農家の独り言

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僕の写真の現在地

- 生命の本質 - 生命とは何か。その問いに対する答えは意図する文脈によって様々です。 科学という枠組みの中でも、その答えは変わってくるでしょう。 そう踏まえた上で物理学の観点から紐解けば、生命とは『永続性能を有した自律システム』と言い表せます。 つまり、生命とは生物の一個体ではなく、生物圏を創ることで維持されているセントラルドグマそのものと考えられます。 そのセントラルドグマの永続性は、徹底したリスクヘッジにより担保されています。 世界中のあらゆる場所まで生物個体が入り込

    • 春の収穫事情

      先日、ビニールハウスに寒冷紗を掛けました。寒冷紗とは日光を遮る黒いシートのことで、ハウス内の気温を下げる目的で使われています。毎年、4月に入ると寒冷紗の出番がやってきます。外の気温が20℃前後まで上がると、ハウス内の気温は40℃に達することも珍しくありません。椎茸栽培における最適気温は25℃前後なので、気温を下げる必要があるというわけです。 以前は5月連休頃に掛けていたそうです。けれども現在は4月の中旬が目安。3月の下旬でも掛けたいと思うことはあり、ここら辺にも気候変動の影

      • 写真と比率と美しさ

        投資を経験した過去があります。20代の頃、2ヶ月分くらいの資金を元手に株式投資。四季報を読んで、毎日は日本経済新聞を閲読しました。当時は株式分割バブルの真っただ中。軍資金は少なかったのですが、半年で5倍ほどの含み益を。そのときに利確しとけばよかったのですが、徐々に利益は減っていって、気が付けば元金割れ。僕は投資に向いていないことが分かりました。 それでも良い経験をできたと思っています。若いうちに投資の正と負の面に触れられたことは本当に良かったです。ある程度の知識も身につける

        • 僕と椎茸の関係性

          十勝は夜空もきれいです。自宅でも満天の星を眺めることができ、車で5分も離れれば天の川も。夜は外出する機会も少ない方ですが、星空に気付くと、すこしのあいだ足を止めて魅入ってしまいます。子供の頃、親がプラネタリウムによく連れて行ってくれたおかげか、星座や惑星にも興味があって、ついつい夜空で確認作業を。オリオン座の三ツ星からベテルギウスを確認して、そこからシリウスを目印に冬の大三角を経て北斗七星を。そこから北極星を挟んでカシオペア座。冬はそんな動線で空を眺めてしまいます。 星空が

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        僕の写真の現在地

          知識からの贈りもの

          春は原木しいたけ栽培にとって難しい季節です。露地栽培による春と秋の年2回の収穫を期待する栽培方法なら問題ないのですが、季節を問わずに365日の収穫を期待する栽培方法ですと、春が一番に厳しい季節となってしまいます。というのも、発生可能な榾木の在庫が無くなう恐れがあるからです。森で休ませている榾木はあるのですが、発生可能になるのは十勝だと5月の中旬ごろ。栽培スケジュールを組んでいても、上手くいかないのは生物が相手だからでしょうか。そして、すこしのズレが増幅されて春の不作気味が生ま

          知識からの贈りもの

          ステートメントを考える

          『君なら大丈夫かもしれないね』。そんなニュアンスの言葉を複数人の方達から頂いてスタートした新規就農。ありがたいと思う一方で、その言葉を紐解けば、この町を歩んだ産業のストーリーも朧気に垣間みれます。それに加えて僕の特異な部分を指しての言葉なのだろうとも感じ取ってしまいました。単純作業の繰り返し。農業には欠かせない作業スタイルも、度を過ぎると異質に見えたのかも知れません。僕は前職でもその作業は経験していたので、取り組み方は慣れたもの。そんな、毎日毎日、機械のように働く姿に強い違和

          ステートメントを考える

          2024.03.30

          『かわいいですね』 これも皆さんからよく頂く言葉です。SNSではもちろんのこと、イベント時も展示した椎茸を見てそう口にするお客さんは多かったです。軸のことを足と呼ぶように、きのこには人の姿を想像させる節があると思います。古くから妖精と紐付けて語られることも多かったきのこ。『菌輪(きんりん)』と呼ばれる輪状に発生する現象も、『フェアリーリング』という名前が付けられています。それらも「かわいい」と思ってしまう理由のひとつかも知れません。 ところで、「かわいいと思うものは?」と

          2024.03.12

          ※これは公式サイトに載せる文書の下書きです。 『形が悪くても味は変わりませんか?』 これもお客さんからよく頂く質問です。結論から言うと『味は変わりません』。ただ、劣化が早かったり、一度の収穫で変形の量が多かったときは味が落ちることもあるので、一概に『変わらない』とは言い切れなかったりもします。 そもそも、なぜ変形した椎茸が生まれるかと言いますと、理由は大きく分けて2つあります。ひとつは発生環境によるもの。椎茸が榾木から生えてくるときに、隣の椎茸とぶつかったり、原木や棚な

