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井創灯
2020年7月31日 09:16
玄関脇に置かれた青空を凝縮した様な薄い花瓶には定期的に入れ替えられた花が活けられている。この花には一日の中で感じた瑣末なストレスを、玄関で一度リセットする目的の為だと江美がいつか話していた。市内で薬剤師として働いている江美はそんな習慣のせいか仕事先での愚痴を家の中でこぼすことは無かった。不安を抱え重苦しい息遣いの客もいるだろう。何かの拍子に心無い言葉が自分に向けられることだってきっとあったは
2020年7月26日 22:14
テーブルに優しくカップを置くと俺に微笑みかけた江美は昨日の洗い物の残りを片付けに台所へ戻った。淹れてくれた暖かなコーヒーをゆっくりと飲みながら、昨夜買ってきたばかりの大判の写真集を眺める。表紙には断崖からの海原がパノラマの様に撮影された白黒写真があり、下の方に SHUN TODO と鋭角な書体で綴られていた。東堂瞬。もうずっとこの人の事を俺は追いかけている。今国内外を問わず様々な媒体で話題の