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【語り会#01】怪異こそホラーだ

 新しい記事のテーマを考えた。題して『語り会』だ。何か語りたいことができた時にこのサブタイトルを使っていこうと思う。

 第1回は『怪異こそホラー』である。

 ホラーと言っても、ジャンルはさらに分岐する。

 怪談、サイコ、パニック、スプラッタetc……

 そう分けられるが、僕は怪談いわゆる怪異こそがホラーだと思う。

 一番怖いのは人間だなんて聞くけれども、されど人間。殺人鬼もサイコパスも所詮は人間。同じ生命体で実体を持つ。

 しかし怪異は実体を持たない。目に見えない。何者かわからない。
 人間は未知のものに恐れを抱く。怪異はまさに恐怖の要素がそろっているのだ。


 僕は小さい頃から怪談が好きだった。『怪談レストラン』シリーズはよく図書館で借りて読んでいたし、テレビアニメも怖がりながら見た記憶がある。
 好きなくせに怖いものだから、『リング』などの本格ホラーにはなかなか手を出せずにいた。

 だから、そこらに手を出し始めたのは比較的最近のことだ。

 中学生頃から角川ホラー文庫の掌編ホラー集のようなものは読んでいたが、映画『のぞきめ』が公開された時にその原作小説を読んでみた(まだ観に行く勇気はなかった)。

 辺鄙な貸別荘地を訪れた成留たち。謎の巡礼母娘に導かれるように彼らは禁じられた廃村に紛れ込み、恐るべき怪異に見舞われる。民俗学者・四十澤が昭和初期に残したノートから、そこは“弔い村”の異名をもち“のぞきめ”という憑き物の伝承が残る、呪われた村だったことが明らかとなる。作家の「僕」が知った2つの怪異譚。その衝撃の関連と真相とは!?何かに覗かれている―そんな気がする時は、必ず一旦本書を閉じてください。

 得体の知れない恐怖というのはやはり他の恐怖に比べて怖く、読んだあとはしばらくクローゼットの隙間を見ることができなかったのはここだけの話。ぜひ映画もいつか観たいと思う。

 同一作者の作品をもう一作読んでやはり怪異ものはいいなと思いつつ、ついに2018年の冬、初めてホラー映画を観に劇場へ足を運ぶ。

 それが澤村伊智の『ぼぎわんが、来る』を原作とした『来る』。

   幸せな新婚生活を送る田原秀樹のもとにやってきた、とある来訪者。そこから秀樹の周辺では後輩の不審死、不気味な電話など恐ろしい出来事が相次ぐ。愛する家族を守るため秀樹は比嘉真琴という霊能力者を頼るが!?

 友人と観に行ったのだが、まあとにかく怖かった。怖いけど、日本ホラー特有の怪異がだんだん近づいてくる感じがすごく良かった。観ながらやっぱりこれがホラーだよなと思っていた。

 大掛かりな除霊シーンも迫力満点で祓うという演出も怪異ホラーでしか味わえないものだ。

  またこの作品に限っては、比嘉姉妹というキャラクターも魅力的で、鑑賞後すぐに原作本を買いに行った。

  どうやら霊媒師比嘉姉妹はシリーズ化しているらしく、別の作品も読んでみたいと思った。


   そんなこんなで自分でもホラー小説を書くという経験をしながら月日がたち、『来る』を観に行った友達とまたホラー映画を観に行った。

 自殺の名所として世間に知られ、心霊スポットとなった樹海。かつて人々を恐怖に陥れた強力な呪いが、樹海の奥深くに封印された。それから13年後、封印されたはずの呪いが復活し、とある姉妹に忍び寄る。そして樹海でも、謎の行方不明事件が次々と発生し始める。

 ポスター写真にもある通り、「犬鳴村」に続く恐怖の村シリーズ、第2弾。その第1弾『犬鳴村』は別の友人と観に行く予定だったが、定期テストやら模試やらで行けなかったので初村シリーズとなる。

 この作品は『来る』に比べて、おどろおどろしいというよりも神聖さを感じた。森が舞台であったり、樹が何かと鍵になったりするせいだろうが、やはり得体の知れない何かが危険を及ぼすという怪異的要素は共通だ。

 怪異ホラーとの比較として、最近見た『キャラクター』の感想も書こうと思う。

 厳密にはホラー映画に分類されないと思うのだが、殺人鬼映画であることに間違いはない。

漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾。高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……そして、彼らの前に佇む一人の男。事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。山城は売れっ子漫画家となり、恋人の夏美とも結婚。二人は誰が見ても順風満帆の生活を手に入れた。しかし、まるで漫画「34」で描かれた物語を模したような、4人家族が次々と狙われる事件が続く。刑事の清田俊介は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることを不審に思い、山城に目をつける。共に事件を追う真壁孝太は、やや暴走しがちな清田を心配しつつも温かく見守るのだった。
そんな中、山城の前に、再びあの男が姿を現す。
交わってしまった二人。
山城を待ち受ける“結末”とは?

 個人的には☆5評価の映画なのだが、これをホラーとして見ようとすると別に怖くはないようなあと思ってしまう。要は殺人鬼が人を殺しまくる映画。怖いと言うよりもグロいという気持ちが大きい。不気味でもないし、得体の知れない何かでもない。

 殺人鬼にせよ呪いにせよ、死が恐怖に直結することは確かだ。

 だけど物理的に殺されるのと呪い殺されるのは根本的に違うと僕は思うのだ。理由が主観的なものしかないが、心のぞわぞわ感が違う。例で言うと、観賞後一人でいることが怖くなるかならないかとか。

 だから恐怖を与えるホラーは怪異に限るというわけだ。


 これが結論だが、ついでに最近読み終えたホラー小説の紹介もしたい。

 澤村伊智『ずうのめ人形』。『ぼぎわんが、来る』に続く、比嘉姉妹シリーズ第2弾だ。

 オカルト雑誌編集部で働く藤間が受け取った、とある原稿。読み進めていくと、作中に登場する人形が現実にも現れるようになり……。4日後に迫った死を回避するために、呪いの原稿の謎を解け。鬼才が放つ正統ホラーミステリ!

 十分怖かったが、正直『ぼぎわんが、来る』よりも怖さ控えめだったのが残念なところ。とはいえ、比嘉真琴というキャラクターが自分の中で性癖に刺さっているので終始楽しめた。

 現実にあるホラー作品が作中で登場していることからリアリティもあり、恐怖度は文句なしに並以上。しかも主題は日本人形の都市伝説。じわじわと迫り来る恐怖を体感できる最高の話だった。

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