今夜、高円寺でお待ちします

 本を自分でつくって売る、いわゆる「軽出版」を始めてみてよかったなと思うことはいくつかある。思いがけなく本が売れてくれることは、もちろんうれしいが、それ以上に、本を売ってください、とお願いしたり、読んでくれた方から手紙が来たりと、本を介した人との繋がりができたことだ。 
 これまでも本を書いて来たし、私の本を長く置いてくれる仲のよい本屋さんもいた。でもそれは、まだ、著者としての関わりでしかなかった。本づくりも売ることもすべて出版に委ね、書くだけの立場だった。
 そこから見える風景は、とても狭い。本を作り、在庫を抱え、売れないかもしれない本を置いてもらうために、本屋の都合も考えて営業する。本が傷つかないように梱包し、無事に届いたか心配し、届いた後は、大船に乗った気持ちで販売を委ねる。そうした視野がひらけて来たことが、軽出版、つまり自分自身も出版者、スモールパブリッシャーになることの、最大の意味だと思う。
 サプライチェーンなどと言わなくても、モノが作られて、売れるまでの流れを一気通貫で知ることは、社会を生きる大人になるために必要なことだろう。
 ネットのいろんな断片化した言説に惑わされ、バラバラになってしまった意識と体と言葉に一体感を取り戻すためにも、軽出版をやることを、ある程度の経験のある人には勧めたい。だって、経験もない人たちがひと足先に、軽々とやっているのだから。

 今夜の高円寺でのトークも、橋本治の話であると同時に、こんなことを話してみたいと思っています。文フリでは、短い立ち話しか出来ないので、ゆっくり話したい人は気軽に来てください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?