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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第2章 謎のシスター少女編 4】

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ー始まりの村 ドミリアー


「準備はできたかい?もう村を出るのかね?」

はい    ◀︎
いいえ


「分かった。今すぐ呼ぼう」


ブォォォォォ!!
【村長はほら貝をつかった!】


いやどんな呼び方?

合戦?


「さて、後は来るまで少々待っていてくれ」





ー20分後ー

「…………」


…………


………来なくね?


「うーむ……やはりほら貝これを使うのは失敗だったか?初めてやったしな」


初めてやったのかよ。なんで今使った


「何となくめでたいし、いいかなと」



ガッチャガッチャ…!!


「お、来たようだね」


そんで来んのかい


……ん?



「はぁ…!はぁ…!ゴホ…!遅れて…すんませんっす!」


おい話がちげぇぞ、人力車じゃねぇか


馬どこ行ったんだよ


「おいキミ、いつもの…なんと言ったかな?ウマコちゃん??はどうしたのかね」


ウマコて、当てに行く気無いだろ

安直すぎる、絶対違うぞ


「ゴホ…!!何度説明したら分かってくれるんすか、はぁ…!ウマコじゃなくて、ジャンヌフェイバリット13世です…!」


ほら見ろ、馬の名前すごっ


「ウマコは自分の嫁さんの名前だって何度も言ったっすよね。いい加減…覚えて下さい…!」


あんたの嫁さんウマコなの!?


紛らわしいな…


「あれ?そうだったかね?では、いつだか言っていたザベスホーキンスちゃんというのは?」


「自分の娘です。2歳の」


嘘だろ?あんた自分の娘に何て十字架背負わせてんだよ


俺だったら物心ついた瞬間に病むぞ



「それでどうしたのかね、そのジャンヌなんたらと言うキミの馬は?」


「マサアキくんが本日旅立つのだよ。いつものように積み荷を運ぶついでにモンバルまで送ってほしいのだが」


俺の方がついでかよ


「それが…いきなりザベスホーキンスちゃんが熱を出しまして、薬もないからウマコがジャンヌフェイバリット13世を使って隣町の病院まで……」


待て待て、何言ってんだよあんた?

訳がわからん、ようするに馬が熱を出したのか?

「熱を出したのはザベスホーキンスちゃんっす!」

「ん?ザベスホーキンスちゃんは馬かね?人かね?」

「人っす!自分の娘って言ったじゃないすか!」

やば、こんがらがってきた。あんたの奥さんは何世だったっけ?

「何世でもないっす!ウマコ!シンプルウマコ!」

「あれ?となると君の嫁さんは馬かね?人かね?」

「人に決まってるでしょう!どんな疑問すか!?_」

でもだってウマコなんだろ?

「ウマコっすけどしっかり人っす!」

「つまりは馬にも奥さんにも逃げられたのね」

「そういうシーンもドラマにあったな母さん」

「えぇ…今ならウマコさんの気持ちも分かるわ」

「いや逃げられてないっすけど!?なんすかあんたら!?ややこしくなるから話の輪に入って来ないでくださいよ!!」


入って来なくても十分ややこしいだろうが



「え~…と、まとめるね。話を要約するとキミの娘が熱を出してキミの嫁さんが隣町の病院まで馬を連れて出掛けたから居ない、と言う事でいいのかね?」


「そうっすよ…さっきからそう言ってるじゃないすか」


「うむ、聞いたかねマサアキくん?どうやら馬車は無理なようだ。すまないが歩いて行ってもらうしか無いね」


マジかよ…


まぁいいよ、別にあてにしてなかったし


歩いて行──

「待ってくださいよ!」


あん?


「それじゃあ自分何のために来たかわからないじゃないすか!!」


そうだな、何しに来たんだあんた?


「勿論この荷車に乗ってもらってジャンヌフェイバリット13世の代わりに自分が運ぶ為っす!」


「なんと?キミに嫁さんの代わりが務まるというのかね?」


「ジャンヌフェイバリット13世は馬っす!!いい加減にしないと殴り倒しますよ!!」


マジでいい加減にしろよ。いつまでやんだこのやりとり



「自分体力には自信があるんす!モンバルまでっすよね?余裕っすよ!」


さっきはぁはぁゴホゴホ言ってなかったか?


