そーいち

好きなものは読書と映画と音楽。驚くような記事を書いてみたいが実行は出来ないアヒルさん。…

そーいち

好きなものは読書と映画と音楽。驚くような記事を書いてみたいが実行は出来ないアヒルさん。他で書き切れなかった内容を綴っていく。主に読書感想文。

最近の記事

短編の楽しみと長編の楽しみどちらも堪能の7月

もう読む前から面白いだろうと分かってしまう小説がある。それは個人的な好みにどんぴしゃりとはまるような小説だ。例えば伊坂幸太郎の陽気なギャングシリーズがそれにあたる。要はチームで協力して犯罪をおかす、愉快な作品が大好きなのだ。ドナルド・E・ウエストレイクの「ドートマンダー」シリーズもそうだ。というか陽気なギャングはここからの派生であることは間違いないから面白いのは確定だ。物語は単純明快。主人公の犯罪プランナー、ドートマンダーが小粋な仲間と犯罪を企てるのだが不運によりさらに面倒な

    • 「雪が降る」に驚嘆の6月

      藤原伊織著の「雪が降る」が良い。めちゃくちゃ良くてベスト短編の1つに加わった。 ことのキッカケは「推理作家になりたくて」というアンソロジーから。こちらのアンソロジーは日本推理作家協会所属の面々が自身おススメの短編+敬愛している作家の短編を加えてさらにエッセイまで追加しているボリューム満点の作品集。その3巻を6月半ばに読んだ。掲載の作家がまた豪華だ。逢坂剛、大沢在昌、北方謙三、黒川博行、真保裕一の5名。薦めている作家は平井和正、生島治郎、吉行淳之介、藤原伊織、向田邦子の5名。師

      • 相性の良い山本周五郎賞受賞作品発表の5月

        5月は山本周五郎賞の発表月。直木賞よりも自分的に相性が良いので毎回気になっている。加えて候補作の多くを読んでおりどれが受賞するか予想することも出来る。楽しいものだ。 その関係で候補作で読めていなかった萩堂顕「ループオブコード」を読む。400ページ2段組と膨大ながら楽しめた。帯にはあの「虐殺器官」と並びという文言もある。伊藤計劃の傑作として名高く私も読んだが難しい点も多かった。あのテイストかぁ、と考えたのだが、いやいやエンタメに寄っているので読みやすかった。スリラーと医療ミステ

        • 本屋大賞翻訳部門受賞作をタイミングよく読んだ4月

          久しぶりの更新。 今回は4月に読んだ本の中で何作かをピックアップ。 まずは翻訳ミステリ。 クリスウィタカーの「われら闇より天を見る」様々なレビューであげられているが主人公のダッチェスがとびきりに良い。無法者と自称し強く生きていこうとする様に感情が揺さぶられる。ボタンの掛け違いで悪い方へ進んでいく物語なのだが、ここまで好転しないのも珍しい。それだけにラスト1行の感動は素晴らしく、ようやく読んだ意味があったと思えた。 もう1作はロジャーホッブスの「ゴーストマン 時限紙幣」で

        短編の楽しみと長編の楽しみどちらも堪能の7月

          君嶋彼方「夜がうたた寝してる間に」

          10月も終盤。個人としては9月から今までの業務に加えて新たに覚えることが出来たので中々時間が取れなくなっている(前回も書いたか?)読書はペースも変わらず順調に?読んでいる。最近は某書評動画の影響で短編小説を読む割合が増えており、雑誌掲載の分も時間に余裕があれば読んでいる。今回の紹介はその派生といった感じ。 君嶋彼方さんである。彼は第12回小説 野性時代新人賞で昨年デビューされた新しい作家でデビュー作の「君の顔では泣けない」は昨年大変有名になった。この作品は男女の入れ替わりを

          君嶋彼方「夜がうたた寝してる間に」

          北山猛邦「千年図書館」

          残暑が厳しい。そんな中、職場の事務所のクーラーがいかれてしまった。見てもらうと室外機の故障、とのこと。修理代は新品を買うのとほぼ変わらない値段らしい。じゃあ、ということで新品を買う流れになっているのだが、どちらにせよ早く買ってもらいたいものだ。冬になってしまうよ。 さて、読書。今回は北山猛邦さんの「千年図書館」を読む。ノベルス版だ。文庫では題名が変わり「さかさま女子のためのピアノソナタ」に変更された。独立した短編集でどちらも収録されている。 北山猛邦さんは「クロック城殺人

          北山猛邦「千年図書館」

          我孫子武丸「探偵映画」

          8月も終了し、世間一般では上期最後の月となる9月。個人的にも部署を掛け持ちになり忙しさは倍増しそうな勢い。そんな中でも読書のペースは堅調で11冊を読むことが出来た。8月最後の読書記録は再読本。我孫子武丸さんの「探偵映画」である。 我孫子武丸さんといえば「殺戮に至る病」に代表されるように陰惨でダークな作風をまとった印象の作家。いわゆる新本格ミステリ作家の第1次世代(綾辻さんや有栖川さんなど)でデビュー作の「8の殺人」などはガチガチの新本格であった。そこから作風を広げていき、先

          我孫子武丸「探偵映画」

          岡嶋二人「タイトルマッチ」

          岡嶋二人作品を全部読むシリーズ。密かに実施している好きな作家の作品を全部読む、という読書。現時点で3名の方で実施中である。「連城三紀彦」「今邑彩」「岡嶋二人」の3名。共通している点は既に存命ではなく(岡嶋さんは除く)新刊が出ないということ。ファンとしては非常に残念なのだが、増えないためゆっくりのペースでもいずれか全部制覇出来るのが良い。 さて、今回の岡嶋二人さんだが、他の2名とは毛色が異なる。というのも著者の岡嶋さんは「徳山諄一」と「井上泉」両名によるコンビ作家なのである。

