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【SMDレポート/古川晴歌さん】コミュニティ運営に直結する気づきや学び。次のステージにむけて、背中を押してもらえた。

2019年〜2022年まで4期にわたって開催した「Social Mirai Design(SMD)」。これまでの取り組みをふり返り、SMDの活動や受講生の声をレポートにまとめました。この記事では、2020年(2期)に受講生として参加し、2021年(3期)・2022年(4期)には事務局として活動された古川晴歌さんの体験レポートをお届けします。

SMDとは
公益財団法人都市活力研究所」と「NPO法人co.to.hana」が主催する人材育成プログラム。各分野の第一線で活躍するゲスト講師によるセミナーやワークショップ、受講者同士の交流などを行い、ソーシャルデザインのマインド・実践知の修得や、同じ想いをもつ日本全国の仲間との「コミュニティ」の醸成などに取り組みました。

SMDに参加した背景・理由は?

SMDに参加した2020年当時、私はまちづくり関係の会社に勤めていました。具体的には、地方自治体から委託を受けて、住民のみなさんにアンケートやヒアリング、ワークショップを行いながら、誰もが暮らしやすい地域づくりを進めるための計画策定をする仕事です。

新卒から勤めはじめて13年。SMDを知った2020年春は、ちょうど育休を取得していた時期でした。仕事から少し離れて、これまでの活動を振り返りながらこの先について考えていた時に、ちょっとした違和感というか、気づきがあったんです。

もともと「まちづくり」には興味があり仕事はすごく楽しかったけど、改めて振り返った時に「私って本当に地域のことを考えたいんだっけ?」とか「本当に地に足のついたまちづくりになってないんじゃないか」と考えたりしていました。

前職まちづくり系のワークショップの様子

そんな時に、SMDを知りました。SMDに参加してみることで、地域やまちづくりの活動に興味があるのか、ないのかを見極めようと思ったんです。その上で、今後の活動のあり方を考えたいと思いました。

また、私はワークショップデザイナーという肩書きを持って仕事をしているのですが、「何の社会課題を解決したいのか?」という問いがこの数年ありました。その問いに対する答えを、SMDを通して見い出したいというのも、SMDに参加した動機のひとつです。

SMDを受講して得た気づきや学びは?

セミナーでは、講師の方それぞれにまちづくりやソーシャルデザインへの考え方が多様で、さまざまな気づきがありました。

例えば、ソーシャルデザインのあり方について「世のためではなく、自分の興味関心が動機にないと活動が続かない。無償でやるものではなく、対価としてお金は必要だ」というお話があったり。

私にとってソーシャルデザインは「世のため人のために無償でやらなければならない」という意識があり、そうじゃなくていいという意見に新鮮な驚きがありました。

SMDのセミナーを受講した時の古川さんのメモ

また、「コミュニティは絶対デザインできない。アソシエーションデザインなんだ」というお話も印象に残っています。

こうした講師の方々のお話に対して、受講生どうしのディスカッションの時間では、受講生それぞれに感じ方や視点が異なることがおもしろかったです。例えば、お話を聞いて感動した人もいれば、理解できないと言っている人もいたり。嫌な雰囲気にならずにフラットに意見を言い合える場がとても心地よく、今後の参考にもなりました。

「SMDに参加してみることで、地域やまちづくりの活動に興味があるのか、ないのかを見極めようとした」ことに関しては、地域へのかかわりや、まちづくりに対して、今の私はそこまでの興味や熱意を抱いていないという結論に至りました。

セミナーに登壇した人たちが実践されているようなことに、熱を入れてやってみたいと思わなかったんです。セミナーでは、地域に根付いてプレイヤーとして活動されている方もいれば、コンサルのような立場で地域にかかわっている方もいて、いろんな視点でまちづくりに関して話を聞くことができました。

だけど、どの立場だったとしても、皆さんと同じように地域に熱くなれない。地域を舞台に、これを熱くやってみたいという想いはあまりないと改めて実感しました。

もう一つ、「何の社会課題を解決したいのか?」という問いに対しては、私はワークショップが好きだけど、解決したいことがあるわけではないという考えに至りました。これはセミナーにおいて、「ワークショップは何かを解決するためではなく、自分がやりたいからやっている。自己目的化している」という講師の方のお話がヒントになりました。

最終プレゼンでは、約半年のプログラムを通して、私がやりたいことを言語化して発表しました。それがこちらです。

「活動するフィールドがソーシャルなのかどうか疑問はありつつも、仕事・家事・育児一色の人生ではなく、気軽に大人の学びにふれて気づきがあり、ワクワクな人生になるお手伝いをする」

抱えていた問いに対する答えを見出しながら、今後の方針やありたい姿を言語化できたこと。それはとても大きな一歩だったと感じています。

▽古川さんが記録・公開されている各回のSMDレポートはこちらから。
▶︎ソーシャルデザインを考える・行動する 第1回
▶︎「デザイン」の力を知る 第2回 山崎亮氏
▶︎楽しく続けることで地域経済を回す 第3回 矢口真紀氏
▶︎ワークショップの非日常性でポテンシャルを引き出す 第4回 安斎勇樹氏
▶︎アソシエーションデザインでひたすら周りを整えるまちづくり 第5回 寺井元一氏
▶︎答えのない問いに向き合う 第6回 中間ワークショップ
▶︎ほしい未来は自分たちでつくっていく 第7回 小野裕之氏
▶︎進化思考で創造性を発揮する 第8回 太刀川英輔氏
▶︎危機感と勇気がみんなの思考をドライブさせてくれる 第9回 新山直広氏
▶︎持続性ある"稼ぐ地域"にする 第10回 木下斉氏
▶︎多様な意見を聞いて考えが深まる 第11回最終ワークショップ
▶︎多様な未来を感じる Social Mirai Design 最終プレゼン

SMDの事務局に参加した理由・取り組みは?

