仲俣暁生

編集者。物書き。破船房房主。「マガジン航」編集人。大学教員。その他もろもろ。下北沢から…

仲俣暁生

編集者。物書き。破船房房主。「マガジン航」編集人。大学教員。その他もろもろ。下北沢から阿佐ヶ谷に転居しました。

マガジン

  • 「マガジン航」【note分室】

    • 1本

    本と出版の未来を考え、実践する「マガジン航」のnote版です。試験的に課金コンテンツなどの運用をしてまいります。

記事一覧

『もなかと羊羹』のPDF版を先行発売しています。

noteにも転載した昨年秋の「軽出版者宣言」が春から思わぬ反響を呼んだので、私の編集者としての個人史と、破船房で本を何冊か出してみた経験を踏まえた小さな本をつくりま…

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「不連続に橋をかける」

 2002年にこの本の初版が出たときは、ブログでたくさんの人が話題にしてくれた。その中でも忘れ難いのが、「不連続に橋をかける」という題のエントリーを書いてくれた方の…

 仲俣暁生
3週間前
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雨季と乾季のバラッド 星野智幸論

 1     「文学」あるいは「近代文学」は終った、という物言いは決していまに始まったことではないが、ここ数年とみにためらいなしに口にされるようになった。だが、よ…

 仲俣暁生
1か月前
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二十二年後のあとがき(2024年)

 本書は2002年に朝日出版社よりCulture Studies シリーズの一巻として刊行された『文学:ポスト・ムラカミの日本文学』の改訂新版です。オリジナル版のタイトル表記にはシ…

 仲俣暁生
1か月前
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アクキーをつくってみた。

本にも推しグッズがあってもいいじゃないか、ということで、まもなく復刊する『ポスト・ムラカミの日本文学』の装丁をつかったアクリルキーホルダーを先行販売します。文学…

 仲俣暁生
1か月前
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『ポスト・ムラカミの日本文学』はじめに(2002)

 つい最近、家の近くの古本屋で、大学一年生くらいの若い男の子が連れの女の子に向かって、村上春の『風の歌を聴け』か村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が読みたいん…

 仲俣暁生
1か月前
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『失われた「文学」を求めて』を破船房オンラインストアで著者直販します

なんちゅうかね、あまりいまこういう言い方、流行らないけれど、私は私なりにペンの力(いや、キーボードの?)で戦ってきたつもりなんですよ。2016年に文芸評論の仕事を「…

 仲俣暁生
2か月前
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破船房から新刊です(正確には新装版)

 仲俣暁生
2か月前

軽出版は「腱」である

 本が動かなくなったなら、新しいものを出せばいいんじゃないか、くらいの軽いノリで出した『その後の』、この週末で40/100が売れたので、神保町PASSAGEへの出荷用10を合…

 仲俣暁生
2か月前
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オンラインで本が売れるということについて

 BASEで久しぶりに『橋本治「再読」ノート』が売れた。本の売れ方というのは本当に不思議だ。ドカドカと売れるときがあるかと思うとパタッと止まり、またポツリポツリと売…

 仲俣暁生
2か月前
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「そこから始めるしかなかった世代」のための文学史と政治史

 『橋本治「再読」ノート』の売れ行きが落ち着いて来たので、この夏はまず『ポスト・ムラカミの日本文学』の復刊にとりかかる。橋本治は生前、自分と同世代の村上春樹や村…

 仲俣暁生
2か月前
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【第三版出来】

本日、『橋本治「再読」ノート』第三版第一刷400部が無事納品されました。週明けからの出荷分はすべて第三版になります。試みにこの版から表紙のマットコート紙を135→180…

 仲俣暁生
2か月前
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unlearnとしての軽出版

 軽出版などというプチbuzzword化した言葉をつかっていると、ナカマタさんはもう何十年も編集や出版の世界でやってきたのだから、いろんなことを知っているでしょう、なの…

 仲俣暁生
3か月前
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政治と文学と橋本治

 『橋本治「再読」ノート』を本にしてよかったのは、自分がやってきた仕事(編集、文芸批評、教育)が一つの形になったことだけれど、それだけでなく、文学や絵画について…

 仲俣暁生
3か月前
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【7/4まで期間延長】謝恩SALEのご案内

