【architecture】ベネッセハウス|安藤忠雄

かつて、ここは製錬所の煙害によりハゲ山と化した島だった

このハゲ山をアートの力で世界中の人が訪れる島に生まれ変える

ひとりの熱狂が世界から注目される魅力ある島をつくりだした



直島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島である
この島を世界的に有名なアートの島として生まれ変わらせたのが、ベネッセコーポレーションの創業者の福武總一郎氏である
そして、その建築の設計を担ったのが建築家の安藤忠雄氏である

計画のはじめ、安藤氏は福武氏の提案に対し、「こんなハゲ山に人は来ない、こんなにアクセスの悪いところに人を呼び込むことは出来ない」と反対したそうだ

直島は香川県に属しているが、行くには高松空港まで行き高松港まてバスで移動して、そこからフェリー、もしくは岡山駅から宇野港まで電車で移動してそこからフェリーで行くことになるがいずれもアクセスが良いとは言えない

しかし、福武氏は諦めなかった

なんとしても直島をアートの力で復活させる
その情熱はとてつもないものだった
自ら世界的なアーティストに島で創作してもらうよう依頼して回った

そんな情熱に共感した建築家が遂に動き出す

建築家がまずはじめたのは設計ではない

島に木を植えることである

ベネッセの社員やボランティアと共に島の自然を取り戻すことからはじめたのだ

当然福武氏も木を植えた
福武氏は巨大企業のトップでありながら、島では農作業服に長靴を履いた普通のオジサンである
一見して大企業のトップとはわからない
しかしそれでいいのだ


島に木々が徐々に育ちはじめた頃、設計がようやくはじまった

その建築は、自らが主張することなく島に埋没するような美術館である

『ベネッセハウスミュージアム』は、滞在型のミュージアムで、アーティストはここに滞在しながら、ここにしかできないアートを創作する

アートが置かれるのは、建築内であったり海岸であったりアーティストの感性で決まる

草間彌生の有名な南瓜も瀬戸内海を背景に展示されている

島のあちこちに点在するアートは、島の風景と俄然一体化し、力強いメッセージをはなっている


美術館へは船で専用の港にアクセスする
(通常は利用していない)

そこから山を登りながら美術館へ向かうのだが
すでにここから安藤忠雄氏による美術館ははじまっている

『安藤建築の良さはアプローチにあり』

である

島に降り立ったそのときから物語は始まっているのだ

島を眺めながら徐々に登っていく
背後には美しい瀬戸内海の島々が見える

その道中にもアート作品がある

山の頂上付近の美術館の入り口が見えて来る

高い石垣を横目にここでさらに180度回転しさらにスロープを登ることになる
いい加減疲れてきたころである

しかしこの風景を見ると疲れは吹き飛ぶのだ
計算された配置で、島から海が一望できるところへ自然と誘導されていたのだ
そして絶景を眺めたら、さらに180度回転して美術館へと入ることになる

ここは敢えてゆるいスロープになっている
ここにも秘密があって、スロープはバリアフリーであるだけでなく、階段と違って足元を見ながら登る必要がない
必然的に人の視線は外の自然に向けられる
また緩やかに登ることで景色や美術館への期待が演出されているのだ

美術館内部はトップライトからの光や、あちこちから眺められる海が絶妙に設計されている

安藤建築もひとつのアートとして見てもらいたい

オーバルと呼ばれる楕円型の宿泊棟へは専用のリフトで向かうことになる
宿泊者のみ利用できる秘密のルートで向かうのだ

宿泊したことはないが一度だけオーバルは見学させてもらったことがあるが素晴らしい建築であった

詳しくはこちらのホームページをご覧頂きたい

直島は徐々に進化する島である
この美術館をはじめ、少しずつ美術館やアート作品が増えている

今もまだ進化の途中である

建築は完成したら終わりではない
建築が島や人々に溶け込んでいくことが大事であると建築家は話す

建築はすっかり島の木々に埋もれつつあるが、それでいいのだ
建築家はいずれ建築が見えなくなることを望んでいる


またこのアートによる島の再生は近隣の島々にも広がり瀬戸内海の島々がアートによるネットワークを生んでいる

3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭には世界中から多くの観光客が訪れる

福武氏の夢見た世界は現実のものとなったのだ


直島については、まだまだ伝えたいことがある
瀬戸内海はゴミ問題や公害など負の部分がまだ残されている

今後もそういった問題も含めて発信していこうと思う

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