「う~ぬ…どうするマサアキくん?彼もこう言っているようだしお言葉に甘えると言うのは」


本気で言ってんのかよ…

なんか変にガタガタ揺られて酔いそうだしな

それに馬ならともかく人に引かせるという事自体が無理矢理従わせてるみたいで気が進まない


「お願いします!!この仕事をやらないとお給料が発生しないんす!!家族を食わせていくためなんす!!頼みます!!なるべくあなたの言う通りにしますから!!遅かったらむちでも何でも叩いてくれて構いませんので!!」


おいやめろ。本格的に俺が悪役みたいじゃねぇか


「自分の事は本物の馬だと思ってくれていいっす!!お願いします!ヒヒィ~ン!ヒヒィ~ン!!」


必死なのか?バカにしてんのか?


「必死なんす!ヒヒィ~ン!」


はぁ…分かったよ


「マジすか!ありがとうございます!!ヒッヒィ~ン!」


ただしそれはやめろ。無性にシバきたくなる



──よっ…と…これでいいか?


「ゴホ…!!はい…後は落ちないようにゴホ…ゲハ…!!しっかり…はぁ…!!掴まって…!!オエェェェ!!」


おいおいおい!体力ないとかっていうレベルじゃねぇぞ!

まだ乗っただけでどんだけ息切らしてんだよあんた、大丈夫か?


「大丈夫…す…!心配しないでください…ほら、自分の事は馬だと…ヒュー…ヒュー…」


いや鳴き声虫の息なんだけど、降りるよやっぱり


「はぁ…!大丈夫…っす!!自分まだ走れるっすよ!!どうか…降りないで下さい…!」


まだ走れるって一歩たりとも走ってないだろうが


「自分の事より…村の人達に最後の挨拶しなくていいんすか?もう…出しますよ?」


……あぁ…



「「「勇者……」」」


皆、行ってくる

きっとまた帰ってくるよ


「「「………」」」


……もういいぞ、行っても


「ゴホ…!簡単っすね…いいんすか?」


あぁ、いいんだ


さっき何度もシミュレーションしたはずなのに改めて別れを言おうと思うとなんだか照れ臭い


出してくれ


「わかったっす…ふん…!!…ぐおォォォ…!!」


グラグラ…!
【人力車は少しずつ動き出した!】

お、おい…あんま動いてねぇぞ。やっぱりすげぇ揺られるし、本当に大丈夫か?


「だ…だ…大丈……夫…っす…一回…動き出せば……あとはこっちのもん…なんで……あれ?雪降ってきたっすか?」


雪?降ってねぇよ

「おかしいっすね…目の前が真っ白っす」

視界ハジけてんじゃねぇか、どこが大丈夫だよ



「ま、待ってください!」
「待ってくれ!」

っ!?ちょっと…ちょっと止めてくれ!


ギィィッ…!!
【人力車は緊急停止した!】

「うっぷ…!?ちょ……勘弁…してくださいよ…これ…動き出す時と…止まる時が一番……しんどいんすから」


父さん、母さん…

「「マサアキ…」」


「ふ…ふざけてるんすか?そんな親子が見つめ合うだけならさっきいくらでもやる時間も機会もあったっすよね?用がないなら不用意に止めないでください…!」

「気持ちは分かるっすけど、早く行かないと今日中に着かなくなるかもしれません。手向けの言葉なら手短にお願いするっすマサアキさん」


あぁ

…行って来るよ、父さん、母さん


「約束しなさい…絶対に…絶対に生きて帰ってくるのよ?そうじゃなきゃ許さないからね!?」


母さん…

またドラマでそういうシーンでもあったのか?


「そんな訳ないでしょう…バカ息子」


ははは…!

