さよならあかね

不老不死を目指す不在。最近は短歌にご執心。

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最近の記事

▼半年たったんか 2020年下半期号

 こんにちは、さよならあかねです。  たいっへんお待たせしました。『半年たったんか 2020年下半期号』を公開いたします。総勢で89名さまにご参加をいただきました。今回初めて短歌を投稿いただいた方や、短歌に初挑戦していただいた方などもいらっしゃいました。素敵な短歌の編集に関われたことをうれしく思います。ご参加ありがとうございました。  今回、PDFでお持ち帰りいただく方法と、ネプリとしてコンビニで出力していただく方法があります。以下の記事で順番に解説しますので、お好みの方

    • 短歌レーティングバトル

      序論 ぼく、さよならあかねは以前に、それまで作っていたすべての短歌から50首を選び、いつの日かひざみろさんに送りつけることを夢見る自薦50首という短歌集をつくった(自薦Ⅰ)。これはそれまでの集大成的な意味合いを含んでおり、自分の中で、いつか超えなければならない目標とでも呼ぶべきものになった。  記事の公開からおよそ一年半。この間に、ぼくは新しく千首以上の短歌を作った。そこで今回、第二回となる自薦を行い、あかね・はいぱーぼりっくというタイトルをつけてNoteに公開した(自薦Ⅱ

      • あかね・はいぱーぼりっく 自薦50首シーズンⅡ

        さもしいね。さもしいねっていわないでクラゲのカーテン食べ尽くしても KUTSUSHITAがないなら祈れセキュリティホールを抜けたGUERRILLAのように 致死量の英語を浴びて胸腔にカニ色の影動き始める はろーはろーさよならさよなら熨斗紙にいと達筆なけどとんこっけ みずきわで跳ねる魚の継承はもうない、なにも歯舞諸島 穴子んの爪には毒が!そう言ってきみは寿司屋のレプトケファルス ラジオ波がペンチ男の神経に障る良い子は抜歯しようね まぐわえばコンセンサスの魔物(とか

        • あかねの(ための)一首評 26

          月面に無数の地名 ごめんなさい あなたはずっとあなただからね 展翅零(毎日歌壇より)  解釈のポイントはふたつある。ひとつめ。あなたは誰か? あなた=月としてもこの歌は解釈できるし、その場合はわりと素直に読み下せそうな感じがする。しかし、この歌のあなたは月ではない、だれか人に語りかけてると読んだほうがぼくにはしっくりくる。  ふたつめ。なぜ「ごめんなさい」なのか。ぼくの感覚なんだけど、この歌だけでは情報が不足していて歌意を特定できない、感じがする。  たぶんだけど、こ

        ▼半年たったんか 2020年下半期号

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        • あかねの(ための)短歌論
          26本

        記事

          あかねの(ための)一首評 25

          もうこの際男やったらあんたでもあんたんとこのポチでもええわ 谷じゃこ(『ヒット・エンド・パレード』より)  シンプルな味わいの歌だ。関西弁が効いている。この味は関西弁じゃないと出せない。  …話が終わってしまった。なんというか軽妙な歌だ。オチの面白さを際立たすためにシンプルなのだろうし、57調に則っていて読み下しやすい。最初の6音も導入としてのタメみたいになってて意味がある。総じて、平易ながら高度な歌であると言える。  というのはテクニックの話で、ぼくはこの歌のどこに

          あかねの(ための)一首評 25

          半年たったんか 2020年下半期

           半年たったんか、またやりませんか?  こんにちは、さよならあかねです。半年たったんかは、ツイッターのハッシュタグ「#2019年自分が選ぶ今年上半期の4首」から始まった短歌の投稿企画です。深水きいろ氏がけん引役となって、210名もの参加者を集めました。ぼくが知る限り、もっとも盛り上がった短歌イベントのひとつだと思います。  ぼくは自分の歌が好きです。ひょっとしたら、みなさんもそうなんじゃないかと思ってます。半年間いろいろありました。いいこともわるいこともあったでしょう。そ

          半年たったんか 2020年下半期

          あかねの(ための)一首評 24

          むっくんがキレるキレるぞ草いきれ ヘリコプターがよく飛ぶ日だな セキユ(粘菌歌会第30回「怒り」より)  むっくんって誰? 軽く調べたけど元ネタはわからなかった。知ってる人いたら教えてください。でも知らなくてもたぶん、というか元ネタなんて実際ないのかもしれないし、なんとなくキレ芸で勝ってそうなどこかのむっくんが思い浮かべばそれでいいんだ。きっと。  さて、誰かもわからないむっくんが「キレるキレるぞ草いきれ」という言葉遊びから始まって、下の句ではとつぜんヘリコプターに言及

          あかねの(ための)一首評 24

          あかねの(ための)一首評 23

          ふきのとうバズーカ、それは 春なのに散らかしほうだいの庭であった はだし(Twitterより)  一見して意味がわからない、それでいて不思議な存在感のある歌だ。  切れ目を探してみると、ふきのとうバズーカ、/それは /春なのに/散らかし放題の/庭であった、で93596になっている。読むときは春なのに~をひと息で読むとスッと入ってくる。  表現的には素直じゃないところが二箇所ある。  ひとつ目。「それは」のあとのスペース。半角スペースが四つなんだけどそれに