【謝恩SALEのご案内】発売開始から2ヶ月を記念して6/18から7/4まで、BOOTHおよびBASEの長谷川オンラインストアにて『橋本治「再読」ノート』第二版を1000円+税にて販売し…

 仲俣暁生
3か月前
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トークイベントのご案内【6/24 Mon. 外苑前】

来週の月曜日、6月24日に軽出版についていま考えてることを全部話します。時間は19:00- 、会場は外苑前のFlat Base。リアル参加(FLAT BASE) 1,000円(税込)、オンライ…

 仲俣暁生
3か月前
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『もなかと羊羹』のPDF版を先行発売しています。

『もなかと羊羹』のPDF版を先行発売しています。

noteにも転載した昨年秋の「軽出版者宣言」が春から思わぬ反響を呼んだので、私の編集者としての個人史と、破船房で本を何冊か出してみた経験を踏まえた小さな本をつくりました。題して『もなかと羊羹ーーあるいはいかにして私は出版の未来について心配するのをやめて軽出版者になったか』。【入稿直前に初期案に戻しました】

10月初めに印刷版を発売予定、PDF版はすでに先行販売がはじまっています。破船房初の文庫本

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「不連続に橋をかける」

「不連続に橋をかける」

 2002年にこの本の初版が出たときは、ブログでたくさんの人が話題にしてくれた。その中でも忘れ難いのが、「不連続に橋をかける」という題のエントリーを書いてくれた方のことだ。

 この本は村上龍、村上春樹の登場によって起きたそれ以前の日本文学との間の切断と、この二人のあとの現代文学の展開について書いた長いエッセイなのだが、切断を強調し過ぎたかな、と思っていたけれど、そこに「橋をかける」こと、つまり架

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雨季と乾季のバラッド 星野智幸論

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 「文学」あるいは「近代文学」は終った、という物言いは決していまに始まったことではないが、ここ数年とみにためらいなしに口にされるようになった。だが、よく考えてみるとわかるとおり、ここで意味されている「文学」あるいは「近代文学」とは、言葉による表現すべてを指すわけでもなければ、近代という時代における文学という意味でさえない。
 日本でいう「文学」あるいはそのほぼ同義語である「近代文学」と

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二十二年後のあとがき(2024年)

二十二年後のあとがき(2024年)

 本書は2002年に朝日出版社よりCulture Studies シリーズの一巻として刊行された『文学:ポスト・ムラカミの日本文学』の改訂新版です。オリジナル版のタイトル表記にはシリーズ中のジャンル区分である「文学」が含まれ煩雑なため、当時から『ポスト・ムラカミの日本文学』の略称を用いていましたが、今回の版ではこの略称を正式な題名としました。また英語のサブタイトル、Japanese Literat

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アクキーをつくってみた。

アクキーをつくってみた。

本にも推しグッズがあってもいいじゃないか、ということで、まもなく復刊する『ポスト・ムラカミの日本文学』の装丁をつかったアクリルキーホルダーを先行販売します。文学フリマなどの即売会などで示していただければサービスいたします!

『ポスト・ムラカミの日本文学』はじめに(2002)

『ポスト・ムラカミの日本文学』はじめに(2002)

 つい最近、家の近くの古本屋で、大学一年生くらいの若い男の子が連れの女の子に向かって、村上春の『風の歌を聴け』か村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が読みたいんだけど、置いてないかなあ、と話しかけているのを見かけました。
 女の子のほうはそれほど関心がなかったようで生返事をしていましたが、男の子はしばらく店の中でその本を探していました(残念ながら、そこの古本屋では見つからなかったようですが)。

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『失われた「文学」を求めて』を破船房オンラインストアで著者直販します

『失われた「文学」を求めて』を破船房オンラインストアで著者直販します

なんちゅうかね、あまりいまこういう言い方、流行らないけれど、私は私なりにペンの力(いや、キーボードの?)で戦ってきたつもりなんですよ。2016年に文芸評論の仕事を「再起動」させたのはトランプ政権の発足が大きかったし、その前には「2015年安保」の失敗があった。政治と文学の関係をわりと真面目に考えて、「新しい政治小説」に期待した。

