佐藤究「爆弾処理班が遭遇したスピン」

佐藤究さんの爆弾処理班が遭遇したスピンを読んだ。直木賞作家の佐藤さんが出版した初の短編集だ。個人的に佐藤さんは初読み。直木賞作品「テスカトリポカ」や江戸川乱歩賞の「QJKJQ」が有名でアウトローの世界で生きる犯罪小説を得意にしている作家というイメージ。あまり触れるタイプではないのだが、クオリティが非常に高いと好評で読める環境にあったため読んでみた。

以下、収録作品

「爆弾処理班が遭遇したスピン」                  「ジェリーウォーカー」                       「シヴィル・ライツ」                         「猿人マグラ」                          「スマイルヘッズ」                         「ボイルド・オクトパス」                                     「九三式」                                            「くぎ」

全部で8編収録されている。書下ろしはなく、基本的に雑誌に収録されたものばかりだが、様々な雑誌、そして特集が組まれた際に書かれている。大まかな感想だが、非常に密度の濃い作品ばかりであった。冒頭で書いたように犯罪小説を主とする方なのかな?と思っていたが、どっこい多岐のジャンルに渡って描いていて驚いた。帯にはミステリ×SF×化物という文言が書いてあるが、それだけではない。凄い作家だなあ、とただただ実感。                            何篇か説明する。まずは表題作。これが一番評価も高く、完成度という点でも優れているだろう。テーマはミステリ×ハードSF。ざっくりいうと爆弾処理班が解体する爆弾は量子力学の原理においてコントロールされており、それを破ってしまうと爆発する、という理系人間ではない私にはちんぷんかんぷんな物語。しかし佐藤さんは結構嚙み砕いて説明文を挟んでくれるので、何とか理解をしつつ読み進めることが出来た。ラストの展開は奇怪すぎて舌を巻く。どうやって思いつくんだ、これ。                  江戸川乱歩特集の際に書かれたのは「九三式」という話。江戸川乱歩が生きた時代をベースに戦争帰りの男が遭遇した、ある仕事とは。読み終えてクラクラするラストで好みであった。                   個人的に一番好きだったのは「シヴィル・ライツ」ヤクザものなのだが、組の経営が思わしくない所から始まる貧乏話。そこから若頭の暴走を如何に食い止めるかという流れになるのだが・・・これは正統派のタイプ。ながら危機を回避する際に活用する方法が面白すぎる。どうやって思いつく、それ?というレベル。

といった感じばかりなのだが、どの話も内容的に被りが無くジャンルも多岐に渡っている。文章が乾いた感じで犯罪小説の印象を受けるが粘っこいのもありハマると抜け出せなくなりそうで怖い。いずれ長編にもチャレンジせねば。


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