          岡嶋二人「タイトルマッチ」

          紀蔚然「台北プライベートアイ」

          翻訳ミステリの自分の中での立ち位置が好調である。読みたい本がどんどん湧いてくるし、気力もある。以前に比べ訳文も気にならなくなった。この調子で後は古典と呼ばれるとこへ触手を伸ばしていければ。そんなことを思いつつ、今回は「台北プライベートアイ」を読む。昨年の作品じゃないか(笑)まあしょうがない。台湾発のハードボイルド探偵小説、ということで気になってたのだから。作者は紀蔚然(き・うつぜん)最近流行りの華文ミステリーということだ(厳密には台湾だが) さて、内容はこんな感じ。著名な演

          紀蔚然「台北プライベートアイ」

          大沢在昌「漂砂の塔」

          大沢在昌さんの「漂砂の塔」を読む。大沢さんは今年2冊目。「パンドラアイランド」を3月に読んだところだか、養分が足りなくなってきたので(笑) で、何故にこの本なのかというと、本人もおっしゃられているが、大沢作品は孤島ものに縁がある。先の「パンドラアイランド」では柴田錬三郎賞を「海と月の迷路」では吉川英治文学賞を受賞している。前者は東京の遥か南の架空の島で後者は軍艦島が舞台だ。その孤島もので最近の作品が本作の「漂砂の塔」評判もまずまずだし個人的にも好きなタイプなのでこちらを手にと

          大沢在昌「漂砂の塔」

          ヨルン・リーエル・ホルスト     「警部ヴィスティング 鍵穴」

          個人的な読書の傾向として、「偏らない」というのがある。これは連続して同じジャンルや同じ作者の本ばかりを読むのが得意ではない、ということ。基本、ホラー以外は読めないジャンルの本は無いので周期的に読むようにしている。その中で密かにブームが来ているジャンルに関しては回ってくるペースが速い、という感じ。ただそればっかりをずっと読むのではなく、ミステリーを読んだらSF、次に青春小説・・・みたいな流れになる。そんな中で個人的に最近のブームは翻訳ミステリ。海外ミステリを紹介している動画を見

          ヨルン・リーエル・ホルスト     「警部ヴィスティング 鍵穴」

          荻原浩「噂」

          仕事とプライベートとバタバタしているが読書は何とか順調に出来ている。というか読書以外していないのだが。とうことで荻原浩さんの「噂」を読む。直木賞作家でもある荻原さん。守備範囲が広く優しく笑えるものからブラックでハードな物まで書き分けられる、荻原さんだが、今作まで未読であった。初荻原さんとなった作品の「噂」はブラック荻原の代表作。噂が現実となるサイコサスペンスである。 こんな話。ある化粧品のキャンペーンとして女社長が生み出した方法。渋谷の女子高生たちに口コミでその化粧品(ミリ

          荻原浩「噂」

          安野貴博「サーキット・スイッチャー」

          安野貴博著「サーキット・スイッチャー」を読む。著者のデビュー作であり第9回ハヤカワSFコンテストの優秀賞を獲得した作品だ。選評委員の講評を読むと大賞を獲得した「スター・シェイカー」よりも完成度が高く、すぐにでも作品になるとのこと。SFサスペンスという面白そうな設定であったために期待しながら読んでみる。 こんな内容。2029年の近未来。完全自動運転が可能となった世界でそのシステムを開発した科学者であり、サイモン社の代表でもある坂本義晴は仕事場の自動運転車内で襲われ拘束されてし

          安野貴博「サーキット・スイッチャー」

          佐藤究「爆弾処理班が遭遇したスピン」

          佐藤究さんの爆弾処理班が遭遇したスピンを読んだ。直木賞作家の佐藤さんが出版した初の短編集だ。個人的に佐藤さんは初読み。直木賞作品「テスカトリポカ」や江戸川乱歩賞の「QJKJQ」が有名でアウトローの世界で生きる犯罪小説を得意にしている作家というイメージ。あまり触れるタイプではないのだが、クオリティが非常に高いと好評で読める環境にあったため読んでみた。 以下、収録作品 「爆弾処理班が遭遇したスピン」                  「ジェリーウォーカー」          

          佐藤究「爆弾処理班が遭遇したスピン」

          芦辺拓「大鞠家殺人事件」

          芦辺拓さんの「大鞠家殺人事件」を読む。芦辺さんは本格ミステリを生み出し続けている鮎川哲也賞の第1回の受賞者だ。今回初めて氏の本を読んだのだがイメージでは本格ミステリと幻想やSF、ファンタジーなどの掛け合わせで読ませる作家かと思っていた。森江シリーズがそこの部類に入るかと。また、パティーシュものもよく書かれているイメージ。本作に関してはそういう掛け合わせはなく、純粋な戦中時代の本格ミステリという感じ。昨年に刊行され、新たな代表作となりえる、と評判で、実際に昨年度の日本推理作家協

          芦辺拓「大鞠家殺人事件」

          紺野天龍「シンデレラ城の殺人」

          あっという間に梅雨もあけて7月。暑い季節がやって来た。世間は何かとバタバタだが、個人的にはやれることをやっていくだけということで。 さて、読書。紺野天龍さんの「シンデレラ城の殺人」を読む。紺野さんはラノベ作家出身なのだが、ある時期よりミステリーに傾倒するようになり最近注目されるようになった作家だ。以下、あらすじから。 始まりはよく知っているシンデレラなのだが、まずシンデレラの性格が違う。家族に虐げられてはいるのだが、口が達者なため減らず口で対応する(家族も見逃している)勝

          紺野天龍「シンデレラ城の殺人」