんか」と迷っていらっしゃる方々、逆に「なんでSDGsなんて高校で学ぶ必要あるの?」と疑問に思っていらっしゃる方々もご参考にしていただけたら幸いです。

〈1 SDGs学習の是非について〉

 そもそもSDGsを社会全体がどう捉えているのか、
 どの程度本気で考えているのか、
 一過性のものなのかどうか、といったことから考えてみたいと思います。

①投資家たちは企業のSDGsへの取り組みを基準とし、投資を行っています。ESG投資と呼ばれています。ですから企業は、SDGsにいかに取り組んでいるかアピールしなければなりません。
 世界全体の投資額の約3割がSDGsの基準を取り入れたものです。
 SDGsという名称は変わっていくかもしれませんが、企業の格付けに影響するものなので、今後長期間にわたって、国はもとより各企業が継続的にSDGsに取り組んでいくことが見込まれます。

②大学はご存知の通り理系分野のみならず企業との連携を強めていますので、
 SDGsへの取り組みも今よりもさらに加速していくものと思われます。
 現状では、日本は「THE大学インパクトランキング2019(以下、インパクトランキング)」に世界の中でも最多の52大学がエントリーしています。
 因みに「インパクトランキング」は、 社会貢献度を軸に指標を決めている大学ランキングで、今年イギリスで作成されたばかりのもので評価は定まっていませんが、前述のESG投資同様、今後、新しい大学選びの指標になっていくだろうという声もあります

③文科省は小中の新学習指導要領の「総則」と、複数の教科の「教育目標と内容」で掲げており、総合的な探究の時間はもちろん、各教科の授業内でもSDGsの観点や価値観を身につけさせることを求めています(そうした意味では今や公立学校が今後の国内の教育活動の方向を示唆しており、言わば最先端を行っているとも言え、うっかりすると私立高校はガラパゴス化しかねません。いまや公立学校に学ぶべき点が多くあります)。
 いずれにしてもSDGs学習の唯一の空白ゾーンが高校教育の領域です

④以上の通り、SDGsは信用や格付けの基準として重要な位置を占めているので、政府や自治体、企業、そして大学は今後も力を入れて取り組んでいくだろうと思われます。

〈2 SDGs学習を導入してどうするか?〉

SDGsは新テストを前提とした
 ①教育の素材として
 ②進路学習として
 ③大学への提出書類(ポートフォリオ)の作成として

有用で意義深いと考えます。

 すでに中高一貫校を中心にSDGs学習を全面的に取り入れている学校も加速度的に増え始めていますが、全国の中で半歩先、一歩先にこれを実践していくことは、ノウハウの蓄積の面からも生徒募集の面からも有益だと考えます。
 したがって、SDGs学習を、探究学習はもとより、教科学習や諸行事ともリンクさせて、自校のアイコンとして特徴づけ、強み(アピールポイント)にして、生き残りの手だての一つにできると考えています。

探究学習でSDGsをベースにすることは、むしろ探究というつかみどころのない教科の特性を少しでも緩和できるものとも思います。

〈3 SDGs研究の取っかかりについて〉

 SDGs学習を推進するために、SDGsの研究が必要になります。

 本来SDGsはアクションそのものなのですが、だからといって学校で「ゴミ拾いしましょう」「植樹しましょう」などとすぐにアクションにシフトしてこれがSDGsだよねと短絡したり、肝心の理念や思想性をおざなりにしては本末転倒です。

 SDGsは、あくまでも探究学習のための一助であることを忘れてはなりません。でなければ、SDGs活動家になってしまいます。高等学校は、学びの場です。いかなる活動家も育ててはいけません。

 だとすると、「SDGsアクション」の研究ではなく、「SDGs学習」の研究と、探究学習の中でのSDGsの位置づけを考えていく必要があります。

 個人的には、SDGsそのものにくびったけになるのではなく、探究活動の自由さの中で、社会に目を向けさせるフレームとしてSDGsを生徒のみなさんに紹介していくのが最もバランスがいいかと思っています。

〈4 評価について〉

 「総合的な探究の時間」は学校によっては「評価しない」となっているところもありますが、探究活動自体は教科授業でも求められています。今後はさらに強く求められてくると考えられます。

 客観性の観点から、いずれAIが評価するようになると考えられ、そこに向けた動きもありますが、それまでは人である教員が評価します。その際、評価基準としてルーブリック評価表が必要になります。この評価表の研究こそ、その学校の探究活動のクオリティを逆照射し決定していくことになります。例えば、プレゼンについてルーブリック評価表を用いるにしても、それが小中学校と変わらないもので評価していたら、端から生徒に求めるプレゼンのクオリティも小中学生に求めるものと変わらなくなります。
 SDGs学習も、探究学習も、時間の経過と共に普及、定着し、内容も手法もいくらも共有されると思いますが、ルーブリック評価表はその学校の生命線として秘匿されがちになると思います。

〈5 終わりに〉

 SDGsは、学べば学ぶほど、その重要性を実感します。しかしそれだけに、「SDGsのためのSDGs学習」になってしまいがちです。学校現場でのSDGs学習は、あくまでも教育の一環、探究活動の一環である点を念頭におく必要があるかと思います。

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