絶対に生きて帰ってくるよ。母さん


「約束だ、必ずや生きて帰ってくるのだぞ…!そうじゃなきゃ断じて許さんからな?」

父さん…


「いやそれたった今あなたの奥さんが言ったっすよね?…言葉選んで下さいよどうせなら」


あぁ…絶対に生きて帰ってくるよ。父さん


「なんなんすかこれ?いりました本当に?」



悪かったな急に止めて

出していいぞ


「簡単に言わないでくだ…さい…!!ふっぐ…!!」


ギ…ギィ…
【人力車は少しずつ動き出した!】


「ゼェ…ゼェ…!うっ…ゴホ…ゴホ…!!さて…では…い…行くっす──」

「あの、待って!」

止めてくれ!


ギィィッ…!!
【人力車は緊急停止した!】

「ウオェェェェ…!!ゲホ…ゴホ…!!はぁ…はぁ…!チッ…!」


村娘…


「ごめんなさい…旅立つ前に一つ忠告しておこうと思って」


いやいいよ、なんだ?

「良くないっすよ…!動き出す前に忠告してください…!!」



「前に教えたあの技だけど、覚えてる?あれあんまり使っちゃ駄目だからね?ここぞって時だけにしなさい。いいわね?」


あの技?

あぁ…あのしんどいのか


「あなたが魔王に対抗するために必要不可欠な手段だけど、未熟なあなたが乱用すればたちまちあの世行きよ。覚えておいて」


心配しなくても使わねぇよ。あんな発動する度いちいち走馬灯が駆け巡る技なんか


「それならいいわ。気を付けて行ってらっしゃい」


ああ

「もういいっすかマサアキさん!?早くしてください!!」


おっと、もう行くみたいだ

じゃ、行って来るよ


「絶対に生きて帰って来てね。約束よ」


あぁ…絶対に生きて帰ってくるよ


「クドクドと何回同じやりとりしてんすか。絶対に帰ってくるためにまずは村を出ましょうよ!当たり前の事を言わせないでください!」


悪いな、本当にもう出していいぞ


「本当に悪いと思ってるんすか?」


思ってるよ。次はノンストップで行こう


「皆さんも!もうマサアキさんに伝えたい事ありませんよね!?あるなら今のうち言って下さい!」


「「「………」」」


「……よし、ふっん…!ぬあぁァァ…!」

ギィィ…!
【人力車は少しずつ動き出した!】


「ゼハァァァ…!体が軋むっす…!はぁ…!けど…よ、ようやくモンバルまで…」

「待ちたまえ」


ここから大体どれくらいでモンバルに着くんだ?


「はぁ…!馬車なら…4〜5時間で着くんすけど…自分の足となると…軽く見積もっても丸一日…てとこっすかね?」


そんなにか!?ヤバイなそれ…


「えぇ…自分心配っす…マサアキさんがモンバルに着くまでに退屈しないか」


いやその前に俺は無事に着くのかが心配なんだけど

「待ちたまえ」


「それに関しては大丈夫っす…ちゃんと責任持って送り届けてみせるっすから」


やる気あるのは良いけどよ、辛かったら言ってくれよな


「交代して…くれんすか?」


どうしてそうなる

休憩挟んで貰っても構わないって話だ


「わかったっす…ありがとうございます」


「絶対に…生きて帰ってくるのだぞマサアキ君よ」

ブォォォォォ!!
【村長はほら貝をつかった!】


「では今度こそ行きましょう」

ああ、頼む

【マサアキは村を出た!】



「──ついに行った…か」


「パパ最後完全に無視されてたわね。娘として心が痛かったけどあれはないわ」


「なぁに、おそらく照れ臭かっただけだろう」


「流れ的に違うと思うけど…」


「それに例え聞こえていなくとも私が伝えたかった事は彼の胸にきちんと届いているからね」


「それすらも丸々被ってたわよパパ、大丈夫?」


「心配いらないさ、彼ならばきっと魔王を倒してくれるよ」


「そんな心配じゃなくてパパ自身が……いや、もういいわ」


これは俺の独りよがりだからな、もしも手を貸してくれるような奴が居たとしても巻き込むつもりはない


「……本当に大丈夫かしら…無理しないと良いけれど」


〜To be continued〜

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