仲俣暁生

編集者。物書き。破船房房主。「マガジン航」編集人。大学教員。その他もろもろ。下北沢から…

仲俣暁生

編集者。物書き。破船房房主。「マガジン航」編集人。大学教員。その他もろもろ。下北沢から阿佐ヶ谷に転居しました。

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  • 「マガジン航」【note分室】

    • 1本

    本と出版の未来を考え、実践する「マガジン航」のnote版です。試験的に課金コンテンツなどの運用をしてまいります。

最近の記事

BASEで予約開始しました

【お知らせ】BASEにて『橋本治「再読」ノート』の予約販売を開始しました。 ※定価販売です。BOOTHで先行発売したPDFの割引券は使えません。

    • 入稿を終えて

       ウェブで1年連載したときは、反応はほぼゼロ。いつか手直しして本にしたいと思っていたら、千木良さんの評論が文學界に出て、本にもなり、柳沢健さんが待望の評伝を連載し始め、神奈川近代文学館での展示も始まった。  それで私も、とにかく人の目に触れて評価を受ける(つまり批判をしてもらう)ために形にしておこうと、推敲と編集にとりかかったのが3月のこと。  でも印刷して売るには、場所がいる。たとえ100部でも、5冊ずつ20の書店に置いてもらい、売れたらお金を回収するというのは、やってみる

      • 朗報です

        神奈川近代文学館で開催中の「帰ってきた橋本治展」会場での『橋本治「再読」ノート』のお取り扱いについて、前向きのお返事を文学館様からいただきました。会期中のみの発売です。発売開始の時期が正式に確定したらまたご案内差し上げます。印刷、急ぎます!

        • 少し長いあとがき

          *5月に刊行する『橋本治「再読」ノート』(破船房)から、「あとがき」を転載します。  橋本治さんについて、いつか一冊の本を書かなければならないと思っていた。  この本は(私が定義した)橋本治の「中期」に書かれた評論的エッセイを中心とする著作についての、試論までも行かない読書ノートである。ちゃんとした橋本治論にするためには「前期」と「後期」についてそれぞれ相応の分量の文章を書かなければならないし、小説作品にも触れなければならない。でもそれを書き上げるにはまだしばらく時間がかか

        BASEで予約開始しました

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        • 「マガジン航」【note分室】
          1本

        記事

          軽出版者宣言

           「軽出版」という言葉をあるとき、ふと思いついた。  軽出版とは何か。それは、zineより少しだけ本気で、でも一人出版社ほどには本格的ではない、即興的でカジュアルな本の出し方のことだ。何も新しい言葉をつくらなくても、すでに多くの人がやっていることである。にもかかわらず、私自身にとってはこの言葉の到来は福音だった。  ことの始まりは2023年春の文学フリマ東京36だ。このときの文学フリマで私は、インディ文芸誌『ウィッチンケア』をやっている多田洋一さんのブース「ウィッチンケア書店

          軽出版者宣言

          『橋本治「再読」ノート』プレスリリース

          『橋本治「再読」ノート』プレスリリース

          橋本治『小林秀雄の恵み』書評

          以前に『新潮』に載せてもらった橋本治『小林秀雄の恵み』の書評が発掘されたので、『橋本治「再読」ノート』の販促をかねてnoteに転載します。編集段階の校閲を経ていない草稿であることをご承知おきのうえお読みください。      *   *   *  それを批評と呼んでも評論と呼んでもいいのだが、人が何かを対象として、とことん「考える」という営みが、ひどく貶められる世の中になってしまった。批評や評論など無用である、という意見がとくに異論もなく通ってしまう時代に、あらためて「考える

          橋本治『小林秀雄の恵み』書評

          新著『橋本治「再読」ノート』を破船房レーベルから「軽出版」します。

          5/19の文学フリマ東京38で即売予定の『橋本治「再読」ノート』の印刷部数を決定する際の参考にするため、同書のPDF版の先行販売をBOOTHにて行っています(価格は700円、4/30までの予定)。著者との対面販売時に印刷版を割引価格で購入できる割引券付きです。 破船房オンラインストア on BOOTH https://booth.pm/ja/items/5659294 印刷版は予価1400円+税、無線綴じ80ページです。 委託や買切りで販売してくれる書店、古書店、イベン

          新著『橋本治「再読」ノート』を破船房レーベルから「軽出版」します。

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          新著を破船房レーベルから「軽出版」します。

