短編の楽しみと長編の楽しみどちらも堪能の7月

もう読む前から面白いだろうと分かってしまう小説がある。それは個人的な好みにどんぴしゃりとはまるような小説だ。例えば伊坂幸太郎の陽気なギャングシリーズがそれにあたる。要はチームで協力して犯罪をおかす、愉快な作品が大好きなのだ。ドナルド・E・ウエストレイクの「ドートマンダー」シリーズもそうだ。というか陽気なギャングはここからの派生であることは間違いないから面白いのは確定だ。物語は単純明快。主人公の犯罪プランナー、ドートマンダーが小粋な仲間と犯罪を企てるのだが不運によりさらに面倒な事態に巻き込まれていく。これが繰り返されるのだから最高に楽しい。陰のドートマンダーと陽の相棒、ケルプの掛け合いなど会話文も面白く流石はウエストレイク。好みだわ~

さて、他にも7月に読んだものから短編と長編を1作ずつ。真保裕一「ストロボ」これはある写真家の生涯を50代から20代へと巻き戻していく連作の短編集。全編に死が絡んでおり、泣かせるとともに夫婦の物語として完成度が高い。またがむしゃらに仕事に満身する1人の男のお仕事小説としても読める。死が絡むのは好みではないのだが、泣けるものは泣けるのでしょうがない(笑)

長編は大沢在昌さんの人気シリーズ「狩人」から1作目の「北の狩人」こちらは大長編ながら例のごとくサクサク読める。父の死の真相を探りに新宿へやってきた主人公が出会うアナーキーで暗黒に満ちた世界。新宿を舞台にするのは大沢さんお得意だが見せる目線が違う点が大きい。純な青年である雪人を通じての新宿はかなり歪んでみえる。そこが面白い。脇を固める昔気質のヤクザ宮本や圧倒的な悪の新島の存在感がでかい。このシリーズも追っかけなければならんな。


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