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自分が保育園に預けられることを悟り、娘は泣いた【子育てエッセイ】

大人が思う以上に、赤ちゃんは言葉を、この世界のことを理解している。そう感じる出来事があった。

筆者について
夫と1歳の娘との三人家族。
現在保育園が見つからず無職。

ある夜のこと。
いつものように1歳の娘を寝かしつけていると、寝かかっていた娘が突然激しく泣き出した。

娘は上体を起こし、大きく開けた口から悲鳴のような泣き声をあげ続けた。
ぎゅっとつむった目から溢れた涙が、紅潮した頬を流れていく。

娘は普段、夜決まった時間に布団に入りしばらくすると眠りにつく。
寝ぐずりや夜泣きをする時期は過ぎていて、今では母親の私が隣にいれば泣き出すことはまずない。

しかしその夜は少し様子が違った。
激しく泣く娘の背中をトントン叩くと、娘はフッと泣き止んで布団に寝転ぶが、しばらくするとまた体を起こして泣き始める。

それが一時間ほども続いた。
まるで生後半年を過ぎたあたりから始まった夜泣きのようだった。

一体どうしてしまったのか……。
暗いオレンジ色の保安灯がついた部屋の中で泣く娘を見ながら、私は考えた。

心当たりはあった。


この数日私は、4月から社会復帰をしようと保育園と仕事先を探していた。
(しかし結局保育園が見つからず断念した話は別記事↓にて)

その日も、保育園や市役所、登録した派遣会社などと電話でやりとりをしていた。

その合間に書類の準備をしたりパソコンを触ったりしていると、普段は一人遊びをしている娘が、「あーうー」と大きな声を出したり、理由もないのに泣き出したりした。

その時は、「ママが忙しくしているからかまってほしいのかな」程度にして思っていなかった。

けれどひょっとするとこの子は、私が思う以上に状況を理解しており、
 
「自分はどこかに預けられてしまう」
 「ママは仕事に行ってしまう」

と、不安だったのかもしれない。


夜泣きをする娘を見ながらそう思った私は、娘を抱っこして言った。

「ママどこにも行かないよ。保育園探したけど見つからなかったよ」
「お仕事行かないよ。もうちょっとおうちで一緒にいようね」

実際はもっと色々と事情を説明した。

仕事をするために保育園を探したけど、空いている保育園が見つからなかったこと。
だから仕事に行くのは今はやめにしたこと。
保育園が見つかるまで、もう少し家で一緒にいられること。

私が話し続ける間、娘は私の腕の中で泣くこともなくじっとしていた。

寝る時は自分の布団でなければ寝られず、体に触れられるのも嫌がるのに、その日の娘は私に抱かれたまま眠りについた。

眠りに落ちる前、腕の中にいる娘の体から力が抜けていくのがわかった。
愛おしかった。

娘を抱いたまま布団の上に仰向けになり、1年1ヶ月と少し前、この子を産んだ時のことを思い出した。

まだへその緒がついたままの我が子を初めて胸に抱いた時。
小さくて少し湿っていて、温かかった生まれたての赤ん坊。

3048グラムで、思っていたよりも大きくてしっかり重たかったことを覚えている。

けれど今胸に抱いているこの子は、私の体の上からはみ出すほど大きくなり、ずっしりと重たい。

1年1ヶ月と少しで、こんなにも成長してくれたのだ。


翌日から娘は普段通りに戻り、寝る前に泣き出すこともなかった。


赤ちゃんはきっと私たちが思うより、大人の言葉を理解している。
その夜のことを夫に話すと、夫は
「まだ理解してないよ。いつもと様子が違うから泣き出しただけ」だと言った。

果たしてそうだろうか。

ふと、机の上に置きっぱなしにしていた通信教材のDMが目に留まる。
そこには、「1歳から1歳9ヶ月の子は、言えないけど185個の言葉を理解している」とあった。

やっぱり、と思った。
それなら「保育園」も「仕事」も、ちゃんとわかっているに違いない。


私が今言葉を話すことができるのは、物心つく前から、両親や姉兄をはじめ周囲の人たちにたくさん話しかけてもらっていたからだ。

記憶には残っていなくても、その言葉は小さかった私の心の栄養になって今の私の人格ができあがった。

一つ一つの言葉や接し方が、子供の心を育てていく。
悪意は食品添加物みたいに心に蓄積するし、愛情は心を豊かに育むはずだ。


保育園がどこも空きがなく、どう頑張っても子供を預けることはできないとわかった時、焦りや苛立ちを感じると同時に少しホッとした。

もう少しこの子と一緒にいられる、と。

子離れできないのも問題だとは思うが、子供の心の成長を一番近くで見守れることは嬉しかった。

娘が生まれてから1年。3時間おきの授乳や夜泣きで心身ともに疲れ果てていた時もあったが、振り返れば、どの瞬間も子供と一緒にいられて幸せだった。

次の1年は、少しずつ言葉を話し始める我が子との1年だ。
コミュニケーションが取れるようになり、自分の足で歩き始め、子供の世界はどんどんと広がっていく。

娘と共に外の世界を歩くことを、今からとても楽しみにしている。


最後に

本記事は保育園に預けることを否定するものではありません。
みなそれぞれに事情があり、今の日本は残念ながら親が望む形で仕事と子育てを両立できる環境が整っていないというのが筆者の見解です。
私も本来であれば復職を予定しておりましたが叶わず……。
それでも前向きになろう、という思いも込めてこの記事を書きました。


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