おこがましくも、受講生として参加している時から「私がSMDを運営していたら、もっとこうするのに」と思うことが、いくつかありました。例えば、ブレイクアウトルームは違う人ともディスカッションができるよう意図的に割り振れたらなとか、事務局として参加している1期の人ともう少しかかわれたらなとか。もうちょっとSMDにかかわっている人たちの交流を促せたらいいのにと感じていたことがあり、事務局として参加してみようと手を挙げました。「社会人の学びの機会を、より充実したものにするお手伝いをしたい」という気持ちでした。

具体的には、3期のプログラムづくりから入らせていただき、「受講生どうしの交流や対話の機会を多くつくる」ことに注力しました。また、2期では最終プレゼンの実施率が全参加者のうち6割にとどまったというデータがあったので、脱落者を減らすこともテーマにありました。

特に私が中心となって取り組んだのは、プログラム全体の計画づくりや進行管理です。また、4期の運営にも初期だけ関わり、3期の反省を活かして参加者との細やかなテキストコミュニケーションを行いました。

▽古川さんが記録されているSMD3期事務局の振り返りレポートはこちらから。
▶︎コミュニティに想いを寄せる旅を終えて(Social Mirai Design事務局の振り返り)

SMDが、現在の活動にどう活きている?

2期として参加していた頃に時間を巻き戻すと、SMDのプログラムが最終回にさしかかった2021年の年明けあたりから、転職活動をスタートしたんです。その背景には、SMDを通して、まちづくりや地域へは本職以外でかかわりたいということ、そしてもっとワークショップを中心とした活動に軸足を移していきたいと心を固められたのが、大きなきっかけとしてあります。
「地域」というフィールドではなく、「大人の学びの支援」や「ワークショップ」をキーワードに転職活動をしていた最中、株式会社mogという会社に出合いました。
会社の代表から、当時SMDに参加していたことを含めて私に興味を持っていただけたようで、「新しくサービスを立ち上げるためにボランティアで手伝ってもらえないか?」とお声がけいただきました。それが、「ママボラン」という、ワーキングママが他社でボランティアをして、自身のキャリアを考えていくサービス。研修やワークショップなどのメニューもあり、まさに「大人の学びの支援」にピッタリで、SMD2期が終わったあたりからお手伝いさせていただき、2021年12月からは正社員としてサービス責任者を務めています。

ママボランのwebサイト

​ママボランのコミュニティ運営も行っているのですが、それがちょうどSMD3期の事務局として活動を始めた時期からスタート。たまたまSMD3期のテーマが「コミュニティ」だったこともあり、事務局としてSMDを運営し、プログラムに参加しながら得たことを、ママボランのコミュニティ運営に活かすという好循環が生まれていました。

活動のヒントになったことは、たくさんあります。例えば、運営側でアイデアは持っておくけど、あえて深めないで参加者と一緒に考えること。参加者への働きかけは「to all」ではなく、「個別」でアクションするほうが反応がいいこと。事務局が頑張りすぎてしまうと、参加者がお客さん意識になってしまうこと。連続講座って、終了後が本番なのかもしれないという気づき。
こうしたSMDでの気づきや学びが、ママボランのコミュニティ運営に直結していて、参加されている方からの手応えや反響もあります。

ママボランでのワークショップの様子

これからの活動の中で、大人が当たり前のように、自分の学びに時間を使える世の中になっていけばいいなと考えています。大人の学び場というと、一般的には大学に通うことやMBAなどをイメージしやすいと思うのですが、「気軽に学びにふれられること」が私の活動のテーマだと、SMDを通してさらに明確になりました。
ただ、SMD2期の最終プレゼンで言語化した「ワクワクな人生になるお手伝い」という言葉に対しては、まだちょっとしっくりきてない気がしています。この先も、SMDを通して得た気づきや学びを仕事に活かしつつ、「大人の学びの価値って何だろう」という問いに向き合いながら、方向性のブラッシュアップを重ねていく予定です。

各年度のSMDプログラムはこちら(報告書)からご覧いただけます。
第1期
第2期
第3期・第4期

あわせて、こちらのレポートもどうぞ。
【SMDレポート/後藤裕子さん】地域での活動、かかわり方。このまま進んで大丈夫って、背中を押してもらえた。

【SMDレポート/近藤裕未さん】自分の活動軸が見つかり、私たちらしいコミュニティづくりに向けて踏み出せた。

【SMDレポート/土持莉奈さん】得意なことも、苦手なことも。伸びしろを知り、成長につなげることができた。

【SMDレポート/田邊健史さん】人とのふれあいが途絶えたコロナ禍。自分とは異なる視点や気づきとの出合いを与えてくれた。

【SMDレポート/沖直子さん】私も、SMDに誘った大学生も。背中を押すきっかけに。

取材・文章  SMD2期受講生 西道紗恵

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