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毎週ショートショートnote参加作

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たらはかに様主催の企画「毎週ショートショートnote」に参加した私の作品の収集マガジンです。1分と少しで読める物語しかありません。お気軽にお越しください。
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記事一覧

義賊『無頼ママチャリ』 #毎週ショートショートnote 参加作

義賊『無頼ママチャリ』 #毎週ショートショートnote 参加作

チリン、の音に気を付けろ。
無頼ママチャリがやって来る。

 まさしくチリンと背後に鳴った時、カシラの話が頭を過る。
 カチコミ終えて、俺以外の死体が転がる血塗れの事務所。場違いに響く筈のチャリの音は、滑稽そのもの。
 無頼ママチャリが何だ。ンなモン、俺がぶっ殺してやる。
 振り向く。
 其処には確かにママチャリと。

 それに跨り、大鎌を掲げる、首から上が無い化け物が居た。

「……あ?」
 ―

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半分の蝋燭を折渡す。【#毎週ショートショートnote 参加作】

半分の蝋燭を折渡す。【#毎週ショートショートnote 参加作】

 ――人生は蝋燭だ。

 比喩でも何でもなく、私には人生の濃度や残り時間が蝋燭の形で見える。蝋燭が太い程人生は色濃く、長い程長生きする。
 最近、この蝋燭を人に移せる事に気付く。自身の蝋燭を一部折り取り他者のに接合し、長さを変えられるのだ。
 だから。
 私は生死の境を跨ぐ恋人に、自身の蝋燭を半分折り渡した。好きな人と一緒に居られない事こそ不幸だから。
 こうして自分と恋人の蝋燭は同じ長さになった

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美味しい心で満たします。 #毎週ショートショートnote 参加作

美味しい心で満たします。 #毎週ショートショートnote 参加作

 ふざけた看板の店が近所に出来た。そのふざけ加減が逆に興味を引くというモノで、早速立ち寄る。
 「イラッシャイドスエ」と出迎えたのはロボ。僕は笑った。心の無い奴が心をこれっくらいの弁当箱に詰めて売ってるだと?
 品揃えは「怒り弁当5,000円」「驚き弁当200円」「幸せ弁当2億円」等々。2億円はふざけすぎだろ。
 しかしモノは試し、安い「驚き弁当」を買う。支払い後、袋に入れて「マイドドスエ」と手渡

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カラスたちのクリスマス【#毎週ショートショートnote】(題:クリスマスカラス)

カラスたちのクリスマス【#毎週ショートショートnote】(題:クリスマスカラス)

クリスマスが今年もやってくる!

 某揚げ鶏のCMで人口に膾炙した陽気な音楽。電飾でお洒落する街路樹。睦まじく手を繋ぐカップル。酒缶片手に高笑いする若者達。
 今生の朗らかさを掻き集めたその光景と一線を画す路地裏で、鴉が生ゴミ袋を漁っていた。この時期は有難い。人間共が煌びやかさに浮れ、質の良いご飯を袋に詰めて路地裏まで運んでくれるからだ。
 手際ならぬ嘴際良く選び取り、一旦充分集めたら黒翼を勢い良

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縋る。【毎週ショートショートnote参加作品】

縋る。【毎週ショートショートnote参加作品】

「ハッピーバースデートゥーユー!」
 合唱が響く。
 蝋燭の火が暗闇のホールケーキの『おたんじょうびおめでとう!』を照らす。うん、上出来だ。
「ハッピーバースデートゥーユー!」
 家族の歌声だ。母親と父親と……妹かな? 手を叩いて、生を受けた事を祝福してくれている。

 生きてくれてありがとう。
 そしてこれからも。
 無条件の愛も籠った、祝福を。

 でも。

「ハッピーバースデーディア、夏実ち

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「アイドルとは、熱狂的なファンを持つモノを指す。」【毎週ショートショートnote参加作品】

「アイドルとは、熱狂的なファンを持つモノを指す。」【毎週ショートショートnote参加作品】

「棒アイドル? 某アイドルの間違いじゃなくて?」
「合ってるよ。スティック・アイドルだ」
 とうとう友人は頭がイカれたと思った。推しが引退してから抜殻の如く過ごしてたと思えばコレだ。
「兎に角! これチケットな! 絶対来いよ?」
「え、ちょっ、おい!」
 有無を言わさず握らされ、友人はさっさと去ってしまった。
 ……どうしよう。明後日の18時。
 予定は空いているが。
「……」
 ……あの友人をこ

