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【SMDレポート/田邊健史さん】人とのふれあいが途絶えたコロナ禍。自分とは異なる視点や気づきとの出合いを与えてくれた。

2019年〜2022年まで4期にわたって開催した「Social Mirai Design(SMD)」。これまでの取り組みをふり返り、SMDの活動や受講生の声をレポートにまとめました。この記事では、2020年(2期)に受講生として参加し、2021年(3期)には事務局として活動された田邊健史さんの体験レポートをお届けします。

SMDとは
公益財団法人都市活力研究所」と「NPO法人co.to.hana」が主催する人材育成プログラム。各分野の第一線で活躍するゲスト講師によるセミナーやワークショップ、受講者同士の交流などを行い、ソーシャルデザインのマインド・実践知の修得や、同じ想いをもつ日本全国の仲間との「コミュニティ」の醸成などに取り組みました。

SMDに参加した背景・理由は?

私は東京の文京区を拠点に、地域活動に携わる人のサポートをする「地域連携ステーション フミコム」の運営業務に関わっています。ここでは、地域で何か始めてみたい人や団体、企業の相談に応えたり、講座を企画・開催したり、事業や活動が促進されるような企業・団体のマッチングをしたりと、新たな担い手の育成や、新たなつながりを創出するための事業を展開しています。

たまたまSMDの事務局スタッフと知り合うきっかけがあり、SMDに興味を持ちました。2期の募集が始まったころは、ちょうどコロナ禍に突入したタイミング。それまで行ってきた「人と直接会う事によって事業を生み出してきた」スタイルで活動がしにくい状況を初めて経験しました。オンライン交流会やオンラインイベントなどでは得られにくい、自分とは違う価値観を持つ人と出会う場を探していたんです。SMDはまさに、当時の自分が一番求めていた場でした。さらに登壇する講師陣は、ソーシャルデザイン分野の第一線で活躍されている著名な方ばかり。著書を読んだり、講演会で話を聞いたことはあったものの、表舞台では聞けないような一歩踏み込んだ話を聞けるチャンスかもしれないと思い、参加を決めました。

SMDを受講して得た気づきや学びは?

「人は正しさだけではついてこない」という言葉が印象に残っています。これは、講師として登壇された山崎亮さんのお話です。山崎さんは、ソーシャルデザインやコミュニティデザインにかかわっている人なら誰もが知る著名な方ですから、なんとなく「キラキラ」したイメージがあったんです。

山崎さんがお話されたのは、「どれだけ正しいことを言っても、正しいことをやっていても、そこに関わる人が「楽しさ」を感じられなければ人は集まってこないし、継続する仲間もついてこない」ということ。第一線で活躍されている山崎さんでも、デザインの「本質」を見つめ「正しさ」の前に「楽しさ」を強調していると聴いてハッとさせられました。

私自身、ふだんの仕事や活動のなかで、地域を盛り上げようと尽力されている方々の相談を受けることが多いです。「社会課題を解決したい」って、とても大切なことだと思うけど、それだけでは真面目すぎるんじゃないか、と話を聞きながら感じる場面があります。そこに「楽しさ」が感じられないと、人は去ってしまう。自分が感じていたことを山崎さんが言葉にしてくださったので、私の考えは間違っていないんだなと思えました。

ふだんの活動の様子

SMDの事務局に参加した理由・取り組みは?

SMD3期の開催にあたり、事務局の方からのお誘いをきっかけに事務局として参加することになりました。これは私の考えなのですが、自ら「give」することによって「take」できるものもあると思っていました。ただ受講生としての参加に留まるよりも、運営側の視点をもって参加したり、運営サポートをすることで学ベることもあるのではという考えもありました。

3期の事務局スタッフとして、プログラムづくりから携わったのですが、特に私はプログラムがスタートしてからの受講生との交流に重点を置いて活動していました。これは、2期の受講生として参加していた時に感じた改善点が活かされています。

2期のプログラムでは、「講師の事例や考え方を聞く」機会が多く設けられていました。インプットの時間は豊富だったのですが、そこで得たことをアウトプットする場が限られていると感じていたんです。2期でも、受講生とのディスカッションの場は設けられていたのですが、受講生一人ひとりの一歩踏み込んだ考えや本音を知ることまでは難しくて。

「インプットのためのインプット」ではなく、受講生それぞれの活動に活きるような「アウトプットのためのインプット」でないと、インプットの質が上がらない。そうした考えから、私はプログラムの時間外に受講生一人ひとりと個別で対話する場を持ち、その人の本音や考えていること、SMDの先に見据えている未来などについて話し合いました。

実は、いち受講者として参加していた2期においても、同じようなことを行っていたんです。2期では大学生の参加者もいて、どうも社会人ばかりのコミュニティの中で「自分の知識がないことによる」萎縮しているように感じました。その方はさやかさんという方なのですが、私から「逆に知らないことを逆手にとって、じっくり話を聴く機会を創ってはどうか」と提案したことがキッカケとなったのか、プログラム時間外に「さやかの部屋」と題して、オンライン上でゆるく話し合う会を開いたり。

受講生として参加していた時も、事務局として参加した時も、「どうすれば場の価値を最大化できるのか」を考えて、自分の気づきを実践に落とし込んでいたように思います。

SMDが、現在の活動にどう活きている?

これは仕事や活動に直結している話ではないのですが、SMDを通してふだんは出合うことのないような領域で活動されている人たちや、自分とは異なる視点を持つ方々と交流できたのはよかったです。NPO関連や、地域活動をされているような方たちとは出合う機会が多いのですが、価値観や視点が異なる人との出合いは努力しないと手にできないと思うので、有意義な場でしたね。

もう一つ、これまで自分では気づいていなかった私自身の価値に気づくことができました。例えば、受講生の方から「田邊さんの計画力や分析力ってすごい」と言ってもらえたことがあって。正直、私は自分のことを計画性がないって思っているんです(笑)。でも、人から見ると「優れている」と評価してもらえた。

これは私に限った話ではないと思いますが、自分の価値に気づいていない人って多いと思うんです。他者との交流やかかわりを通して、自分の本質的な価値を知れたのは、とてもいい気づきだと思います。

冒頭でもお話したように、コロナ禍に突入して、人との交流や外出の機会がパタリとなくなってしまったんです。その時に、「自分はいったい誰の、何の役に立っているんだろう」と考えるようになって。

でもSMDヘの参加を通して、「自分はこれでいいんだ」って思ったんです。講師の方のお話や、受講生との交流、事務局の参加を通して自分のあり方に納得感を持つことができました。「これをやっておけば大丈夫」というような「正解」がない社会だからこそ、自分のあり方に対する納得感や、自分自身の価値を理解していることは大切だと思います。SMDはそれらの気づきを得るきっかけとなりました。

各年度のSMDプログラムはこちら(報告書)からご覧いただけます。
第1期
第2期
第3期・第4期

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