短歌レーティングバトル

序論

 ぼく、さよならあかねは以前に、それまで作っていたすべての短歌から50首を選び、いつの日かひざみろさんに送りつけることを夢見る自薦50首という短歌集をつくった(自薦Ⅰ)。これはそれまでの集大成的な意味合いを含んでおり、自分の中で、いつか超えなければならない目標とでも呼ぶべきものになった。

 記事の公開からおよそ一年半。この間に、ぼくは新しく千首以上の短歌を作った。そこで今回、第二回となる自薦を行い、あかね・はいぱーぼりっくというタイトルをつけてNoteに公開した(自薦Ⅱ)。

 ぼくの関心は次のとおりである。すなわち、自薦Ⅱは自薦Ⅰを上回っているかどうか。

 ふたつの自薦を比較して、どちらのほうが優れているのかを決めることは簡単ではない。そこで今回、レーティングを用いて100首の短歌に点数付けを行い、どちらの自薦のほうが優れているのかを統計的に比較した。

方法

 自薦Ⅰと自薦Ⅱを比較するため、レーティングを用いた短歌の点数付けを行った(図1)。レーティングとは、選手の強さを点数=レートで表す手法であり、将棋やチェスのランキングなどでも利用されている。基本的に、対戦に勝利するとレートが上昇し、負けるとレートが減少するようになっている。ここでは、ふたつの短歌を対戦させ、どちらがより優れているかを審判=ぼくが判定するソフトウェアを開発してレーティングを行った(図2)。

図1

図2

結果

 30回のレーティングバトルを行った結果を図3に示す。レートの値はまだ収束してなそうだけど、審判=ぼくの気力が尽きたので打ち切った。

図3

 100首の短歌のレートを求めることが出来たので、自薦Ⅰと自薦Ⅱのレーティングの比較を行った(図4)。両者の間には、平均においても、分散においても有意な差は見られなかった。このことから、自薦Ⅰと自薦Ⅱはぼくにとって優劣のつけがたい自薦であることが示唆された。

図4

考察

 レーティングを用いてふたつの自薦を比較したところ、両者は甲乙つけがたい自薦であることがわかった。レート値の内訳を見てみると、自薦Ⅰのほうは突出して高いレート値を持つ短歌が多い傾向があり、自薦Ⅱは中堅クラスの短歌のレートがやや高めにみえるけど、厳密には検討していない。

 自薦Ⅰを超えるという目標は果たせなかったが、それに匹敵する自薦Ⅱをつくれたということはわかり、ひとまずは胸をなでおろしている。このふたつの自薦を超えるさらなる自薦Ⅲをつくる日まで、ぼちぼちやっていこうかなみたいなキモチになった。

 今回のようにレーティングを応用することによって、より一般的にふたつの歌集同士を定量的に比較できる可能性がある。ただし、めっっっっっちゃめんどくさいです。イロレーティングじゃなくてTrueSkillのほうが収束が早いそうなので、やりたい人はそっちでやりましょう。

おまけ

ベスト10の短歌とレート

はだしには魔除けの意味がはだしのげんはだしのげんが魔除けの意味で
1673.6

たまねぎの人工透析機のような笑顔に触れて菜切り包丁
1649.9

さめざめと泣く微小管あおざめた月はヨーガのポーズをしている
1644.7

(空想の世界じゃおれもちょっとした)ねぇおじさんもちゃおが好きなの?
1641.7

ミサンガに地球を吊って切れないなあ宇宙を吊って ここ は どこだろ
1640.1

木曜のうさぎくらいの必死さで比喩をやれ やだ 比喩はやらない
1635

パプリカの黄色いほうを投げるから勘違いして恋に落ちてね
1634.9

ケレン味はただ一滴のレモンティー顔を上げたら返事をするね
1629.7

木漏れ日をゆけば煌めくストロボに想い出はひとつずつ消え去る
1628.9

膵臓にニスを塗られた経験が生きたな…生きたままの膵臓
1603.9


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