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短いおはなし

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原稿用紙10枚ほどのおはなしがメインです。長くなったら連載にします。 【短編小説】10枚〜100枚 【短め短編小説】3枚〜10枚 【脚本】10枚前後
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#ヒューマンドラマ

【短め短編小説】Life Goes On #シロクマ文芸部 #消えた鍵

【短め短編小説】Life Goes On #シロクマ文芸部 #消えた鍵

「消えた」鍵は今もあの場所にあるのだろうか?――日本を発ってから、この疑問は、私の頭を片時も離れることはなかった。

 5年ぶりに訪れたフィレンツェは、街そのものが1つの芸術品であるかのように相変わらず美しい。オレンジ色の屋根が連なる街並み、石畳、大聖堂、教会、宮殿、鐘楼、塔、橋その他の建築物が訪れる者を古の昔へと誘う。もしヨーロッパで何処に住みたいかと尋ねられたら、私は迷いなくフィレンツェと答え

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【短め短編小説】A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 3 徹君の場合 (2790字)

【短め短編小説】A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 3 徹君の場合 (2790字)

【これまでのお話】
A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合
A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合

 こんにちは。竜崎蓮の12年来の友人、藤澤蘭子です。今日も蓮の話をしたいと思いますが、特異体質を持つ蓮のことを分かっていただくためにデータシートを作成しました。初めて蓮の話を聞かれる方はぜひ目を通してください。蓮のことをすでにご存じの

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【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

蓮の不思議な体質 (前のエピソード「私の場合」をお読みくださった方は「泉先生の場合」へどうぞ。

 前回、私こと藤澤蘭子は、竜崎蓮と自分の一風変わった友達関係について話しました。そして蓮の不思議な体質のことも……。
 蓮は他人に触れた途端、その一触れでその人の苦しみを一瞬にして体に取り込み理解します。そして、その苦しみの度合いに合わせてその人に寄り添い、癒やすという運命を背負っています。やがて取り

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【短め短編小説】『山桜』《Bright & Hopefulなお話》(2121字)

【短め短編小説】『山桜』《Bright & Hopefulなお話》(2121字)

「何時ぐらいに帰ってくるの?」
玄関で登山靴を履いていると、背後で母の声がした。
「今日は近場だから早いと思う。昼過ぎには帰るよ」
「そう、気をつけてね」
 パジャマ姿の母は、そう言うと寝室に戻っていった。

 月に1度か2度、気が向いたら俺は山に出掛ける。行くときは独りだ。普段は近場の1,000メートルほどの山、休みが取れれば1、2泊で日本アルプスにも出掛ける。
 初めて山に行ったのは3年前の3

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