          新著を破船房レーベルから「軽出版」します。

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          21世紀に書かれた「百年の名著」を読む―第4回 阿部和重『シンセミア』

           小説家の想像力は、しばしば現実の出来事を先取りする。小説の役割は未来予測ではないが、世界のありかたを深いところから理解することで、結果的に未来を言い当ててしまうのだ。  情報技術の進展とグローバル化が急速に進む二一世紀の世界にあって、人間の意識にも大きな変化をもたらすこうしたモチーフを意欲的に小説に盛り込み、文学作品のあり方自体にも大きな革新を起こしてきた作家が阿部和重である。しばしば予言的ともいうべき作品を生み出してきた彼の代表作『シンセミア』を、本連載でとりあげる最初の

          21世紀に書かれた「百年の名著」を読む―第4回 阿部和重『シンセミア』

          1983年の廃墟とワンダーランド――橋本治という未完の「小説家」について

           橋本治という「小説家」について語るのはむずかしい。現代を遠く離れた時代を舞台にした『窯変源氏物語』『双調平家物語』という二つの大河作品を完成させた後、近年に文芸誌に相次いで掲載された『巡礼』『橋』『リア家の人々』などの作品にみられる橋本治と、『桃尻娘』シリーズをはじめとする、1980年までの「現代小説」の橋本治とが、多くの人の中でうまく重ならないからだ。  「小説家」としての橋本治の不思議は、「近代文学」を明確に否定しつつも、頑としてポストモダニズムには流れない、という一点

          1983年の廃墟とワンダーランド――橋本治という未完の「小説家」について

          「想像力」よりも「小説的思考力」を

           本稿は「出版人・広告人」という雑誌で筆者が2年以上連載を続けている文芸時評「文学へのリハビリテーション」の第26回として執筆したものです。しかし残念ながら同誌は定期購読のみで市販されておらず、この文章を読める人はきわめて限られています。  私は今回の「新潮」と「新潮45」そして文学の役割と責任についての議論は公共性をもつものと考えており、この文章のネットでの同時公開を同誌編集部に打診したところ快諾を得ました。そこで、同誌掲載の文章をそのままnoteにて公開することにしました

          「想像力」よりも「小説的思考力」を

          道の名前――下北沢ノート②

           東京都内で何度も転居するうち、道の名前に敏感になった。何しろ同じ名前の道にあちこちで出会うのだ。分かりやすい例で言うと、たとえば環状七号線(カンナナ)という道路がある。西南地区の大田区臨海部から東南地区の江戸川区臨海部まで、東京の近距離郊外をぐるりとめぐる都道である。もともとは東京が市制を敷いていた一九二七年(昭和二年)に計画されたもので、一九八五年に全線がようやく開通した。  かつての私にとってカンナナとは、都心から東側に向かって走ると必ずどこかで交差する、葛飾区と江戸

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          道の名前――下北沢ノート②

          生まれた町でもなく、そこで育ったのでもない町について語るということ――下北沢ノート①(承前)

          避難所としての町と店 二十世紀の終わりに、都内での十度目の転居の結果、下北沢の町に転がり込んできたとき、私は少々疲れていた。昔風の言葉でいえば神経衰弱である。ここに住もうという強い意志があったわけではなく、いわば消去法だった。調子の狂った自分の人生を立て直すために、しばらくこの町で骨休めしようと考えたのだ。  ただし一つだけ、下北沢に住もうと考えた積極的な理由があった。それは二十世紀から二十一世紀への変わり目を、断絶ではなく継続の相で見たい、という気持ちだった。下北沢の北口

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          生まれた町でもなく、そこで育ったのでもない町について語…

          生まれた町でもなく、そこで育ったのでもない町について語るということ――下北沢ノート①

           15年前から、下北沢という東京南西部の小さな町に住んでいる。この文章はこの町に住みながら、町について考え、人に出会い、話をしたことについて記録するフィールドノートとでもよぶべき試みだ。  この原稿の執筆は2008年に行われた。初出は春秋社のPR誌「春秋」である。とくに断りがないかぎり、時制は執筆時のままとお考えいただきたい。以下、連載時の四回分を随時公開しつつ、そのあとは書き下ろしで現時点での「ノート」をつづけてみたいと考えている。  町を語る言葉の不在から 下北沢は大

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          生まれた町でもなく、そこで育ったのでもない町について語…

          下北沢ノート、まもなく配信します。

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