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2024.03.02

椎茸は美しいキノコです。より良い食材にこそ、その美しさは宿るもの。必要な手間を、必要な時間を、必要な想いを、掛けた分だけ旨味は増し、美しさにも磨きがかかります。

ところで、その美しさとは何か。疑問は残ります。「生命の神秘」や「自然の造形」などでは間違いではないと思いつつも、いささか抽象的で言葉足らずな感覚も覚えてしまいます。一体僕はキノコに何を見せられているのでしょうか。

「生命の神秘」も丁寧に紐解けば、生き物は自律した永久機関のような仕組みにも見えます。ここに居ることの意味や理由、目的などはわからないけれども誰かはここに居続けます。

それは自然風景も同じこと。山や海、川や平地。ずっとここに在り続けています。その造形は自然現象によるもので、科学的に言えば物理法則に即したもの。誰かの意思で創られたものではなく、自律的に生まれたもの。そう考えれば「生命の神秘」と「自然の造形」は同じことで、つまりは「理(ことわり)の創痕」だと思うのです。

きっと僕らの感じる美しいは画一的。遠くの山々。どこまでも続く道。ゆるく弧を描く水平線。足元の石。公園の階段。ぬかるんだ轍。古びた看板。都会の路地裏。スタイルの良い女性。渋い仕草の男性。かわいい猫。無表情な昆虫。おいしそうな食物。自分の手。きらめく星空。すべてが同じ理由で美しいと。

それはそれは椎茸も美しいと。
そう思う今日この頃です。

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