でも、その後に出てきたのはある意味で「古い政治小説」ではなかったか

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軽出版は「腱」である

軽出版は「腱」である

 本が動かなくなったなら、新しいものを出せばいいんじゃないか、くらいの軽いノリで出した『その後の』、この週末で40/100が売れたので、神保町PASSAGEへの出荷用10を合わせて半分が行き先が決まった。通販で月内にあと20-30は行くと見て、週明けに増刷をかけることに決定です。軽出版ならではの即断、即決。 
 破船房の名義で最初におそるおそる出したブックレットが立派になって復刊できただけでうれし

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オンラインで本が売れるということについて

オンラインで本が売れるということについて

 BASEで久しぶりに『橋本治「再読」ノート』が売れた。本の売れ方というのは本当に不思議だ。ドカドカと売れるときがあるかと思うとパタッと止まり、またポツリポツリと売れる。そしてまたドカドカ、パタッ、ポツリ。シーンと静まったように動かない日が3日も4日も続くと、あぁ、もうこれで飽和状態で二度と売れないのか、と天を仰ぎたくなるが、またそのうち、少し動いたりする。
 リアルタイムで売上がわかるオンライン

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「そこから始めるしかなかった世代」のための文学史と政治史

「そこから始めるしかなかった世代」のための文学史と政治史

 『橋本治「再読」ノート』の売れ行きが落ち着いて来たので、この夏はまず『ポスト・ムラカミの日本文学』の復刊にとりかかる。橋本治は生前、自分と同世代の村上春樹や村上龍から再スタートする現代文学に積極的な意味を見出し、「そこから始めるしかなかった世代のための文学史」が必要だと書いていた。私はそれをいま書き下ろしで書いているのだが、正直、書きあぐねている。それで、とりあえず瑕瑾も多いが愛着もあるこの本を

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【第三版出来】

【第三版出来】

本日、『橋本治「再読」ノート』第三版第一刷400部が無事納品されました。週明けからの出荷分はすべて第三版になります。試みにこの版から表紙のマットコート紙を135→180に上げました。「ノート」から少し「本」っぽくなったかも? この版からのお取り扱い開始も歓迎します!

unlearnとしての軽出版

 軽出版などというプチbuzzword化した言葉をつかっていると、ナカマタさんはもう何十年も編集や出版の世界でやってきたのだから、いろんなことを知っているでしょう、なのにどうして、あるいは、それだからできるんじゃないですか、というようなことを、ときどき聞かれる。私にとって自分で商品をつくって売る経験は、初めてではないにしてもアマチュアとしての経験のみで、おもな仕事としてやってきた雑誌編集やライター

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政治と文学と橋本治

政治と文学と橋本治

 『橋本治「再読」ノート』を本にしてよかったのは、自分がやってきた仕事(編集、文芸批評、教育)が一つの形になったことだけれど、それだけでなく、文学や絵画について考えるのは、最終的には自分たちの社会のあり方、つまり「政治」を考えることなんだと、橋本治はずっと言い続けてきたのを確認できたことにある。
 私は選挙が家業でもあるような特殊な家に育ったので、自分の家族ができてからも、選挙のあるたびに呆れられ

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【7/4まで期間延長】謝恩SALEのご案内

【7/4まで期間延長】謝恩SALEのご案内

【謝恩SALEのご案内】発売開始から2ヶ月を記念して6/18から7/4まで、BOOTHおよびBASEの長谷川オンラインストアにて『橋本治「再読」ノート』第二版を1000円+税にて販売しています。(限定100部、在庫がなくなり次第終了)

https://hasenbo.base.shop/items/85751775

トークイベントのご案内【6/24 Mon. 外苑前】

トークイベントのご案内【6/24 Mon. 外苑前】

来週の月曜日、6月24日に軽出版についていま考えてることを全部話します。時間は19:00- 、会場は外苑前のFlat Base。リアル参加(FLAT BASE) 1,000円(税込)、オンライン参加800円(税込)です。本の販売も行います。よろしくお願いいたします!