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管理された寿命から脱出を!【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:違法の健康)】

管理された寿命から脱出を!【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:違法の健康)】

「遂に、手にしたぞ」
 白頭の男が注射器を握り、ほくそ笑んでから喀血する。病でもう長くはない。
 早く、と自らを急かし血管に薬剤を押込んだ。後戻りは出来ない。じわじわと病巣が消え去るのを感じる。どころか、溢れ出る活力に笑みを溢す。
「……これで晴れて『延命罪』者か! 秘密回線放送の通り、力が漲る!」
 老人は笑う。
「人口管理など、寿命管理など! 糞食らえだ! 俺は自分のしたいことをするのだ! 勝

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世界侵略ポケット【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:ポケット大増殖)】

 或る朝、俺が目覚めると、部屋の壁にポケットが1つ生っていた。何を言っているか判らないと思うが、文字通りだ。
 中身を探ってみるが、何もない――どころか、何処に通ずるかも不明な虚だ。肘まで入れても底に到達しない。
 何だこれは?
 訳分からないまま外に出てみた。

 目を疑った。
 家の壁にも、車にも、樹木にも、道路にもポケットが生えていた。混凝土に、ポケット。冗談だろ。
 何かの撮影かとも思った

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こんなこと、とても聖書には残せません。【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:神様時計)】

こんなこと、とても聖書には残せません。【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:神様時計)】

「父さん、これは?」
 生まれて400年の息子が、神の扱う時計を見て尋ねる。
「これは『神様時計』じゃ」
「ダサい名前」
 神にネーミングセンスを求めてはならぬ。
「で、何が出来るの、これ」
「針があるじゃろ」
 神様時計には、針が1つだけ。
「12時部分が世界の創生。時計回りに、6時部分までは世界の繁栄を、それ以降は衰退を表す。1周した時に世界が滅びる――これで世界情勢を操作するのじゃ」
「ふー

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永遠の愛【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:2人用AI)】

永遠の愛【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:2人用AI)】

If(Clock=0700){Setup(Mike);}

 午前7時、意識が立ち上がる。
 窓を眺めるが、今日も世界は静かだ。
 台所へ行くと、妻のミウが居た。

Def Time=n;If(Mike→Meow & n=1){Mike says"LOVE";)

「おはよう、愛しいミウ」
「愛しのマイク、朝ご飯はシリアルよ」
 またか――。

Setup(ctrl_anger); //Not c

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ラスト・ヴァンパイア【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:朝の逆転)】

ラスト・ヴァンパイア【#毎週ショートショートnote 参加作品(題:朝の逆転)】

 私は、心臓に銀の十字剣を突き刺した。
 遂に終わった。吸血鬼リヴァエラとの長き死闘が。
 固有術式『逆転記述』。自身以外の周囲の理を直接捻曲させ、多くの仲間を殺されたが、それも今日で終いだ。
「く、か……」
 夜が永遠に続くという逆転記述が弱まる。1年振りに、朝が来る。
「か……」
 朝陽が差し込む。
 これでリヴァエラは砂塵に還る。
 ここで終わりだ。全て終わったんだ。
 殺された仲間を想い、

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スムージー作りには、耳栓が欠かせない。【#毎週ショートショートnote 参加作品】

スムージー作りには、耳栓が欠かせない。【#毎週ショートショートnote 参加作品】

 スーパーマーケットに足を踏み入れた途端、沢山の声が聴こえてくる。
 それは、何も人間の声だけではない。数多くの食材の声も聴こえてくる。
 食材の声が聴こえる特殊能力の所為だ。私にとっては慣れたもの。

 今日の目当ては、甘蕉と林檎。
 そしてほうれん草だ。
「は、初めまして!」
 ほうれん草コーナーに行くと、決まって自己紹介が始まる。
「ぼく、ほうれん草です! 栄養満点、萎びてなくて、シャキシャ

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