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長編小説「KIGEN」

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「AI×隕石×大相撲」 三つの歯車が噛み合ったとき、世界に新しい風が吹きました。 それは一つの命だったのか。それとももっと他に、相応しいものが、言葉が、あるのだろうか― 小学校5…
ようこそいち書房へ。長編小説はお手元へとって御自分のペースでお読み頂きたく思います。
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「KIGEN」第二回

 一章 「起源」  二〇二一年二月某日。現場マンションの住人に話を聞いた。 「夜遅くにす…

いち
1年前
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「KIGEN」第十七回

三章 「研究所の真実」  矢留世の足取りは軽快だった。あのマンションに落ちた隕石の分析が…

いち
1年前
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「KIGEN」第十八回

「えっ、ちょっと、三河さん!まだ台詞考え中ですって」 「ぐだぐだ考えたってつまらんだろう…

いち
1年前
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「KIGEN」第十九回

 いちごうの不調の原因ははっきりしないままで、現状のいちごうにどの程度の検査が可能か、ロ…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十回

 ガレージとばかり思っていた建物へ足を踏み入れて、中身の全く違ったことにまず驚かされた。…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十一回

 奏は首を振った。掃除に時間を割く分も研究していたいのが本音で、また指で摘まむのも苦労す…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十二回

「いちごう君の突然のシャットダウンは、彼の内部で、例えば電子回路を遮断するもの、要するに痞えがあるとしか考えられません。精巧に作り上げられたロボットの、しかもその内部は人工知能が基盤となっていますから、かなり優秀なロボットである事は間違いありません。もし仮に電気系統の異常であるとか、信号トラブルであるのなら、その異常は自己分析で発見、対処できると思うんです。ところが奏くんの説明に依ると、いちごう君を何度検査しても異常は発見されていない。つまり、人工知能が世界中の情報を収集、解

「KIGEN」第二十三回

 若き研究者の背負った現実があまりにも非現実的で、その苦悩を思えば下手に口を開けない。何…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十四回

「分かったから落ち着けよ。何を前提にした発言か知らんが、国を端から敵視するなよ。まだ何も…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十五回

四章 「結託」  チームリーダーの矢留世から報告を受けた本部は騒然となった。単純明快なミ…

いち
1年前
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「KIGEN」第二十六回

 手探りながらも着々と準備が進められた健康診断を前に、奏はいちごうを慮り声を掛けた。いち…

いち
11か月前
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「KIGEN」第二十七回

「これは僕の想像だけどね、いちごうさんは痛いとか、楽しいとか、たった今も凄いが飛び出した…

いち
11か月前
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「KIGEN」第二十八回

 急に改まった医者は大人たちへ力強い目を向けた。いかなる検査をするにしても、未成年の彼等…

いち
11か月前
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「KIGEN」第二十九回

「先生は本当に賢くていらっしゃる。私はいたく尊敬致します」 「いちごう、何言い出すの、失礼だよ」 「ええそうかなあ、だって奏、先生は頭の回転が速いだけじゃなくて行動力もある。それにこんな珍妙な生物と対峙しても動じることなく、とても親切に、丁寧に向き合って下さるんだよ。心から思い遣りのある人間か余程の変人じゃないと出来ない所業だよ」 「ははは、それ僕はどっちの部類に入れられてるんだろ。変人かな?」 「いえ、どちらもですよ。先生は優しい上に変人ですよ。だから賢いんです」