紺野天龍「シンデレラ城の殺人」

あっという間に梅雨もあけて7月。暑い季節がやって来た。世間は何かとバタバタだが、個人的にはやれることをやっていくだけということで。

さて、読書。紺野天龍さんの「シンデレラ城の殺人」を読む。紺野さんはラノベ作家出身なのだが、ある時期よりミステリーに傾倒するようになり最近注目されるようになった作家だ。以下、あらすじから。

始まりはよく知っているシンデレラなのだが、まずシンデレラの性格が違う。家族に虐げられてはいるのだが、口が達者なため減らず口で対応する(家族も見逃している)勝気な性格な面もあり、その後訪れる魔女に対してもけんか腰で面白い。滑り出しは上々。物語の展開としては原作と同じになるのだが、いい雰囲気となった王子が2人でいる際に殺されてしまったから大変。シンデレラは裁判にかけられることに。その後はリーガルミステリーへと変貌し、特異の減らず口で相手の揚げ足をとり無実を証明しようと奔走するというのが流れ。ミステリーとしては会話の些細な違和感やミスをついて真相に迫っていくわりとしっかりとしたものになっている。真相からエピローグに至るまで丁寧に伏線も回収し出来は良いと思える。

ただそれ以上に気になるのは、あのリーガルミステリーゲームの名作にインスパイアされまくっている点。主人公はもとより対峙する裁判官のクロノアは完全にあれだし、犯人もをあの方を彷彿とさせる。そこに気を取られてツッコミながら読んでしまったが、内容は面白い。シンデレラのキャラが受け入れられるのであればOKな作品だと思う。

紺野さんを調べていくと中々に面白いことが分かった。元々、ミステリー好きだったのだが、ライトノベルではあの「トリックスターズ」を非常に好みにしていただとか。それを聞いてなるほど、と合点がいった。

先ほども書いたが全体的にライト(ラノベ出身だけあって)な読み口だが、ミステリ部分は本格的。リーガルミステリーものの変化球的作品だが面白いと思えた。

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