          2024.03.08

          僕が地域おこし協力隊員になる前、現場では前任の方が活動されていたのですが、その前任の方と僕の間にも、協力隊員を希望されてる方はいらっしゃったそうです。聞いた話によると面接時に辞退されたとか。 理由は「絵を描きたい」という要望が通らなかったから。ミスマッチの多い制度の中、事前に不具合が露呈した事例ということで、肯定的に評価された一方で、すこし勿体ないと思ってしまったのが僕の感想。もしかしたら、絵を描くことで地域起こしに繋がる算段があったのかもしれないから。それに加えて、いくら

          2024.03.02

          椎茸は美しいキノコです。より良い食材にこそ、その美しさは宿るもの。必要な手間を、必要な時間を、必要な想いを、掛けた分だけ旨味は増し、美しさにも磨きがかかります。 ところで、その美しさとは何か。疑問は残ります。「生命の神秘」や「自然の造形」などでは間違いではないと思いつつも、いささか抽象的で言葉足らずな感覚も覚えてしまいます。一体僕はキノコに何を見せられているのでしょうか。 「生命の神秘」も丁寧に紐解けば、生き物は自律した永久機関のような仕組みにも見えます。ここに居ることの

          2024.02.29

          ※これは公式サイトに載せる文章の下書きです。 就農したての頃、とあるプロジェクトの発足を数人で話し合いました。町の原木しいたけ栽培文化の再興計画。このままでは廃退の一途は確実という考えの元で再興戦略案を出し合っていました。 結果から言うと計画は白紙に。そもそも矢面に立てる人が不在でした。僕も矢面に立てなかった内のひとり。やはりプランを出せる人は多くても、プレイヤーになれる人はいなかったというわけです。 これからの農家は主人公になれるプレイヤーが強いと言われている昨今。小

          2024.02.16

          ※これは公式サイトに載せる文章の下書きです。 直売所を閉めてから随分時間が経ちました。それでも当時のお客さんからは稀に今でも連絡が入り、椎茸を買ってくれてます。そんな注文が立て込む時期は5月連休、お盆休み、年末年始。長期の休みになると離れたご家族も戻ってくるようで、そのときのもてなしに当農園の椎茸を必要としてくれてます。「おいしかった」と言われることは嬉しいのですが、「喜んでくれた」はもっと嬉しかったりするのです。 けれども、口約束や暗算を用いる販売形態のため、トラブルも

          2024.02.12

          「転がる石のように」という言葉は好きだけれども、ロックバンドの文脈で語られるそれにはすこしの違和感もあって。常に動き回り、苔のむさない姿は、固定観念にとらわれず、思った通りに生きて行く自由の象徴。それを否定はしないけれども、僕の想う「転がる石のように」は、ただただ不安定から安定へ流れる存在の意。たしかに他とは違って動き続ける姿には自由の象徴を感じさせるけれども、その動力の源は転がろうとする内力ではなく、重力や水の流れによる外力。そう考えれば、人の行動も内力と思っていることでも

          2024.02.07

          ※これは公式サイトに載せる文書の下書きです。 『本当は目標の10倍くらい欲しいのでは?』 その質問は、実施したクラウドファンディングを取材して頂いたときのもの。さすが記者さんと思いつつも、本音は100倍くらいあっても困らないものでした。商売をするうえで、広告はとても大切なもの。それは農業でも変わりません。けれども巨額な広告費まで賄える売り上げをつくることは難しく。帰するところ、農業組合に販売のすべてを任せるか、もしくは費用の掛からないSNSでの発信となるわけです。 ただ

          2024.01.30

          先日、町のスキー場へ行ってきました。僕を誘ったのは、今年からスノボをはじめる予定の長男。学校の授業で滑る機会があるらしく、その前に上手くなっておきたいからとの理由で。ときは土曜の午後から。自宅から車で5分の場所にあるのは、新得山スキー場。この日はオープン初日ということで、無料のリフト代。そのため、駐車場とリフトはすこし混雑気味。それでもゲレンデは快適で、久しぶりのスキーとなりましたが、とても楽しむことができました。 身近な場所にスキー場がある暮らしは、それだけで幸せです。関

          2024.01.26

          ※これは公式サイトに載せる文章の下書きです。 先日、誕生日を迎えました。プレゼントは鉄のフライパン。数年前からIHのコンロを使いはじめて、フライパンもコーティングされたものに買い替えたのですが、あまりしっくり来なかったので、再び鉄のフライパンへ戻りたく、今回のプレゼントとなったわけです。 手を抜くと、新品でも焦げついてしまう鉄のフライパン。日々のお手入れが必要な道具。油のなじみ具合は使い手によって決まります。『鉄のフライパンは育てるもの』と言われていますが、ほんとその通り