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政治と文学と橋本治

 『橋本治「再読」ノート』を本にしてよかったのは、自分がやってきた仕事(編集、文芸批評、教育)が一つの形になったことだけれど、それだけでなく、文学や絵画について考えるのは、最終的には自分たちの社会のあり方、つまり「政治」を考えることなんだと、橋本治はずっと言い続けてきたのを確認できたことにある。
 私は選挙が家業でもあるような特殊な家に育ったので、自分の家族ができてからも、選挙のあるたびに呆れられるくらい熱中してしまう。支持する候補が当選するか否かより(ほとんど当選しない。あるいは、そもそもいない)、なぜ日本人の多数派はいまこの選択をしたのか、というメタレベルに興味をもってしまう。
 いままででいちばん不思議だったのは、2009年に鳩山民主党が地滑り的に勝利を収めたことで、あれはまだ、たったの15年前のことなのだ。あの頃に生まれた子供にはまだ選挙権はなく、60だった人もまだ75でだいたい生きてる。つまり、そんなに大きく有権者の構成は変わっていないのに、なぜ「かつて一度は民主党に票を投じた人が、その後のリベラル勢力に批判的なのか」という、第一に考えられて然るべきことへの答えが示されていない。
 都知事選の結果は、おそらく次の衆院選の結果と、あまり関係ないだろう。小池知事が再選されたとしても、国政での自民党への批判や幻滅は少しも減りはしない。でも、もし政権交代が近いうちに起きるとしても、それは2009年の再来ではない。ではどうしたらよいのかについても、『橋本治「再読」ノート』に書いてある。だからぜひ、この本を選挙の前に読んでほしい。

 橋本治はなぜ、『江戸にフランス革命を!』を書いたのか。私はそのことを、昭和の終わりからずっと考え続けている。


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