あかねの(ための)一首評 18


かなしみのすべてに名前を付けようよ このかなしみは「クリームブリュレ」

りゅう(サイボーグ)


 クリームブリュレといえばパリパリのカラメルの下にやわいカスタードクリームをたっぷりとじこめた洋菓子でまあなんというか甘さの中にほんのりと苦味が後を引く感じで一言で言えばとても美味しい。

 それをかなしみの喩えとして用いる傲慢。「クリームブリュレ」とカギカッコで括られているのはこれはつぶやきなんだろうか。例えばなにか悲しい事があった帰り道、ケーキ屋さんでケーキを見てるときにいまの気分に完璧にフィットしているのはこれで間違いなしと確信して注文するときみたいな、どこかちょっと後ろ暗い喜びのようなものを感じる。

 構造として、この歌は大喜利みたいになっている。前半がお題で後半が解答だ。この解答が100点なのはひと目でわかる。こういう短歌を作るのはむずかしい。それが主体の言ってやった感じとリンクしている。総じて、とても傲慢な感じの伝わってくる歌だ。

 もうひとつ、この「かなしみのすべてに名前をつけようよ」は、実際にすべてのかなしみに名前を付けたいわけではない、のもポイントだ。すべてのかなしみを細分化してラベリングできるくらいの解像度で、おれのかなしみを見てくれ。主体はそういうことを言っているのだ。

 クリームブリュレ、美味しいですよね。

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