21世紀に書かれた「百年の名著」を読む―第4回 阿部和重『シンセミア』
小説家の想像力は、しばしば現実の出来事を先取りする。小説の役割は未来予測ではないが、世界のありかたを深いところから理解することで、結果的に未来を言い当ててしまうのだ。
情報技術の進展とグローバル化が急速に進む二一世紀の世界にあって、人間の意識にも大きな変化をもたらすこうしたモチーフを意欲的に小説に盛り込み、文学作品のあり方自体にも大きな革新を起こしてきた作家が阿部和重である。しばしば予言的ともいうべき作品を生み出してきた彼の代表作『シンセミア』を、本連載でとりあげる最初の