          あかねの(ための)一首評 23

          あかねの(ための)一首評 22

          天国は近くにあると教えられすべてのルンバが海に向かった からすまぁ(うたの日『自由詠』より)  ある日ルンバがいっせいに海に向かう。そんなの一度も起きたことないはずなのに、ぼくたちはそれがいかにも起こりそうなこととして受け入れられる。その絵的なイメージ喚起力がこの歌の最大の魅力だ。  歌としては、意味の解釈にかなり幅のある歌である。ぼくが気づく限りでは次の感じだ。 ・天国は人間の天国か? それとも機械の天国? ・教えられたのは単独のルンバか? ・教えたのは誰か? ・天

          あかねの(ための)一首評 22

          あかねの(ための)一首評 21

          冬空のたったひとりの理解者として雨傘をたたむ老人 笹井宏之 『てんとろり』 より 「たったひとりの理解者」である。おそらく、他にも人がいる感じだ。静かな場所というよりは雑踏だろう。往来を人が行き来している。そして雨が降っている。雪ではなく。冬の雨は冷たい。雪よりも冷たい感じがする。そんな冬の雨が降っていて、人々はみんな傘をさしている。傘をさして早足に歩いている。それは急かされる光景だ。急かされる光景のなかで老人だけが立ち止まる。ゆっくりとした動作。ゆっくりとした動作で傘を

          あかねの(ための)一首評 21

          ひざがしらの地図

          ●これはなに?  PDF形式のひざがしらへのリンク集です。全体像↓ ●ひざがしらって?  御殿山みなみ氏が連載している短歌の一首評です。広範な短歌を扱っていること、記事がとにかく多いこと、氏の淡々とした文体で核心に迫っていく評が読めることが魅力です。しかも無料。すごい! ●どうやって使うの?  ↓をダウンロードしてください。pdfが見られるビューアで開いて、気になる歌人の名前をクリックするとひざがしらの当該記事に飛びます。 ●なんで作ったの?  御殿山みなみ氏の

          ひざがしらの地図

          あかねの(ための)一首評 20

          みそ汁がさみしいひとはいませんかここにえのきが落ちていますよ 北山文子(『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』より)  調べてみるまで知らなかったのだけど、寂しいと淋しいはどうやら同じ「さみしい」でもニュアンスが違うみたいだ。  寂しいのほうが広い意味で使われる。①物足りないさま、②静かであるさま、③孤独であるさま。一方で、淋しいと書くときはもっぱら③孤独であるさまを表して使われるようだ。  まず、寂しいに3つも意味があるというのは驚いた。いままでなんとなくで

          あかねの(ための)一首評 20

          あかねの(ための)一首評 19

          冷ややかに星は輝く何ひとつ為し得なかった日の黒ラベル toron*(うたの日『為』より) うまい歌のはなし この歌は抜群にうまい。描かれているのはくたびれたサラリーマンだろう。冷蔵庫から取り出されたサッポロ黒ラベルを指して「冷ややかに星は輝く」とは、まるでお手本みたいな言い回しじゃないか。  ぼくはうまい歌が苦手だ。とくにうたの日で薔薇=主席をとるようなうますぎる短歌にはある種のリスクがある、とぼくは考えている。これはぼくだけかもしれない。でも、ぼくはうますぎる歌を見る

          あかねの(ための)一首評 19

          あかねの(ための)一首評 18

          かなしみのすべてに名前を付けようよ このかなしみは「クリームブリュレ」 りゅう(サイボーグ)  クリームブリュレといえばパリパリのカラメルの下にやわいカスタードクリームをたっぷりとじこめた洋菓子でまあなんというか甘さの中にほんのりと苦味が後を引く感じで一言で言えばとても美味しい。  それをかなしみの喩えとして用いる傲慢。「クリームブリュレ」とカギカッコで括られているのはこれはつぶやきなんだろうか。例えばなにか悲しい事があった帰り道、ケーキ屋さんでケーキを見てるときにいま

          あかねの(ための)一首評 18

          あかねの(ための)一首評 17

          うん、好きさ、洗濯ばさみの真ん中にある針金に誓ってもいい 近江瞬(『飛び散れ、水たち』より)  これはつまり、めちゃくちゃに煽った別れ話なのかどうか。  シンプルに捉えるなら、男が不貞を働いたとかはじめから遊びだったとか、そういうのを女に指摘されてなじられてて、男的にはあとはもう、どのくらい酷く捨ててやろうかみたいな、そんなシーンにも読める。ケンカでモノがぶちまけられた床に洗濯ばさみが落ちていて、男はそれを見つけてつぶやいた。当てつけってわけだ。  そんなふうに読んで

          あかねの(ための)一首評 17

          あかねの(ための)一首評 16

          たいようが食べたいようと言いあえば遠くで夏が終わってしまう 鈴木ちはね(『予言』より)  初めに。ぼくはこの歌の意味がよくわからない。ただ、初見でめちゃくちゃ惹かれたのを覚えてるし、いま見てみても、めっちゃいい歌だなと思っている。だからできるだけ、その感情を掘り下げられたらいいなと思う。 * * *  この歌は三句切れになっている。たいようが食べたいようと言いあえば/遠くで夏が終わってしまう。構造としては、上の句が下の句の原因になっている。どういう因果でそうなるのかは

          あかねの(ための)一首評 16