「KIGEN」第五十一回
「喧嘩両成敗だ。処分は妥当だった。だが俺自身が角界に残る事を許さなかった。人を喜ばせるためにあった手で、人を傷つけたんだからな。相撲道に反する行為だ。許される訳が無い――もう古い話だ」
いちごうは頭の中であらゆる言葉を想像した。胸の内に沢山の言葉を浮かばせた。だがどれも簡単に出て行かなかった。全て語ってくれた源三郎に届けたい言葉はこんなものじゃないと、自身の中に在る言葉の箱をいくら漁ってもまだ見つからなかった。全く、AIであるのを忘却しているとしか思えなかった。自分の知能